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政治
【Q&A】地方分権改革 自治体がアイデア 6割341件検討
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地方分権改革推進本部の会合であいさつする安倍晋三(しんぞう)首相(左から2人目)=2015年1月30日、首相官邸(共同) 政府は1月30日、地方分権改革の対応方針を閣議決定しました。自治体から寄せられたアイデアの約6割を採用することにしました。
Q 地方分権とは
A 権限を移して国の仕事を自治体に任せたり、自治体が仕事をしやすいよう規制を緩和したりすることです。全国一律の基準では、地域の実情や住民のニーズに合わないことも多く、分権の必要性が高まっています。
Q 今回は新しい試みがあったそうですね
A 各地の自治体が分権の提案をして、霞が関の各省庁が採用するか検討しました。住民と向き合っている自治体にアイデアを出してもらい、改革をいっそう進めるのが狙いです。これまでは国側が「こういうことをしよう」とテーマ設定をするのが通例でした。
Q 結果は
A 政府は、535件の提案のうち64%の341件について、地方の意向を踏まえ何らかの対応を取るとしています。
Q 代表的な成果は
A 4ヘクタールを超える大規模な農地を工場やショッピングセンターなどに転用する際、これまでは農林水産省が許可していました。国との事前協議が必要ですが、都道府県や一部の市町村に許可権限が移ります。長年、要望しながら却下されてきた問題なので、地方側は高く評価しています。
Q 地方のメリットは
A 自治体は、地域の事情に詳しくない国が判断すると時間がかかると指摘していました。今後は手続きが早くなり、企業誘致などが進めやすくなるでしょう。ただ、乱開発を許せば農業が衰退してしまいます。権限とともに、責任も増したと言えます。
Q 分権は大きく進むのでしょうか
A 地方からは「不十分だ」「今後の成り行きを見守る必要がある」との声も出ています。都市部などを中心に待機児童を減らすため、保育所の職員数や面積の規制を緩和してほしいという提案が多く寄せられました。この問題をはじめ、農地転用と並んで地方が重要視していた提案のいくつかは却下されました。また341件には「検討を続ける」といった項目も多く含まれます。実現するかどうか分からないのに成果に数えていることになります。
Q なぜ、そんなことをしたのですか
A 省庁は、地方への影響力が弱まるので、権限移譲や規制緩和に後ろ向きで調整は難航しました。一方で、安倍政権は「地方分権は地方創生の重要課題だ」と繰り返し強調してきました。成果を強調するため、数字を良く見せようとした感は否めません。
≪農地転用の権限移譲 悲願かなう≫
自治体への農地転用の権限移譲は、地方分権改革で一定の前進があったと評価できる。国の判断に時間がかかった手続きがスムーズになり、迅速な街づくりが期待できる。ただ、新たな仕組みでも国の関与は残る。どれだけ実効性が確保されるのか、国の対応を今後も注視していく必要がある。
農地転用の権限移譲は、地方側が長年にわたって求めてきた悲願だ。今回初めて実施した分権の提案募集でも、多くの自治体が要望。全国知事会など地方6団体も重点項目に位置付け、合同の要請書をまとめるなど実現に向け協力した。
農林水産省の「自治体に権限を移せば、転用が進み十分な農地が確保できなくなる」とする懸念に対しては、「農地面積の確保に地方も責任を持つ。信頼して任せるべきだ」と反論。国と地方が連携して農地確保の目標を設定する仕組みの創設につながった。
政府が譲歩した形の改革案だが、地方が廃止を求めていた国との協議は、4ヘクタール超の農地で残る。
また都道府県と同等の権限を持てる市町村を指定するのは農水省だ。運用で縛ろうとすれば「実態は変わっていない」との批判が上がるのは確実だ。自治体も無秩序な開発を進めれば、自ら分権の道を閉ざすことになる。(SANKEI EXPRESS)