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【イスラム国殺害脅迫】勢い陰り 「聖戦の象徴」奪還切望か

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【イスラム国殺害脅迫】勢い陰り 「聖戦の象徴」奪還切望か

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ヨルダン・首都アンマンで取材に応じる中山泰秀外務副大臣(中央)=2015年1月28日(AP)  後藤健二さん(47)を人質に取ったイスラム教スンニ派過激組織「イスラム国」の犯行グループは、ヨルダンで収監されている女死刑囚の釈放期限を24時間後に設定し、交換を急いだ。イスラム国は米軍主導の空爆にさらされ、シリア北部の要衝で「敗北」を喫したばかり。イスラム国側は守勢に回った焦りから、「聖戦(ジハード)の象徴」を取り戻す成果を切望しているとみられる。

 「敗北」のイスラム国

 「全てのイスラム教徒よ。イスラム国はますます強くなっている。自信を持って歩め」。イスラム国のアドナニ広報担当者は26日公表の音声声明で、ヘーゲル米国防長官らが主張する「守勢」を強く否定した。

 イスラム国は昨年6月、イラクとシリアに広い領土を持つ「国家樹立」を一方的に宣言した。町や軍事拠点を次々と制圧、戦闘員が欧米など各国から流入した。国際テロ組織アルカーイダ以来の「怪物」の登場で世界に衝撃が走ったが、その勢いには最近、陰りも指摘される。

 米政府によると、昨年8月に始まった米軍主導の空爆で、イスラム国の戦闘員数千人、指揮官の半数が死亡。イラク国内では、軍やクルド人部隊が戦力を立て直しつつあり、北部の大都市モスル奪還の準備を進める。

 組織内部の結束が乱れ始めたとの情報も。昨年12月、欧米メディアは、イスラム国が「首都」と位置付けるシリア北部ラッカから外国人戦闘員約100人が逃亡を図り「処刑」されたほか、指導部に歯向かったグループが「逮捕」されたと相次いで報じた。

 結束強化に利用

 「ヨルダン政府にあらゆる政治的圧力をかけるよう日本政府に言ってほしい」「彼女は10年間、収監されてきた」。27日、イスラム国とみられる犯行グループは後藤さんと引き換えに、ヨルダンで収監中のイラク人の女、サジダ・リシャウィ死刑囚の釈放を重ねて求める声明を公開。拘束中のヨルダン軍パイロットの解放条件は明示しなかった。

 死刑囚は2005年のヨルダン史上最悪のテロ事件に関与し、イスラム国の前身「イラク聖戦アルカーイダ組織」のザルカウィ元指導者=06年、米軍が殺害=につながる、よく知られた存在だ。死刑囚取り戻しに成功すれば、組織の結束強化に利用できる。

 その前日の26日、イスラム国とクルド人部隊との攻防が続いていたシリア北部の要衝の町アインアルアラブ(クルド名コバニ)を、クルド人側がほぼ奪還したもようと伝えられていた。米中央軍は「イスラム国の対抗勢力がコバニの約9割を支配している」と強調する。

 コバニはトルコとの国境沿いに位置し、イスラム国の進撃を象徴する町だった。それだけに、過激派サイトには「デマが流れた」などと否定の書き込みが並び、イスラム国や支持者らの焦りが見え隠れした。

 イスラム国に詳しい専門家のヒシャム・ハシミ氏は「コバニで恥ずべき敗北をしたばかりのイスラム国にとって、死刑囚の釈放は心理的な勝利をもたらすことになるだろう」と指摘した。(共同/SANKEI EXPRESS

 ≪政府、緊迫の「24時間」 菅氏ら参院本会議を一時退席≫

 日本政府は28日、「イスラム国」に拘束された後藤健二さんの殺害予告期限とされた「24時間」を前に、緊迫した局面が続いた。安倍晋三首相や菅義偉(すが・よしひで)官房長官ら政府首脳の動きはあわただしく、後藤さんの安否確認と早期解放に全力を挙げた。

 首相は、新たな殺害予告から一夜明けた28日午前、菅氏や岸田文雄外相、中谷元(なかたに・げん)防衛相らを緊急に招集し、官邸で関係閣僚会議を開催した。首相は「早期解放に向け、ヨルダンに協力要請する方針に変わりはない」と述べ、政府が一体となって対応するよう指示を徹底した。

 首相はこの後の参院本会議で、日本人殺害脅迫事件やフランス週刊紙銃撃事件を踏まえ「世界でテロの脅威が増大している」と指摘、海外在留邦人の安全確保と国内の警備態勢を強化する考えを示した。

 首相周辺の動きもめまぐるしく、菅氏は午後2時前、谷内(やち)正太郎国家安全保障局長、西村泰彦内閣危機管理監、北村滋内閣情報官から情勢報告を受けるため、参院本会議を約15分間にわたって一時退席した。事件の対応を要する場合は、与野党が菅氏らの退席を認めているからだ。

 午後2時45分ごろには、岸田氏も参院本会議を途中退席し、外務省に急いだ。現地対策本部に詰める中山泰秀外務副大臣から報告を受け、本会議場に戻った岸田氏は首相の脇にかがみ込み、身ぶり手ぶりを交えて話し込む姿が見られた。本会議場内では、世耕弘成(せこう・ひろしげ)官房副長官が首相や岸田氏にメモを差し入れ、状況を知らせていた。

 菅氏は28日午後の記者会見で、後藤さんの解放に向けて「ありとあらゆることを全力で取り組んでいる」と強調した。(SANKEI EXPRESS

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