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経済
路線価、10都府県で上昇 全国の下落幅縮小 金融緩和背景 不動産投資熱高まる
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東京都内で開かれた不動産投資セミナー=2015年6月(共同) 国税庁は1日、相続税や贈与税の算定基準となる2015年1月1日時点の路線価を公表した。全国約32万9000地点(標準宅地)の対前年平均変動率はマイナス0.4%で7年連続の下落だが、下げ幅は前年より0.3ポイント縮小。昨年上昇に転じた東京、大阪などの大都市圏に京都や沖縄も加わり、上昇は10都府県となった。
景気回復が緩やかに続く中、円安や、安倍政権の経済政策「アベノミクス」による低金利で、海外投資家を中心に不動産投資が活発になっていることが影響した。
上昇率は東日本大震災の復興が進む宮城(2.5%)が最も高く、福島(2.3%)、20年に五輪が開かれる東京(2.1%)と続いた。下落は35道県(3府県減)だったが鹿児島、宮崎、北海道、島根、大分の5道県は昨年より下げ幅が拡大。昨年は全都道府県で変動率が前年から改善しており、景気回復の広がりに差が出ている。
都道府県庁所在地の最高路線価が上昇したのは、3月に開業した北陸新幹線沿線の富山や、福島、松山が新たに加わり21都市。東京、名古屋、広島、大阪の4都市は上昇率が10%を超えた。下落は12市(9市減)。
昨年、74人が死亡する土砂災害が起きた広島市では、被害の大きかった安佐南区八木3丁目で49%下落した。東京電力福島第1原発事故による避難指示区域は、算定が困難として昨年に続き路線価を「ゼロ」とした。
価格の全国1位は、1986年から30年連続で東京・銀座5丁目の文具店「鳩居堂」前の銀座中央通り。昨年より14.2%上昇の1平方メートル当たり2696万円だった。
税務署管内別の最高路線価のうち上昇率がトップだったのは、北海道倶知安町山田で28%。
≪金融緩和背景 不動産投資熱高まる≫
東京、大阪、名古屋などの大都市圏で路線価が上昇した。金融緩和で資金を調達しやすくなった企業や投資家が不動産投資を活発化させたことなどが背景にあり、東京五輪まで上昇するとの期待感から専門家以外の個人の関心も高く、不動産投資市場は活況となっている。
「将来に対する備えとして不動産投資は手段の一つです」。6月、東京都内で開かれたセミナーで投資用アパートなどを販売する「シノケンプロデュース」(東京)の玉置貴史部長は力説した。
顧客は会社員や公務員がほとんどで、上向く景気と、年金制度破綻への懸念や金融機関の融資条件の緩和もあり、アパート経営などの投資を始める人が増加。契約件数も今年は、昨年の倍のペースだという。
土曜日に開かれたセミナーには約80人が参加。横浜市の無職、盛山正さん(52)は「東京五輪もあり、それまでは不動産が値崩れしないと安心して投資している。将来のための財産の基盤をつくりたい」と話した。
法務省の統計によると、2014年に売買による所有者移転登記がなされた建物の数は約58万5000件で、約51万3000件だった11年以降右肩上がりに増えている。売買で所有者が移転した土地の数も、約215万1000件(11年)から約245万7000件に増加した。
「不動産売買は世の中にお金が回ってくると活発になる」。ニッセイ基礎研究所の竹内一雅不動産市場調査室長はそう説明する。大規模投資ファンドや不動産投資信託(REIT)の総投資額もリーマン・ショック以前に匹敵する水準に達しているといい「オフィスの空室率は下がり、都心部の高額分譲住宅などの住宅需要も高い。総じていい状況だ」と解説する。
一方で、多額の費用が掛かる不動産投資のリスクを指摘する声もある。
保田隆明昭和女子大准教授(金融論)は「投資ファンドなどと違い、個人で投資する場合、資産のほとんどを不動産が占めてしまい、リスクの分散ができない」と説明。
現在の不動産投資ブームは金融緩和と低金利が導いているとした上で「前提が変わってくると一気に市場が冷え込む可能性もある」と警鐘を鳴らした。(SANKEI EXPRESS)