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【イスラム国殺害脅迫】「身代金拒否」米圧力に異論 きょう期限

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【イスラム国殺害脅迫】「身代金拒否」米圧力に異論 きょう期限

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2014年10月にシリアのクルド人居住地域コバニ近郊で撮影された後藤健二さん(映像メディアのビデオから、AP)  イスラム教スンニ派過激組織「イスラム国」とみられるグループが人質にした後藤健二さん(47)と湯川遥菜(はるな)さん(42)を殺害するとして身代金2億ドル(約235億円)を日本政府に要求した事件で、犯行グループが72時間とした身代金支払いの「期限」が迫ってきた。政府は第三国の情報や斡旋(あっせん)を受け、シリア地域の部族やイスラム教指導者ら影響力を持つ人物を仲介者とする交渉を模索。しかし、難航しているとみられ、緊張感が高まっている。一方、米国は身代金による解決を図らないよう日本政府に求めているが、こうした姿勢には米国内で異論も出始めている。

 関係団体通じ支払いも

 政府は、身代金支払いの期限を23日午後2時50分頃と判断し、2人の早期解放に向けて全力をあげている。

 日本の対応に世界の注目が集まる中、米国防総省のスティーブ・ウォーレン報道部長は記者会見で「同盟国の日本を支援するために、できることは何でも行うつもりだ」と強調。しかし一方で、共同通信によると、米国務省当局者は21日、「身代金の支払いはテロ組織の助長につながる。日本はこの長年にわたる米国の方針を承知しており、人質を取った者に見返りを与えてはならない」と日本政府にくぎを刺した。

 ただ、人命第一に考えるのなら、身代金の支払いも選択肢として考えざるを得ないとの見方もある。国策として身代金の支払いを拒否した米国と英国の人質計5人は、イスラム国によって殺害されたが、フランス、ドイツ、スペインなどの人質十数人が解放されたのは、身代金と引き換えだったとみられている。各国政府は身代金の支払いを否定しているが、米紙ニューヨーク・タイムズは解放された人質などの証言から、支払いが行われたのは確実としている。政府が直接支払うのではなく、「開発援助」などの名目で関係団体を通じて支払われたとみられる。

 特殊部隊投入も失敗続き

 米国では2001年の米中枢同時テロの後に制定された「愛国者法」により、テロリストや外国のテロ組織への「資源」の提供が禁じられている。身代金はこれに当たると考えられ、支払い要求を受けた家族なども、米政府当局者から法令順守を求められる。だが、最近ではこれに異論も上がっている。

 論議を呼んだのは、昨年8月にイスラム国により斬首殺害された米国人ジャーナリスト、ジェームズ・フォーリー氏=当時(40)=のケースだ。イスラム国から1億3250万ドル(約156億円)の身代金を要求された家族は、寄付を募って身代金に充てようとしたが、米政府から中止を求められた。息子を救いたい一心だった母親はメディアに「テロ組織幇助(ほうじょ)の罪で処罰されると脅され、私たちにできることは何もないと言われた」と悔しさを口にした。フォーリーさん一家への同情論がわき上がり、ニュースサイトには「オバマ大統領だって自分の子供が人質になれば、身代金を支払うに違いない」といった批判が投稿された。

 身代金の代わりに米政府が米国人解放のために使っている手段が、特殊部隊による奪還作戦だが、失敗が続いている。

 今回、イスラム国側は約235億円もの身代金を要求しているが、米紙によると、昨年解放された外国人15人の1人当たりの身代金は2億~6億円で、平均すると約3億円だという。米国と同調するのが日本政府の国策だが、現実問題としては何らかの条件をのまなければ、人質解放はありえない。

 米国と同調しない場合は、タイムリミットが迫る中、身代金の金額をいかに引き下げられるかが問題となる。(SANKEI EXPRESS

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