ニュースカテゴリ:EX CONTENTS
国際
「国なき民」クルド人の逆襲 「イスラム国」からシリア要衝奪還
更新
トルコ国境と接したシリアの街ラス・アルアインで1月26日、クルド人部隊がアイン・アラブ(クルド名コバニ)を掌握したとのニュースを喜ぶクルド人たち=2015年(ロイター) 米軍主導の空爆など有志連合の軍事支援を受けたクルド人部隊は26日、4カ月にわたる激しい戦闘の末、イスラム教スンニ派過激組織「イスラム国」が占拠していたトルコ国境に近いシリア北部の要衝、アイン・アラブ(クルド名コバニ)を掌握した。米中央軍によると、クルド人部隊はアイン・アラブの約90%を掌握し、英国のシリア人権監視団もクルド人部隊がアイン・アラブを奪還したと発表した。中央軍は「イスラム国との戦いの終結はまだ遠いが、彼らの戦略目標の一つが否定された」としている。米軍などによる地上軍投入の見通しがないなか、国家を持たないクルド人たちが「反イスラム国」の最前線に立つ姿が浮き彫りになった。
「コバニは私たちの血で解放した。女性も銃を取り戦っている。多くの人は帰還を求めているが、戦いは終わっていない」。国境をまたいで北側に位置するトルコ南部スルチで出会ったシリアのクルド人組織「民主統一党」(PYD)党員、ファリド・アティ氏(43)はこう述べた。拠点都市奪還の知らせに、スルチで避難生活を送るクルド人らは喜びにわいた。
コバニで裁判所判事を務めていたファリド氏は「人々を苦しめる宗教を中心とした国づくりではなく、多民族、多宗教が共存できる形を目指している」と強調。日本人ジャーナリスト、後藤健二さん(47)を拉致したイスラム国を非難し、戦後復興に日本の力を貸してほしいと訴えた。
コバニは周囲3キロ四方ほどの小さな街だ。イスラム国は昨年9月、それまで包囲していたコバニに進撃し、20万人にも及ぶクルド人が脱出したといわれる。多くは国境を越え、スルチなどで食料など互いに融通し合いながら暮らしている。
ただ、トルコ政府は、自国内のクルド人組織「クルド労働者党」(PKK)を分離独立を目指す「テロ組織」とし、対立してきた経緯がある。
先のファリド氏もトルコ政府の方針を念頭に、「クルド人国家の建設を目標とはしない」と強調したが、そのトルコは昨年10月末、武器、弾薬の陸路通過を許可。イラク北部のクルド人政府が、トルコを経由する形で重火器と戦闘要員150人をコバニに送った。コバニでの戦闘にはシリア反体制派の自由シリア軍の兵も加わっているという。
スルチからコバニを見下ろす丘では26日、奪還したはずの街の方から迫撃砲の爆発音や自動小銃の銃撃音が時折、聞こえてきた。
「コバニ奪還は、過激派と戦っているのはクルド人部隊だということを世界に知らしめた。トルコはいや応なしにその事実を認めざるを得ない。今後、クルド組織が『テロ組織』の認定を免れる可能性もある。クルドが国家となるきっかけになるかもしれない」
丘の上からコバニの街を撮影していたトルコ人記者は、こんな見方を示した。(トルコ南部スルチ 内藤泰朗/SANKEI EXPRESS)