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年金積立運用益、過去最高の15兆円 「相場次第」の危うさ リーマン時は大幅損失 

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年金積立運用益、過去最高の15兆円 「相場次第」の危うさ リーマン時は大幅損失 

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日経平均株価は6月24日、取引時間中に2万900円台に乗せ、1996年12月以来、約18年半ぶりの高値をつけた=2015年、東京都中央区(早坂洋祐撮影)  利回りも12.27%

 厚生年金と国民年金の積立金を運用する年金積立金管理運用独立行政法人(GPIF)は10日、2014年度の運用結果が15兆2922億円の黒字だったと発表した。運用利回りは12.27%で、いずれも過去最高。3月末時点の積立金総額は143兆9509億円となった。株高と円安で運用環境が良好だったことに加え、昨年10月に資産構成の割合を変更して株式比率を拡大したことを反映した。

 ただ、中国の景気減速やギリシャの財政危機など世界経済の先行きは不透明感を増している。株式市場の動向が年金積立金の運用状況を大きく左右する構図は鮮明で、損失を出すリスクと背中合わせだ。

 積立金は長期運用で一定の利益を上げることを想定。単年度の損益は年金額や保険料に影響しないものの、今回の黒字の規模は、厚生年金と国民年金の年間給付総額(約44兆円、13年度)の3分の1に相当する。積立金から14年度中に4兆3658億円を取り崩して年金給付に充てた。

 安倍政権の意向

 市場運用の資産別収益は、国内株式が6兆9105億円、外国株式が4兆7863億円と大幅な黒字。外国債券は1兆8884億円、国内債券は1兆5957億円の黒字でともに堅調だった。

 株式市場の活性化を狙った安倍政権の意向を受け、GPIFは昨年10月、積立金の投資配分の目安を定める資産構成割合を変更。それまでともに12%だった国内株式と外国株式の割合をそれぞれ25%に引き上げ、60%だった国内債券を35%にすると決めた。

 GPIFは新たな構成割合に従い、徐々に国内債券の比率を減らし、株式を拡大。14年度中に約3兆9000億円を国内株式に投じた。

 3月末の積立金全体の資産構成割合は、国内債券39.39%(前年同期53.43%)、国内株式22.00%(同15.88%)、外国株式20.89%(同15.03%)、外国債券12.63%(同10.66%)、短期資産5.08%(同5.00%)。

 ≪「相場次第」の危うさ リーマン時は大幅損失≫

 GPIFの2014年度の運用が過去最高のプラスとなったが、株価上昇の恩恵による面が大きく、今後、相場が下がれば大幅な損失が出る恐れもある。ギリシャ情勢や中国経済の減速などを受け、金融市場には不透明感が高まっており、年金積立金で収益を上げ続けられるかは見通せない。

 GPIFは昨年10月、安倍政権の意向で、資産構成割合(基本ポートフォリオ)を変更して従来の国債を中心とする安定志向の運用を転換。国内外で株式投資を倍増させる一方、国債は大幅に減らし、“積極運用”にかじを切った。政府は「景気が回復すれば、国債価格が下落し、損失が膨らむ。株式を増やしリスクを分散する」などと説明したが、株価をかさ上げし、景気回復を後押しするのが本音だった。今年10月に厚生年金と統合する公務員らの共済年金でも、株式の比率を高める方針を示している。

 株式重視の運用は14年度のように高収益が期待できる半面、損失リスクも高まる。GPIFは08年度、国債中心の運用だったにもかかわらず、リーマン・ショックの影響で約9兆6000億円の赤字を出した。現在のポートフォリオなら、さらに赤字幅が膨らんだ可能性が高い。

 一部の専門家や野党の間では「大きな損失が出れば、将来世代の年金額が減りかねない」「GPIFにリスク運用を管理する体制はない」などの声が上がっている。(SANKEI EXPRESS

 ■年金積立金 会社員の厚生年金と自営業者らの国民年金で、保険料収入から給付費を差し引いた残額を将来の年金支払いに備えて積み立てた資金。2004年の年金制度改革で、約100年かけて計画的に取り崩して給付に充てることを決めた。01年度に旧年金資金運用基金が本格的に市場での自主運用を開始。現在はGPIFが、信託銀行などに委託しながら運用している。

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