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少年兵育成 非道な宣伝映像 「イスラム国」洗脳し処刑させる

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少年兵育成 非道な宣伝映像 「イスラム国」洗脳し処刑させる

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シリアと国境を接するトルコの町シュリュジュに設営されたクルド人の難民キャンプで、おもちゃの銃を手にする少年。玩具であればどこの国でも目にする光景だが、勢力拡大に行き詰まったイスラム国は少年兵を育成し、本物の銃を持たせようとしている=2014年11月13日(AP)  シリアとイラクで活動するイスラム教スンニ派過激組織「イスラム国」の犯行グループが、日本人人質2人の殺害を予告し身代金2億ドル(約235億円)を要求した事件は、予告映像で72時間とされた支払期限の翌日の24日になっても、イスラム国側は声明発表など具体的な動きを見せていない。一方で、昨年6月ごろの破竹の勢いがなくなり、新たな戦闘員獲得が困難になったとみられるイスラム国は、少年兵の勧誘・育成および子供世代の洗脳に本格的に乗り出した。プロパガンダ映像は衝撃的なもので、イスラム国の非道、残虐性を改めて浮き彫りにした。

 遺体を足蹴に

 イスラム国が最近公開した子供向けのプロパガンダ映像では、ピストルを手に持った少年が、ひざまずいた男性2人の頭部に向けて背後から引き金を引くシーンが映し出された。フランス通信(AFP)によると、少年は12歳ぐらいで、「処刑」した2人はロシアのスパイとされる。遺体はこの少年に足蹴にされ、ビデオには「ぶざまな格好で横たわった」とのナレーションが入っていた。

 大きくなったら何になりたいかと問われると少年は、「不信心な者を殺す人間になりたい。僕はムジャヒディン(聖戦士)になる」と答えた。米シンクタンク「ブルッキングス研究所」の中東専門家、チャールズ・リスター氏はAFPに「ここまで暴力的な行いをする子供の姿を見せることは、『戦える年齢』にある男はすべてイスラム国の戦いに参加すべきだと主張しているに等しい」と話している。

 少年に対するイスラム国の扱いも過酷だ。英紙デイリー・メールなどによると、今月12日に行われたサッカー・アジアカップのイラク対ヨルダン戦を、イスラム国の支配地域であるイラク北部のモスルでテレビ観戦した少年13人が公開処刑で銃殺された。「サッカーは西洋のものだ」として、イスラム国は観戦禁止令を出していたが、その「決まりを破った」のが処刑理由だという。

 戦力維持に行き詰まりか

 イスラム国は、イラク戦争の最中の2006年に誕生した反米武装勢力「イラク・イスラム国」を母体とし、11年から始まったシリア内戦に反体制派側で参戦。しかし、その過激思想などから反体制派側で浮いた存在となると、アサド政権だけでなく反体制派側にも牙をむく勢力として拡大していった。

 さらに13年にオバマ米政権が地上戦はおろかシリア空爆さえ尻込みすると、いっそう増殖して「怪物」化。14年6月にはイラク第2の都市モスルを制圧して世界に衝撃を与えた。

 インターネットの交流サイトで巧みな宣伝を行うとともに、英字機関誌「ダビク」を発行。欧米に暮らすイスラム系移民2世や3世の若者らに参戦を促し、シリアとイラクでは約80カ国から来た1万5000人以上が外国人戦闘員として活動中とされる。しかし、原油価格の下洛で密輸収入が激減する一方、14年8月から始った米国を中心とした有志連合の空爆で石油施設が破壊され、兵士も数千人が死亡。勢いはしぼんでいる。ジョン・ケリー米国務長官(71)も「ここ数カ月、イスラム国の勢力拡大は止まっており、新たな戦闘員獲得も困難に陥っている」と分析している。

 子供の手も借りたいほど戦力維持が行き詰まり、今回の身代金要求事件には、新たなセンセーショナルを巻き起こして戦闘員のリクルート活動を強化する狙いもあるとみられる。(SANKEI EXPRESS

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