SankeiBiz for mobile

安保法制 自公が正式合意 一歩前進 なお残る「9条の足かせ」

ニュースカテゴリ:EX CONTENTSの政治

安保法制 自公が正式合意 一歩前進 なお残る「9条の足かせ」

更新

新たな安全保障法制に関する与党協議会後、記者会見する自民党の高村(こうむら)正彦副総裁(奥)と公明党の北側(きたがわ)一雄副代表=2015年3月20日午後、衆院第2議員会館(酒巻俊介撮影)  自民、公明両党は20日、新たな安全保障法制に関する与党協議会を開き、集団的自衛権の行使容認を含む法制の骨格となる文書について正式に合意した。政府は合意に沿って法案策定作業を急ぎ、4月に再改定する「日米防衛協力のための指針(ガイドライン)」に反映させる。自衛隊と米軍の連携を強化する背景には、アジア太平洋地域で急速に軍事的緊張を高める中国や北朝鮮に対し、抑止力を強める狙いがある。

 安倍晋三首相(60)は20日の参院予算委員会で「今回の安保法制は日本人の命と幸せな暮らしを守るのが目的だ。国際情勢を俯瞰(ふかん)し、政策立案に当たらなくてはならない」と述べた。

 首相は4月26日から訪米し、バラク・オバマ大統領(53)との会談で日米同盟の深化を確認する意向だ。日米両政府は首脳会談に先立ち、外務・防衛担当閣僚による安全保障協議委員会(2プラス2)を開催し、新ガイドラインで正式合意する段取りを描いている。

 合意文書は、新たな安保関連法案の「具体的な方向性」との位置付けで、(1)日本の有事には至らない「グレーゾーン事態」対処(2)日本の平和と安全に資する活動をする他国軍支援のための周辺事態法改正(3)他国軍を後方支援するための新法による恒久法(4)国連平和維持活動(PKO)協力法改正(5)集団的自衛権の行使容認-を柱としている。

 このほか、自衛隊による在外邦人の救出に向けた自衛隊法改正についても方向性を打ち出した。「領域国の受け入れ同意がある場合」に一定の要件を前提に、武器使用を伴う在外邦人の救出ができるよう法整備を検討する。

 政府は5月半ばに関連法案を閣議決定、国会に提出し、今国会中の成立を目指す。自公両党は4月中旬に法案の原案が策定された段階で協議を再開するが、合意文書は「あくまで途中経過」(与党協議会座長の高村(こうむら)正彦自民党副総裁)であり、今後の与党協議は難航する可能性もある。

 公明党の井上義久幹事長(67)も記者会見で「(自公間で)認識の違いがある部分はある」と述べた。

 ≪一歩前進 なお残る「9条の足かせ」≫

 自民、公明両党が20日、新たな安全保障法制の骨格をまとめた文書について正式合意したことで、日本の安全保障は一歩前進する。だが、他国並みには「できないこと」がなお残った。自衛権発動以外の武力行使を禁じる憲法9条の制約が新たな安保法制でも作用していることが原因だ。

 「与党協議の成果は、やっぱり憲法改正が必要だと明確になった点だ」

 自民党側出席者の一人は与党協議をこう振り返る。政府内には「集団的自衛権が認められれば、憲法改正の必要性が低下する」(国家安全保障局幹部)との声もあったが、具体的な法整備が協議される中でこうした見方は少なくなった。

 「明白な危険」限定

 共同文書では集団的自衛権を行使するための武力攻撃事態法などを改正すると明記したが、憲法9条による特殊な「足かせ」で行動の自由を奪われている状況に変わりはない。

 密接な関係にある他国が攻撃を受ければ集団的自衛権がすぐさま行使できるわけではなく、あくまで「日本の存立が脅かされる明白な危険がある場合(存立危機事態)」に限られている。昨年7月の安保法制の閣議決定は、過去の9条解釈の上に立って組み立てられているからだ。

 北大西洋条約機構(NATO)は2001年の米中枢同時テロで集団的自衛権を発動し、アフガニスタン戦争に参加した。日本は米中枢同時テロが存立危機事態に当たると認定されなければ、NATOのような行動は取りえない。安倍晋三首相は中東・ホルムズ海峡に機雷が敷設され石油供給が途絶える事態が存立危機事態に該当するとしているが、国際標準の集団的自衛権は封印されたままだ。

 信頼損失懸念も

 安保法制では、日本や国際社会の平和のため活動する他国軍に後方支援を行う目的で、自衛隊の海外派遣を随時可能にする改正周辺事態法と新法を整備する。

 ただ、自衛隊が武力行使できるのは自衛権が発動されたときだけだ。後方支援での武器使用は、他国軍の武力行使と一体化しない範囲でしか認められない。停戦合意前の機雷掃海は一体化しているとみなされる。

 後方支援を行う活動地域が「現に戦闘が行われている現場」になれば、自衛隊は即座に撤退しなければならない。敵に攻撃されている友軍を見捨てることで違憲状態を回避するのだ。

 自衛隊幹部は「他国からの信頼を損なうことにならないのか」と懸念する。(SANKEI EXPRESS

ランキング