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政治
【イスラム国殺害予告】拘束の2人 シリアに強い関心
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戦闘車両に乗り、イラク第2の都市モスルの幹線道路をパレードする「イスラム国」の兵士=2014年6月23日(AP) イスラム教スンニ派過激組織「イスラム国」とみられるグループの人質となり、殺害予告の対象になったとみられる湯川遙菜(はるな)さん(42)と後藤健二さん(47)はシリアに関心を持ち、活動を続けていた。その最中に拘束されたとみられる2人。詳細な様子が分からない中、家族や知人は無事を祈り続けた。
2014年8月にイスラム国に拘束されたとされる湯川さんは「民間軍事会社」と称する「ピーエムシー」の最高経営責任者。家族によると、千葉県内の高校卒業後、実家を出た。その後結婚したが、妻を亡くし、一人暮らしだった。
ピーエムシー顧問の木本信男さん(70)に妻の死去を告げた際、湯川さんは「自分は妻も子供もいないので、仕事に命をかける」と意気込みを語っていた。
湯川さんのフェイスブックには、14年5月にシリアを訪問した際の写真が掲載されていた。「(シリアの武装組織)自由シリア軍の多くの方々にとても親切にしていただいた」と記載。家族には「シリア人の仲間に会いに行く」と告げ、消息が分からなくなった。
湯川さんとともに人質になったとみられる後藤さんはフリージャーナリスト。1996年に設立した映像通信会社「インデペンデント・プレス」のホームページでは、「困難な環境の中で暮らす子ども達にカメラを向け、世界各地を取材している」と活動を紹介している。
2014年12月に後藤さんの現地報告会を開催する予定だった宮城県ユニセフ協会の事務局長、五十嵐栄子さん(61)は「紛争の地でも暮らしている人たちがいることを伝えたくて、取材活動をしていたと思う」。14年9月に後藤さんに会ったという編集者には「イスラムについてはいろいろ誤解がある。シリアに取材に行きたい」という内容の話をしていたという。
後藤さんは10月2日、自身のツイッターに「シリア取材に入ります」と記した。「どこまで皆さんにお伝えできるか、現場の空気が伝えられたら」とも書き込み、動画投稿サイトに映像を投稿していた。
TBSテレビによると、後藤さんは10月8日、TBSの情報番組に東京都内のスタジオから生出演した。この時期に一時帰国し、再び渡航したとみられる。その後、後藤さんは10月23日にイスラム国を取り上げるテレビ番組の告知をツイッターに投稿。ツイッターはそれから更新されていない。
≪「標的になりやすい」 安易な渡航に警鐘≫
シリア東部やイラク北部を支配地域とするイスラム国。外国人を誘拐して獲得する身代金は、豊富な資金力を支える収入源の一つとされる。「支配地域に入らないこと」「標的になりやすい」。専門家らは改めてイスラム国の残虐性と支配地域に入ることの危険性を指摘。各国から参加する戦闘員が母国でテロを起こす懸念もあり、警戒が必要となっている。
テロリズム対策に詳しい公共政策調査会の板橋功氏は、中東を歴訪する安倍晋三首相がイスラム国対策の財政支援を表明するなど、日本が対テロの姿勢を鮮明にする中で「タイミングを図り『カード』を切った可能性がある」と語る。
日本政府はテロリストに譲歩しない方針だが、板橋氏は「非常に困難な状況なのは間違いない。同様の事態を招かないためにも、支配地域に入らないことが大前提だ」と話す。
「日本だけでなく、西側全体に向けて恐怖心を与えたいのではないか」。シリア情勢に詳しい東京外国語大の青山弘之教授(シリア政治)は身代金要求動画の意図を分析する。青山氏はイスラム国がシリア国内で戦況不利となった可能性を指摘。「人質を安全に拘束することが難しくなり、人質を盾に身を守りたい意図もあるだろう」と話す。
後藤健二さんと面識があり、シリアに取材経験のあるフリージャーナリストの安田純平氏(40)は「どれだけ太い取材ルートがあっても、外国人というだけで通報され拉致される可能性がある。日本人は風貌が違うのでターゲットになりやすい」と安易な渡航に警鐘を鳴らす。
イスラム国をめぐっては世界各国から外国人戦闘員が参加。戦闘技術や過激な思想を身につけて母国に帰国し、テロを「再生産」する事態も懸念されるが、日本ではこうした戦闘員の出入国を食い止める明確な法制度がないのが現状だ。
日本では2014年、イスラム国に参加を企てたとして、刑法の私戦予備・陰謀容疑で北大生や支援者らの関係先が家宅捜索された。
捜査関係者は「イスラム国の脅威は『対岸の火事』ではない。国際テロリズムの波が日本に及ぶ恐れは十分にある」と強調した。(SANKEI EXPRESS)