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政治
【民主党代表選】新代表に岡田氏 決選投票制す リベラル系取り込み バラバラ感払拭なお険し
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会見を終え、壇上からおりる岡田克也新代表=2015年1月18日午後、東京都千代田区(宮崎裕士撮影) 民主党は18日の臨時党大会で代表選の投開票を行い、岡田克也代表代行(61)が、細野豪志(ごうし)元幹事長(43)と長妻昭(あきら)元厚生労働相(54)を破り、新しい代表に選出された。岡田氏の任期は2017年9月まで。4月の統一地方選や来年夏の参院選を控え、低迷する党の立て直しと自民党に対抗する野党の結集で手腕が問われることになる。
岡田氏はさっそく幹事長などの党役員人事に着手した。代表選出後の記者会見で「『オール民主』ということを考えてしっかりとした人事を行う」と述べ、細野、長妻両氏の起用を含め挙党態勢で臨む意向を示した。岡田氏を支援した枝野幸男(ゆきお)幹事長(50)の続投や、蓮舫(れんほう)参院議員(47)ら女性の幹部登用も視野に検討を進める。
岡田氏は新代表に選ばれた直後、「政権交代は容易なことではない。全員の力が必要だ。私と一緒に苦しい道を乗り越えていこう」と結束を呼び掛けた。投票前の演説では、安倍晋三政権が進める集団的自衛権の行使容認に反対する姿勢を強調し、安倍政権下では憲法改正議論に加わらない意向も重ねて表明。野党再編に慎重な考えを示した。
代表選は昨年の衆院選で海江田万里(かいえだ・ばんり)代表(65)が落選したため行われた。結果は党員・サポーターや地方議員も参加した1回目が細野氏298ポイント、岡田氏294ポイント、長妻氏168ポイント。国会議員らによる上位2人の決選投票で岡田氏が133ポイントを獲得し、細野氏(120ポイント)に逆転勝利した。
≪リベラル系取り込み バラバラ感払拭なお険し≫
民主党代表選の雌雄を決したのはリベラル系だった。岡田克也、細野豪志(ごうし)両氏の決選投票の国会議員票の差はわずか7票。1回目の投票で3位だった長妻昭氏を支持する旧社会党の赤松広隆前衆院副議長グループの十数人が岡田氏に流れた。赤松氏らは集団的自衛権行使や原発再稼働に反対の姿勢で、岡田氏はリベラル系の意向を尊重せざるを得ない構図になった。保守系とのバラバラ感の払拭の道のりは前途多難だ。
「まず、長妻さんにお礼を申し上げたい。代表選での発言には説得力があり、勉強させてもらった」
岡田氏は決選投票直前の演説でこう切り出し、長妻陣営に猛烈にアピールした。決選投票前の演説文を事前に用意していた岡田氏は「安倍晋三首相は憲法観を撤回しなければならない」とも語り、憲法改正を嫌う赤松氏らに最大限の配慮を示した。
これには伏線があった。岡田氏と赤松氏は17日夜、都内のホテルでひそかに会談した。「オレの処遇はいいから若いヤツを頼む」。赤松氏は近藤昭一(しょういち)元環境副大臣(56)らを念頭に、決選投票で岡田氏を応援する見返りとして人事での処遇を求めた。岡田氏は明確な回答は避けたが、決選投票前の演説で、人事や政策の方向性は大きく縛られてしまった格好となった。
決選投票では、長妻氏を支援したリベラル系の間で対応が割れた。赤松グループとは別に大畠章宏前幹事長(67)のグループ10人前後は細野氏に投票した。
細野氏は17日夜、大畠グループの大畠氏や鹿野(かの)道彦元農林水産相(72)と都内のホテルで向き合い、支援を求めた。岡田氏との勝負になると踏んでいた細野氏は、リベラル系でも保守に近い大畠グループの切り崩しのため、大畠グループを以前率いていた鹿野氏の説得に力を込めた。
岡田陣営からも説得工作を受けていた大畠氏が、グループの議員に携帯電話のメールで「細野氏支持」を指示したのは決選投票の直前だった。
細野陣営は赤松グループの切り崩しのため、輿石東(こしいし・あずま)参院副議長(78)への働きかけも行っていたが、「岡田陣営の水面下での働きかけが激しかった。向こうが上手だった」(細野陣営)とほぞをかんだ。
岡田氏は決選投票の演説で、細野陣営が積極的だった集団的自衛権の行使を容認する安全保障基本法案に言及し、「自民党の考え方とあまり大きな差がないんじゃないか。現在の案では賛成することはできない」と明確に否定し、くさびをうった。
しかし、細野陣営は「再提出する。リベラル色が強まることはあってはならない」と鼻息は荒い。細野氏も敗北後、「岡田代表のもとで私もしっかり頑張りたい」としながらも、安保基本法案に関し「互いにまとまれる案をつくればいい」と語り、なおこだわりをみせる。通常国会でメーンテーマとなる安全保障法制などをめぐり、火種は残った。(楠城泰介/SANKEI EXPRESS)