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政治
【イスラム国殺害脅迫】支払期限経過 政府、安否確認急ぐ
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厳しい表情で首相官邸に入る安倍晋三(しんぞう)首相=2015年1月23日、東京都千代田区永田町(ロイター) イスラム教スンニ派過激組織「イスラム国」が日本人2人を殺害すると脅迫した事件は23日午後、日本政府が判断した身代金2億ドルの支払期限を迎えた。安倍晋三首相(60)は閣僚懇談会で「内閣を挙げて全力で取り組んでほしい」と述べ、湯川遥菜(はるな)さん(42)とフリージャーナリストの後藤健二さん(47)の安否確認と早期解放に向けた作業を急ぐよう指示した。菅義偉(すが・よしひで)官房長官(66)は23日の記者会見で、イスラム国側が「72時間以内」とした身代金の支払期限が過ぎたことに関し「依然として厳しい状況だが、2人の解放に向けて全力で取り組んでいる」と語り、救出作業を続行する考えを強調した。安否については「さまざまな情報に接していることも事実だ」と説明した。
政府は、支払期限をイスラム国側のビデオ声明を確認した時刻を起点に23日午後2時50分頃としてきた。首相はその直前、麻生太郎副総理兼財務相(74)や菅氏、岸田文雄外相(57)ら関係閣僚を呼び、国家安全保障会議(NSC)を開催し、情報分析や今後の対処方針を協議した。菅氏はイスラム国の動向について「相手側の意図や背景は分析しているが、コメントは控えたい」と述べるにとどめた。
また、中谷元(なかたに・げん)・防衛相(57)は23日、米国のチャック・ヘーゲル国防長官(68)との電話会談で、早期解放に向けた協力を要請したほか、キャロライン・ケネディ駐日米大使(57)とも防衛省で会談した。ケネディ氏は「いかなるサポートも行う用意がある」と支援を約束した。
≪対応手探り 「相手の出方待つしか」≫
「イスラム国」の日本人殺害脅迫事件は、身代金支払期限の「72時間」が経過したが、日本政府はこの間、関係国などを介して犯行グループ側との間接的な接触を水面下で模索しつつ、対外発信を強化するなどしてイスラム国側に早期解放を求めてきた。だが、相手側の動きは読み切れず、手探りの対応を迫られ続けている。
「相手の出方を待っている状況だ」。外務省幹部は23日夕、こう語り、イスラム国側の動きを事実上見守るしかない苦しさをにじませた。
政府は20日午後2時50分ごろ、イスラム国側のビデオ声明を確認した。それ以降、安倍晋三首相は「人命第一」の解決を掲げるとともに、対イスラム国支援の2億ドル拠出は人道目的であると訴えてきた。
首相は中東滞在中の20日、パレスチナ自治政府のマハムード・アッバス議長(79)と会談。急遽(きゅうきょ)日程を変更して、ヨルダンのアブドラ国王(52)やトルコのレジェプ・エルドアン大統領(60)、エジプトのアブデルファタフ・シーシー大統領(60)らにそれぞれ電話し、早期解決への協力を要請した。
同時に、首相官邸が陣頭指揮をとる形で、ヨルダンなど中東諸国から情報を収集し、シリア地域の部族長やイスラム教指導者らを通じて早期解放への働きかけも続けてきた。
ただ、期限が過ぎた23日夕、政府首脳は「いろいろ報告を受けたが、進展はない」と指摘。官邸筋も「ありとあらゆる手段を尽くしている。だが、状況的に厳しいということに変わりはない」と語った。
もともと、政府は昨年8月、湯川遥菜(はるな)さんがシリア国内で拘束されたことを確認していた。後藤健二さんに関しても、妻に届いたメールなどから昨年12月時点で、シリアに渡航し連絡が取れなくなっていることを把握していた。
しかし「テロとの戦い」を掲げる日本政府として、過激なテロ組織と直接折衝するわけにはいかない。しかも2012年にシリアの日本大使館を撤退させているため、未然に阻止する手立てはなかなか見いだせていなかった。
だが、起きてしまった殺害脅迫事件。政府として中東地域の人脈や情報収集体制が細い中、直接のパイプがない過激な組織を相手にした救出オペレーションは“突貫工事”を余儀なくされている。(SANKEI EXPRESS)
≪居場所特定避け再三移送か≫
「イスラム国」の日本人殺害脅迫事件で、シリアの反体制派活動家は22日、2人は予告声明直前の17日までイスラム国が「首都」とするシリア北部ラッカに監禁されており、その後北部アレッポ郊外に移されたと述べた。
別の反体制派関係者は、2人がアレッポ郊外からさらに移送され、現在はシリアとイラクの国境地帯で拘束されていると証言している。2人の居場所を特定されないように、犯行グループが移送を繰り返している可能性がある。
反体制派活動家によると、イスラム国に近い複数の関係者が17日にラッカの監禁施設で「日本人2人の姿を確認した」という。中東の軍事専門家らによると、イスラム国は身代金の交渉をする場合、支配がより強固な国境地帯に人質を移すという。
2人はそれぞれ、トルコ国境からシリアに入国。湯川さんは昨年8月にシリアでイスラム国に拘束されたとみられる。後藤さんは湯川さんを捜すため、昨年10月25日にイスラム国支配地域に向け出発、その後連絡が取れなくなった。(共同/SANKEI EXPRESS)