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【イスラム国殺害脅迫】「イスラム国」 身代金なぜ取り下げ

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【イスラム国殺害脅迫】「イスラム国」 身代金なぜ取り下げ

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2005年11月10日、サジダ・リシャウィ死刑囚がかかわった爆弾テロ事件が起きたヨルダン・首都アンマンのホテルの結婚式会場を片付ける人々(ロイター)  イスラム教スンニ派過激組織「イスラム国」に拘束された後藤健二さん(47)が、湯川遥菜(はるな)さん(42)の殺害場面だとする写真を持った画像が公開された。イスラム国が新たな要求を突きつけ、事態がめまぐるしく移り変わる中、いくつかの疑問が浮上している。

 重要な死刑囚

 イスラム国は今回、後藤さんの解放と引きかえに、2005年11月にヨルダンの首都アンマンの連続ホテル爆破テロに関与したとして死刑判決を受け、ヨルダンで収監中のイラク人女性、サジダ・リシャウィ死刑囚の釈放を求めた。

 リシャウィ死刑囚はどれほどの重要性を持つ人物なのか。アラブのメディアによると、1970年生まれのリシャウィ死刑囚は2005年、夫のフセイン・シャマリ容疑者とともにアンマン市内のホテルで自爆テロを図ったが、爆弾が爆発せず失敗。シャマリ容疑者はその場で自爆した。この事件では別の2つのホテルなども標的となり、少なくとも計60人が死亡している。

 リシャウィ死刑囚は、イスラム国の前身である「イラクの聖戦アルカーイダ組織」を率いたザルカウィ容疑者の右腕と呼ばれたサミル・リシャウィ容疑者=04年に米軍の掃討作戦で死亡=の妹としても知られる人物だ。別の兄弟少なくとも2人も、イラクで米軍との戦闘で死亡している。

 リシャウィ死刑囚はイスラム国にとって、組織に多大な貢献をした一族の一人であり、象徴的な意味を持つ女性ジハーディスト(聖戦主義者)だともいえる。この一族は、イスラム国指導者、バグダーディ容疑者の元妻と同じ部族出身との情報もある。

 アラブ流交渉術

 最初の疑問とも関連するもう一つの謎は、なぜイスラム国が金銭要求を取り下げたのかという点だ。

 イスラム国は20日に公開した声明ビデオで、計2億ドル(約235億円)もの身代金を要求していたが、今回のメッセージでは後藤さんに、「彼ら(イスラム国)はもう金を求めていない。だからテロリストの資金源になる心配はないんだ」と訴えさせ、リシャウィ死刑囚との身柄の交換を持ちかけた。

 最初に2億ドルという法外な金額を提示し、その後、要求を引き下げることで受け入れやすくする狙いだった可能性は高い。アラブ世界の商取引などではよくみられる交渉術だ。

 スパイの疑い強め

 さらに、イスラム国は今回、どうしてメッセージの発信役に後藤さんを選んだのだろうか。

 イスラム国が殺害したと示唆する湯川さんは昨年8月に拘束されて以降、イスラム国支持者らのウェブサイトなどで、銃器を所持していたことなどを理由に「日本や欧米のスパイだ」との疑いをかけられてきた。湯川さんがフェイスブックで、自身の肩書を民間軍事会社の最高経営責任者(CEO)と公開していたことも、嫌疑に拍車をかけたものとみられる。

 これに対し後藤さんは、主に紛争地を取材するジャーナリストとして高い評価を受けてきた。後藤さんの仲間らが、後藤さんにイスラム国と敵対する意図はなかったなどとして助命を訴えた声明文は、英語やアラビア語で多くの過激派系サイトにも転載されている。

 こうした点からイスラム国は、湯川さんに比べて後藤さんの方が日本や諸外国に向けての発信力が高い、と判断した可能性もありそうだ。(カイロ 大内清/SANKEI EXPRESS

 ≪「強く非難」 各国、日本支援を表明≫

 過激派「イスラム国」が日本人2人を人質とした事件で、湯川遥菜(はるな)さんが殺害されたとする画像がインターネット上に流れたことについて、各国政府は相次いで強く非難、後藤健二さんの救出に全力を挙げる日本への支援を表明した。

 オバマ米大統領は24日、イスラム国を「強く非難する」との声明を発表。25日には滞在先のインドで、安倍晋三首相と電話会談し、人質事件に関し連携して対応する方針を確認。テロに屈することなく、世界の平和と安定に協力する方針で一致した。米政府は画像について「イスラム国による湯川さん殺害」(オバマ氏らの声明)と判断。米国家情報長官室(DNI)は米情報機関による画像分析の結果から、画像の「信憑(しんぴょう)性を疑う理由はない」としている。

 自国民2人がイスラム国に殺害された英国のキャメロン首相は24日、「テロリストの残虐さを再び思い知らされた」とする声明を発表。「困難な局面にある日本国民と結束し、日本政府にできる限りの支援を続ける」と表明した。

 パリで連続テロ事件が起きたフランスのオランド大統領は25日、「残忍だ」と強く非難する声明を発表。「テロとの戦いに対する日本の決然とした取り組みを評価する」とし、過激派対策で協力していくと強調した。

 中国国営通信の新華社も人質事件を速報。韓国の聯合ニュースなども「日本が衝撃に包まれた」と伝えた。(共同/SANKEI EXPRESS

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