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【Q&A】諫早湾制裁金倍増 裁判乱立 協議会も機能せず

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【Q&A】諫早湾制裁金倍増 裁判乱立 協議会も機能せず

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国営諫早湾干拓事業の潮受け堤防北部水門(手前)。右側が調整池=2015年2月27日、長崎県諫早市(共同)  国営諫早湾干拓事業(長崎県)の開門調査をめぐり、佐賀地裁が開門をしない国へ課した1日45万円の制裁金を2倍に増やす決定をしました。

 Q 諫早湾事業とは

 A 1950年代に当時の西岡竹次郎長崎県知事が考案して、諫早湾を埋め立てて広大な田畑にする計画でした。しかし、地元の反対で規模を縮小し、89年に着工。97年に湾の奥を潮受け堤防で閉め切って、畑や農業用の調整池などが2008年に完成しました。

 Q 目的は

 A もともとは戦後の食糧難を背景とする水田開発でしたが、米余りを受け高潮に備えた防災対策や畑の開発に切り替わりました。

 Q 開門調査とは

 A 周辺の漁業者は「湾を閉め切った影響で魚介類がとれなくなった」と主張し、福岡高裁が10年、5年間の開門を国に命じる判決を言い渡しました。排水門を開け放し、魚や二枚貝が増えるかどうか調べるためです。当時の菅直人首相は上告しなかったため、判決が確定。国は3年以内に開門する義務を負いましたが、閉じたままです。

 Q なぜですか

 A 地元財界のほか、畑が水に漬かると営農者が反対しているからです。一部の住民は、台風などで大量の水が民家に流れ込むと不安を訴えています。有明海の漁業不振の原因は、ノリ用農薬(酸処理剤)による海洋汚染などと主張している専門家もいます。

 Q 裁判がいろいろ起きているようですが

 A 乱立しています。営農者らは長崎地裁に開門を差し止める訴訟を起こし、差し止めを認める仮処分決定が13年11月に出ました。

 佐賀地裁は昨年4月、開門するまで漁業者らに制裁金を支払うよう国に命令。逆に長崎地裁は昨年6月、開門すれば国が今度は営農者らにも制裁金を払うよう命じ、その後、2つの決定は最高裁で確定しました。

 Q 国の立場は

 A 林芳正農水相は「速やかに最高裁の統一的な判断を求める必要がある。関係者の接点を探る努力も続ける」と説明しています。ただ、最高裁が統一的な判断を下すかどうかは不明で、時間もかかります。また、営農者側は国との話し合いを拒んでおり、農林水産省や長崎県など有明海沿岸の自治体が昨年つくった協議会もほとんど機能していないと言えます。

 Q 解決しないのですか

 A 国が2月末までに漁業者側へ払った制裁金は計1億円を超えています。今回の倍増決定を受け、農水省は予算の確保を検討していますが、漁業者側は再度の引き上げを示唆しています。営農者側も制裁金増額の申し立てを検討しています。ただ、制裁金の元は税金です。事業主体の国には、自治体や関係者と真剣に話し合い、事態解決に向けた最大限の努力が求められます。

 ≪すでに1億1790万円 追加予算検討≫

 漁業者に支払い続ける制裁金が倍増されたことを受け、農水省は国家賠償などに備えて用意する予算からの追加支出を検討している。

 農水省は2015年度予算案の「賠償・償還および払戻金」の歳出枠に、1日45万円の計算で1億6470万円の制裁金費用を盛り込んでいる。だがこの金額では半年分にしかならないため、同じ枠内での追加を検討する。

 15年度の「賠償・償還および払戻金」は約7億2300万円を計上する予定だが、制裁金以外の支出も予想されることから、なお不足する場合は災害時などの緊急支出に備える国の予備費や、補正予算を組んでの支払いも検討する。

 制裁金の支払いは、開門調査を命じた福岡高裁確定判決を履行させるため、佐賀、長崎両県の漁業者が請求。昨年の佐賀地裁決定で支払い義務が生じ、国は昨年6月分から今年2月分までで計1億1790万円を支払った。(SANKEI EXPRESS

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