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政治
【2015年度予算案】96.3兆円 地方・成長・財政見据え
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臨時閣議に臨む(左から)甘利明(あまり・あきら)経済再生相、安倍晋三(しんぞう)首相、麻生太郎財務相=2015年1月14日午前、首相官邸(共同) 政府は14日、一般会計の総額が過去最大の96兆3420億円となった2015年度予算案を閣議決定した。昨年4月の消費税率引き上げや法人税収の伸びにより、税収は54兆5250億円と24年ぶりの高水準を見込む。新規国債発行額は36兆8630億円で、前年度から4兆円超縮小し、6年ぶりに40兆円を下回る。
歳入総額は、税収や日銀納付金などの税外収入が伸び、59兆4790億円。政策経費は72兆8912億円で、基礎的財政収支の赤字は約13兆4000億円。対国内総生産(GDP)比の赤字を10年度から半減させる政府目標は達成する見通し。
社会保障費は高齢化の進展で前年度から約1兆円増え、過去最大の31兆5297億円。防衛費は4兆9801億円で、3年連続増加した。自治体が自由に使える1兆円の歳出枠を創設し、安倍晋三政権が重視する地方創生を後押しする。
≪随所に「安倍カラー」も歳出改善に課題≫
2015年度予算案は、足元の経済を立て直すと同時に、人口減対策を踏まえた地方活性化や成長戦略の加速など、将来の日本経済の成長も見据えた野心的な内容となった。しかも、消費税再増税延期で財源が細る中、財政の健全性を示す基礎的財政収支(プライマリーバランス、PB)の赤字半減目標も達成し、財政健全化への取り組みも前進させるという“三方よし”を目指したものだ。
予算案の決定後、安倍晋三首相は「経済再生と財政健全化を同時に達成する予算になった。全国津々浦々に景気回復の成果を届けたい」と記者団に語った。
“安倍カラー”の象徴が「地方創生」への手厚い予算配分だ。自治体が自由に使える新たな1兆円の歳出枠を新設。それとは別に、地方大学と地域企業の連携支援や新規就農の支援など地方活性化策に7000億円超の予算を計上した。社会保障の充実策の子育て支援などとあわせ、国と地方で総額3兆円超を地方創生に回す。消費税増税で失速した景気を回復させ、安定成長の持続を目指すうえで「地方創生は予算のメリハリの『ハリ』の代表格」(財務省主計局幹部)だった。
農業や教育予算を抑える一方、企業や研究機関の競争力強化を後押しするため、人工知能(AI)やロボットの研究開発支援の予算を手厚くした。経済の生産性を高め、成長戦略を加速する狙いだ。
国益を意識した政策も盛り込まれた。防衛費は14年度より1000億円増の予算を確保。離島防衛や日米の防衛協力を見据えた装備品強化を重視した。在外公館の新設など対外発信力の強化策もほぼ満額認めた。慰安婦問題に対する事実誤認などを踏まえ、国際社会での日本の発信力を強化する。昨年12月の衆院選での与党大勝という信任を背景に、随所に安倍首相の意向の反映がうかがえる。
ただ、歳出改革への取り組みは力不足だ。昨年夏時点の財政収支の見通しは、PBの赤字半減目標を達成する水準から7500億円程度歳入に余裕があった。しかし、予算案では高齢化による経費の自然増を抑えきれず、社会保障費は前年度より1兆円増えた。消費税再増税の延期もあり、PB目標は「税収が増えていなければ達成できなかった」(財務省)。税収増分だけでは、自然増もまかないきれず、安倍首相が掲げる「経済再生と財政健全化の両立」に向けた予算の効率化では課題が残った。
日本の借金はすでに1000兆円を超えており、成長と財政再建の二兎(にと)を追うかじ取りは安倍政権の宿命でもある。経済成長に必要な予算を確保していくためにも無駄の徹底排除が欠かせず、政権の強い意志が問われている。(小川真由美/SANKEI EXPRESS)