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【イスラム国殺害予告】首相の中東歴訪タイミング狙う

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【イスラム国殺害予告】首相の中東歴訪タイミング狙う

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「イスラム国」とみられるグループによるビデオ声明について記者会見する安倍晋三(しんぞう)首相=2015年1月20日、イスラエル・首都エルサレム(ロイター)  「イスラム国」とみられる集団による日本人2人の殺害警告の一報は、中東歴訪最終日の朝に安倍晋三首相(60)のもとに飛び込んできた。首相は今回の外遊でテロと厳しく対峙する姿勢を示してきたが、イスラム国側はそのタイミングを狙って犯行声明を突きつけてきた格好だ。「積極的平和主義」を掲げる首相は、厳しい対応を迫られている。

 「人命を盾に脅迫することは許し難い行為で、強い憤りを覚える」

 安倍首相は当初の予定より約1時間遅れで始まったエルサレムでの記者会見でこう述べ、テロに屈しない姿勢を重ねて強調した。

 会見前には、イスラム国とみられる集団のビデオ声明の映像を確認し、菅義偉(すが・よしひで)官房長官(66)に情報収集の指示を出すなど、自ら陣頭指揮に立つ構えをみせている。

 首相がテロとの戦いに一貫して強気の姿勢を示しているのは、今回の中東歴訪で日本政府が各国でおおむね好意的に受け止められていることがある。

 エジプトでは、英字紙「エジプシャン・ガゼット」が安倍首相とシーシー大統領(60)との会談を1面で取り上げるなど、日本からの投資促進や経済協力に期待する論調が目立った。

 イスラエルで最大の有料新聞「イディオト・アハロノト紙」は、日本とイスラエルの連携強化とパレスチナ問題に関する安倍首相の寄稿に、「真の友からの提案」と見出しを付けていた。

 日本への好意的な論調の背景には、パレスチナ問題で、安倍首相がイスラエルとパレスチナの双方に自制を求めながら、非軍事分野での積極的な支援を打ち出したことが大きい。パレスチナには財政支援を表明。イスラエルではホロコースト博物館を訪れて配慮を示し、ベンヤミン・ネタニヤフ首相(65)と投資協定の年内締結を目指すことで合意した。

 ただ、ネタニヤフ氏が首脳会談で「日本が巻き込まれる可能性もある」と警告したことが今回、現実となった。

 軍事的な対抗措置を持たない日本にとって、取れる手段は限られる。

 安倍首相はパレスチナのマフムード・アッバス議長(79)との会談後、エルサレムに戻り、ヨルダンのアブドラ国王(52)やエジプトのシーシー大統領らに電話で協力を求める予定だ。同行筋は「こういう時にすぐに電話できるのは、これまでの一連の外交の成果だ」と強調するが、本当の正念場はこれからだといえる。(エルサレム 沢田大典/SANKEI EXPRESS

 ≪重要な資金源 人質最大限に利用≫

 日本人とみられる男性2人の殺害を警告したイスラム教スンニ派過激組織「イスラム国」は、敵対勢力に恐怖を与えるために人質を最大限に利用する戦術をとっている。身代金が支払われた人質については解放する方針をとっているとみられているが、身代金はイスラム国の重要な資金源になっているとされる。支払いの可否についての判断は各国で割れている状況だ。

 米紙ニューヨーク・タイムズなどによると、シリアでは昨年11月時点までに少なくとも13カ国、20人以上の民間外国人がイスラム国に拘束されたとみられている。このうち、身代金を支払ったとされるフランス人やスペイン人らは解放されているが、「テロリストとは交渉しない」との方針を掲げる米国や英国の人質は、殺害されるか拘束が続いている。

 実際にイスラム国がこれまでに得た身代金の額などは不明だ。

 ただ、イスラム国が、活動範囲であるシリアやイラクだけでなく、周辺のアラブ諸国や欧米、南・東南アジアなどからも多くの戦闘員を吸収し勢力を維持している背景には、他の武装組織に比べて高額の給与を支払うことができる資金力がある。

 イスラム国には、支配地域内で産出される原油の密輸収入や住民からの徴税、イスラム慈善団体を隠れみのにした海外からの支援といった収入源があるとみられるが、身代金も財源の重要な一部となっているのは間違いない。

 またイスラム国は、身代金が得られない場合でも、人質が助けを乞う様子や殺害の映像をネット上に流すなど、人質を最大限に利用して国際社会の動揺を誘う戦術をとる。殺害は人質の頭部を切り落とすなどの残忍な方法で行われている。

 これは、斬首がイスラム国の奉じるシャリーア(イスラム法)に規定された刑罰の一種であることとともに、敵対する勢力にイスラム国に対する恐怖心を植え付ける狙いがあるためだ。

 最高指導者のアブバクル・バグダーディ容疑者が全イスラム教徒を率いるカリフ(預言者ムハンマドの後継者)を自称し、「ジハード(聖戦)」を標榜(ひょうぼう)するイスラム国にとり、異教徒の外国人は、たとえ民間人であっても「信仰の敵」にほかならない。要求が受け入れられなければ、殺害することにためらいはないとみられる。(カイロ 大内清/SANKEI EXPRESS

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