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【イスラム国殺害脅迫】時間との闘い 乏しい手立て

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【イスラム国殺害脅迫】時間との闘い 乏しい手立て

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関係閣僚会議を終え、取り囲んだ記者団の質問に答える安倍晋三(しんぞう)首相(中央)=2015年1月21日、首相官邸(ロイター)  ≪「イスラム国」人質 首相、救出に全力と強調≫

 安倍晋三首相(60)は21日夜、過激派「イスラム国」が人質とした日本人2人への殺害警告に関し「総力を挙げて対応する」と述べ、救出に全力を挙げる考えを強調した。菅義偉(すが・よしひで)官房長官(66)は、犯行グループによる72時間以内の身代金支払い要求に関し、期限は23日午後2時50分ごろとの認識を示した。だが、政府は「イスラム国」との折衝のパイプを持っていない上、2人が拘束されているとみられるシリア国内に外交拠点も置いていない。事態打開への有効な手立てを見いだせないまま、「72時間」は刻一刻と迫りつつある。

 シリア大使館は閉鎖中

 菅氏は21日の記者会見で、人質2人について、湯川遥菜(はるな)さん(42)と後藤健二さん(47)と判断したことを発表した。家族による画像の確認などを根拠とした。犯行グループがネット上に出したビデオ声明の映像についても「『イスラム国』関係者による犯行である可能性が高い」と認めた。

 犯行グループとの接触は否定した上で、イスラム教の宗教指導者を含む地元有力者を通じ、接触を模索していると説明。2人の安否は不明とした。一方、2人と親交があるというイラク人コーディネーターの男性の話で20日、後藤さんが取材先だったシリア北部で「自分の責任でイスラム国支配地域へ行く」とするビデオを残した後に行方不明となっていたことが分かった。

 人質救出までに残された時間はわずかだが、外務省はシリアの内戦激化に伴い、2012年3月に在シリア大使館の一時閉鎖を決定。大使館の機能は隣国の在ヨルダン大使館に移管され、その後、シリア国内に日本政府関係者は足を踏み入れていない。このため、シリアに残る現地人スタッフらからの情報に頼っているが、「生の情報に接することができず、質と量双方で限界がある」(外務省関係者)という。

 政府は、在ヨルダン大使館員を軸に構成する現地対策本部の体制に関しても「規模や要員は相手に手の内を見せることになる」として詳細を公表していない。昨年8月に湯川さんが「イスラム国」に拘束されたとみられる事件が発生して以降、在ヨルダン大使館には十数人が詰めているが、外務省はアラビア語が堪能な省員を新たに派遣するなど体制強化を急いでいる。

 身代金支払いは「屈服」

 「イスラム国」側は、日本政府に対し2億ドル(約235億円)の身代金を求めているが、テロとの戦いで西側諸国と共同歩調を取っている以上、安易に応じるわけにもいかない。

 首相は21日、官邸で記者団に「決してテロに屈することはない」と強調。外相の経験がある自民党の高村正彦副総裁も記者団に「日本政府が(イスラム国対策の)人道支援をやめるのは論外だ。身代金を払うこともできない」と述べ、政府に毅然(きぜん)とした対応を求めた。

 身代金要求に応じれば、新たなテロの資金を提供したに等しく、日本は「テロに屈した国」として国際社会から厳しい批判にさらされかねないためだ。ただ、閣僚経験者は「払うときもあれば払わないときもある」として、過去には身代金を支払った事例があることを明かす。

 首相は関係閣僚会議で、犯行グループがインターネット上で日本を「十字軍の一員」と敵視していることを踏まえ「徹底した情報戦を展開する必要がある。卑劣なテロとの戦いに万全を期す」と強調。会議後、記者団には人質救出に関し「厳しい時間との闘いだ」と困難な現状を認めた。(SANKEI EXPRESS

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