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解放交渉 ヨルダンに焦点 「イスラム国」湯川さん殺害か 死刑囚釈放要求
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1月25日、東京・池袋のビル街のスクリーンに映し出された後藤健二さんとみられる映像。「ユーチューブ」に投稿されたもので、湯川遥菜(はるな)さんが殺害されたとみられる写真を持っていた=2015年、東京都豊島区(ロイター) イスラム教スンニ派過激組織「イスラム国」が湯川遥菜(はるな)さん(42)と後藤健二さん(47)の殺害を予告した事件は、日本時間24日深夜、後藤さんとみられる男性が湯川さんの殺害現場とする写真を持つ画像がインターネット上に掲載され、急展開した。安倍晋三首相(60)は25日のNHK番組で、画像について「信憑(しんぴょう)性は高いと言わざるを得ない」と明言。後藤さんの解放を求めた。イスラム国側は後藤さん解放の条件としてイラク人女性死刑囚の釈放を要求しており、収監先のヨルダン政府との調整が焦点になってきた。
画像は日本時間の24日午後11時ごろに投稿された。後藤さんとみられる男性が、首を切断された別の男性の写真を掲げ、英語の音声で「仲間のハルナ・ユカワがイスラム国の地で殺された写真」との説明があった。音声は後藤さんを名乗り「アベ、あなたがハルナを殺した。われわれをとらえていた者たちからの脅迫を真に受けず72時間以内に行動しなかった」と主張。身代金の代わりにヨルダンで収監中のサジダ・リシャウィ死刑囚を釈放させるよう要求した。
首相は番組で、後藤さんの安否について「つまびらかにできない。さまざまな情報に接している」と説明。イスラム国の要求には「まさに今事態が動いているので答えは控える。人命第一の観点からヨルダンとも緊密に協議、連携しながら対応したい」と述べるにとどめた。
その後首相は、インド訪問中のバラク・オバマ米大統領(53)と電話会談し、後藤さんの解放に向けて協力を要請するとともにテロに屈せずに連携して対応することで一致した。
政府関係者によると、政府は24日の早い時間帯に今回の画像を入手。首相は24日夕、この画像をもとにヨルダンのアブドラ国王(52)と電話会談し、事件の対応について意見交換した。
ヨルダンは親日国として知られており、その協力による打開策に期待が寄せられている。一方で、ヨルダンは対イスラム国との戦闘の最前線を担っており、重要テロ犯の釈放に公然と応じるのは難しいとみられる。
イスラム国が釈放を要求しているのは、2005年11月にヨルダンの首都アンマンで起きた連続ホテル爆破テロに関与したとされるサジダ・リシャウィ死刑囚。米中枢同時テロになぞらえて「ヨルダンの9・11」とも呼ばれるこのテロでは少なくとも死者が60人に達し、欧米諸国との友好関係を重視するヨルダン政府に大きな衝撃を与えた。
それだけに、アブドラ国王にとって釈放の決断は難しく、“人質交換”に米国が反対するのも間違いない。ただ、テロ容疑者らの交換は、身代金支払いと並ぶ「禁じ手」だが、前例がないわけではない。また、ヨルダンは昨年12月、シリア上空での作戦中に空軍機操縦士をイスラム国に人質にとられ、現地メディアでは「捕虜交換」を模索していると報じられた。ヨルダンがリシャウィ死刑囚の刑を執行しないのは、何らかの交渉材料とするためだったとの見方もある。砂漠の王国ヨルダンが、事件の鍵を握っている。(SANKEI EXPRESS)