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15年度予算成立 過去最大の96兆円 対立法案めじろ押し

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15年度予算成立 過去最大の96兆円 対立法案めじろ押し

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2015年度予算案が参院予算委員会で自民、公明などの賛成多数で可決、一礼する安倍晋三(しんぞう)首相と閣僚=2015年4月9日午後、国会・参院第1委員会室(酒巻俊介撮影)  一般会計総額が過去最大の96兆3420億円に上る2015年度予算は、9日夕の参院本会議で自民、公明両党などの賛成多数により可決、成立した。安倍晋三首相は今後、集団的自衛権行使をはじめ、自衛隊任務を拡大する安全保障関連法案の成立に全力を挙げる。企業の派遣労働者受け入れ期間の制限をなくす労働者派遣法改正案も含め、与野党対立が激化する。

 4年に1度の統一地方選は今月12日と26日に投開票される。地方の景気浮揚策や原発再稼働の是非が争点。各党は当面、選挙戦に重点を置く。

 首相は予算成立後、「地方創生、東日本大震災被災地の復興、子育て支援、難病対策などを力強く進めていくことができる」と官邸で記者団に述べた。併せて「農政改革、働き方の改革、電力改革など戦後以来の大改革や安保法制にしっかり取り組む」と強調した。

 自民、公明両党は安保法制の条文審査を今月14日に始め、下旬からの大型連休前に決着させたい構えだ。政府は5月15日にも閣議決定する方針。

 与党は6月24日までの国会会期を1カ月超延長して成立を図る。民主党は「自衛隊任務の歯止め策が不十分」として対案を検討する。

 政府は、全国農業協同組合中央会(JA全中)の地域農協への監査権限をなくす農業関連法改正案の成立も目指す。民主党は派遣労働が固定化する懸念を指摘し、労働者派遣法改正案に反対する。

 高収入の専門職の人を残業代支払いといった労働時間規制から外す「高度プロフェッショナル制度」創設を盛り込む労働基準法などの改正案も、与野党対決法案となる。

 膨らむ社会保障費

 15年度予算の社会保障費は、初めて31兆円台に達した。防衛費は3年連続の増額で5兆円に迫る水準。税収は消費税増税と法人税の伸びにより、54兆5250億円と高水準を見込む。新規国債発行額は、4兆円以上減らして36兆8630億円。

 昨年末の衆院選の影響で国会提出は2月にずれ込み、政府は2年ぶりの暫定予算を編成した。

 ≪財政再建めぐり駆け引き 経済成長の扱い焦点≫

 2015年度予算が成立したことを受け、政府は夏に向け財政再建計画の策定作業を本格化させる。国と地方の基礎的財政収支を20年度に黒字化する目標は維持する方針だが、より柔軟に財政出動できるよう対国内総生産(GDP)比の債務残高引き下げも重視すべきだという考え方が浮上。経済成長の成果をどう反映させるかをめぐり駆け引きが始まっている。

 15年度予算の一般会計総額は過去最大の96兆3420億円で、歳入の約4割を借金に頼る構造は変わっていない。消費税率10%への再増税を17年4月に1年半延期した中で、黒字化への道筋をどう描くかが新たな財政計画の焦点となる。

 ただ内閣府の試算では20年度も9兆4000億円の赤字が残る見込みで、黒字化への道は険しい。そこで政府、自民党の一部で持ち上がったのがGDPに対する債務残高の比率を低下させる案だ。

 この目標は元来、黒字達成後に目指す課題と位置付けられてきたが、経済規模が拡大すれば、毎年度の収支が赤字のままでも債務残高比率が下がる場合がある。内閣府の試算は高成長と低金利が続く前提のため、GDPが拡大する一方で国債の利子は抑えられ、債務残高比率は15年度の195.1%から20年度には186.0%へ改善する見通しとなっている。

 債務残高比率に着目すれば、毎年度の収支が十分に改善しない場合でも財政再建をアピールしやすい面がある。

 経済財政諮問会議の民間議員は、経済再生と歳出改革、歳入改革の3本柱で財政再建を進めるべきだとし、毎年度平均でGDP比0.5%程度の収支改善を2月に提言した。

 ただ、安倍晋三首相は20年度までは消費税率を10%超に上げる考えがないと明言、痛みを伴う歳出削減の具体的な議論も「4月の統一地方選が全て終わってから」(財務省幹部)となる。(SANKEI EXPRESS

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