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自衛隊派遣法制 武器使用権限を拡大 積極平和へ布石 湾岸・アフガンも
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新たな安全保障法制の整備に向けた与党協議会であいさつする座長の自民党の高村(おうむら)正彦副総裁(中央右)。左隣は公明党の北側一雄副代表=2015年2月20日、衆院第2議員会館(酒巻俊介撮影) 安全保障法制をめぐり、自衛隊の海外派遣を随時可能とするための法整備に関する政府案の全容が20日、判明した。日本の平和と安全のために活動する他国軍支援は周辺事態法を改正し、武器使用権限を拡大する方針だ。国際社会の平和と安定のために活動する他国軍支援などは新法を制定して対応。国連安全保障理事会決議を前提としない有志連合軍の支援も行えるようにし、国連平和維持活動(PKO)協力法を改正し、「任務遂行のための武器使用」なども可能とする。
政府は20日に開かれた安保法制に関する与党協議会で法整備案を提示した。
昨年7月の閣議決定では、自衛隊が他国軍支援を行う地域が「現に戦闘が行われている現場」になれば、撤退を義務づけている。周辺事態法改正では、撤退時に「職務休止中の自己保存型武器使用」ができる権限を新たに付与するほか、武器を使用する際の保護対象も拡大する。
周辺事態法の地理的制約を外すため「『周辺事態』概念は用いない」とし、「我が国の平和及び安全に重要な影響を与える事態」では「米国以外の諸外国軍隊」も支援対象とする。新たに「弾薬の提供」や「戦闘作戦行動のための発進準備中の航空機に対する給油及び整備」も可能とする。
国際平和のため活動する他国軍支援や人道復興支援活動には「新法」が必要とした。国連安保理決議に基づく多国籍軍や、国連憲章の目的を達成するため自衛権を行使して活動している有志連合軍も支援可能とするほか、領域国などの同意を得て行われる諸外国軍隊の活動にも支援を行う。
支援内容は、補給・輸送などの後方支援、戦闘行為によって遭難した戦闘参加者の捜索・救助、航空機や艦艇により行う情報収集活動などを挙げた。
≪積極平和へ布石 湾岸・アフガンも≫
政府がまとめた安全保障法制案では、自衛隊の海外派遣を随時可能にする恒久法について「周辺事態法改正」「新法」「国際平和維持活動(PKO)協力法改正」で対応する方針を示した。このうち、国際社会の平和と安定に向け活動する他国軍の支援を行うための「新法」が整備されれば、幅広い活動に自衛隊が参加することが可能となる。
政府は具体的な過去の事例として、(1)国連決議に基づく湾岸戦争(2)自衛権に基づくアフガニスタン戦争(3)領域国の同意を得て活動するソロモン地域支援ミッション-の3類型を提示した。いずれも自衛隊が参加できなかった活動だ。
それだけに、法制案は積極的平和主義を掲げ「国際社会で、日本としての責任を毅然(きぜん)として果たす」としてきた安倍晋三首相(60)の意向を反映したものといえる。
とはいえ、新法が制定されても、湾岸戦争の多国籍軍やアフガン戦争の有志連合に加わった自衛隊が地上部隊による戦闘や空爆に加わるわけではない。憲法9条は自衛権の行使以外の武力行使を禁じており、昨年7月の閣議決定でも他国の「武力の行使との一体化」を厳に戒めているからだ。
周辺事態法の改正でも「武力行使との一体化」を避けることが求められるが、「日本の平和と安全に重要な影響を与える事態」での活動であるため、支援内容は「弾薬の提供」や「発進準備中の戦闘機への給油・整備」など権限を拡大させる方針だ。
これに対して新法の目的は、国際社会の平和と安定のための活動を支えるものだけに、他国軍支援は撃墜されたパイロットの救助や補給・輸送活動などに限定したものになる見込みだ。
ただ、新法制定により、自衛隊は現地国のニーズに合った柔軟な対応が可能となりそうだ。
たとえば、イラク復興支援特別措置法に基づく人道復興支援活動では、イラク政府から資機材の提供を求められたが、特措法の任務に盛り込まれていなかったため断らざるを得なかった。これと対照的だったのが、恒久法の一種であるPKO協力法に基づく自衛隊のPKO派遣。陸上自衛隊はハイチPKOでの活動中に現地政府の求めに応じ、実施計画を変更することで医療支援を追加できた。
一方、閣議決定では「わが国と密接な関係国に武力攻撃が発生し、国民の権利が根底から覆される明白な危険がある」場合には集団的自衛権の行使を可能としている。政府は行使の地理的制限を行わない方針で、他国軍に対する後方支援はもちろん、「武力行使との一体化」を伴う活動も可能となる見通しだ。
安保法制が整えば、日本は事態の深刻度に応じて「国際平和のための新法→改正周辺事態法→集団的自衛権行使」と関与を強めることができるようになる。紛争が終結して停戦合意が成立すれば、諸外国からPKOの治安維持任務へ自衛隊を派遣するよう求められることも想定される。政府がPKO協力法改正で「任務遂行のための武器使用」を目指すのは、このためだ。(杉本康士/SANKEI EXPRESS)