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【イスラム国殺害脅迫】「解放に全力」 ヨルダンに働きかけ

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【イスラム国殺害脅迫】「解放に全力」 ヨルダンに働きかけ

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2014年12月24日、シリア北部ラッカで、イスラム国の兵士らに連行されるヨルダン軍パイロット(中央)。イスラム国系ウェブサイトが公開した。ヨルダンはかねてから、このパイロットとサジダ・リシャウィ死刑囚との交換を模索していたとされる(AP)  イスラム教スンニ派過激組織「イスラム国」による日本人殺害脅迫事件で、安倍晋三首相(60)は26日、閣僚懇談会で人質解放に向け全力を尽くすよう全閣僚に指示を徹底した。中東諸国や欧米各国との外交ルートを駆使した協力要請を続けている。

 首相は26日の自民党両院議員総会で「残虐非道なテロ行為は断じて許せない。世界各国と連携し、全ての手段を尽くしたい」と強調。その後も官邸に岸田文雄外相らを呼び、報告を受けるとともに「いつ動きがあっても不思議ではない。不透明になることも考えられる。緊張感を持って対応してほしい」と指示した。

 菅義偉(すが・よしひで)官房長官は26日の記者会見で、拘束された後藤健二さん(47)が持つ湯川遥菜(はるな)さん(42)の殺害場面とする画像に関し、イスラム国による犯行の可能性が極めて高いとの認識を示した。映像の男性の声が後藤さん本人のものかについて「政府として否定できない。(本人の)可能性が高い」と述べた。

 一方、湯川さんに関しては「遺体を確認したわけではない。殺害を否定する根拠を見いだせていない」と説明し、断定していないことも明らかにした。

 イスラム国側はヨルダンで収監中のサジダ・リシャウィ死刑囚の釈放を要求している。ヨルダンも空軍パイロットがイスラム国側に人質に取られており、交換が取り沙汰される。日本政府は在ヨルダン日本大使館の現地対策本部を通じ、ヨルダン側に働きかけを強めている。

 菅氏は会見で、交渉の状況に関し「ヨルダンをはじめ関係国に懸命にお願いしている」と説明した。ただ政府筋は「日本はあくまでもヨルダンに協力を要請する立場だ」と指摘した。

 一方、「イスラム国」が運営するラジオ局アルバヤンは25日、インターネット上にニュース番組を配信し、「イスラム国は日本に最後通告していた日本人の人質1人を殺害した」と伝えた。

 ≪シリアへの「裏口」 外国人売買横行≫

 シリア反体制武装組織の支配地域への玄関口、トルコ南部キリス。シリア入りする人々でごった返す検問所付近では、密入国ブローカーらが暗躍する。一方、シリア側では外国人を過激派「イスラム国」に売り飛ばす闇ビジネスが横行。イスラム国を名乗るグループの人質となった後藤健二さんと湯川遥菜さんも通った検問所の向こうには無法地帯が広がっている。

 武装勢力へ引き渡し

 「100ドル(約1万2000円)でシリアへ連れて行ってやる。他のやつは信用するな」。国境周辺を歩くと、複数の男が不法越境する気はないかとアラビア語で耳打ちしてきた。

 検問所を少し離れると、オリーブ畑の中、国境に沿って鉄条網が延びる。鉄条網が破られた場所がシリアへの“裏口”だ。

 付近では、外国人記者のシリア入り支援を持ち掛ける「仲介者」の姿があちこちに見られる。だが、キリスを拠点とする地元記者は「『仲介者』を絶対に信用するな。外国人を武装勢力に売るのが目的だ」と警告する。

 引き渡し先はイスラム国や国際テロ組織アルカーイダ系「ヌスラ戦線」などシリア北部で活動する過激な武装勢力。外交官や記者、人道支援職員は高額の売買対象だ。

 後藤さんは昨年10月24日、キリスからシリア人ガイドとシリア入り。欧米が支援する反体制武装組織「自由シリア軍」支配下の村マルアでガイドと別れ、別の案内役男性と25日、イスラム国「首都」ラッカを目指したとみられる。

 地元住民によると、マルアから2キロ先はイスラム国の支配地域。自身とイスラム国との関係を示唆する発言をしていたこの案内役男性は共同通信の電話取材にいったん応じたが、後藤さんの話題を切り出すと電話を切り、連絡が途絶えた。

 イスラム国が指令?

 イスラム国が昨年11月ごろ「外国人記者を誘拐せよ」と指令を出したとの情報も。今月22日には韓国人記者4人がトルコ南部の立ち入り禁止区域に入った疑いで同国当局に拘束された。シリア反体制派地域での取材を試みる例は後を絶たない。

 外国人の「値段」は明らかではない。キリスの消息筋は「100万ドル以上の身代金が取れるのだから、相当な高額で売られるのだろう」と話す。

 トルコ紙記者ザマン氏は、外国人はイスラム国への参加を希望する戦闘員にとっても誘拐の標的だと指摘。外国人を「手土産」として組織に渡せば、自らを売り込む絶好の材料となるからだ。

 トルコ有力メディアに勤める別の記者は「仲介者を通しイスラム国から何度も取材の招待を受けた。だが恐ろしくて行けない」と話し、後藤さんは売り渡された恐れがあるとの見方を示した。(共同/SANKEI EXPRESS

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