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経済
世界に波及 東証、今年最大596円安 ギリシャ危機 銀行の営業停止
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終値で今年最大の下げ幅を記録した日経平均株価を示すボード=2015年6月29日午後、東京都中央区八重洲(共同) 財政危機に陥るギリシャ政府は29日、国内銀行の営業を停止させ、資本規制を導入した。欧州連合(EU)の金融支援の期限を30日(日本時間7月1日)に控えるが、72億ユーロ(約9700億円)の支援融資は凍結されたままだ。国際通貨基金(IMF)の債務返済の期限も30日に迫り、デフォルト(債務不履行)や財政破綻などへの不安が高まる。これを受け、東京や上海などアジア市場は軒並み下落し、危機の深刻化に端を発した株安が連鎖した。
29日の東京株式市場では日経平均株価が大幅続落した。終値は前週末比596円20銭安の2万0109円95銭で今年最大の下げ幅を記録。下げ幅は一時600円を超えた。中国市場でも上海総合指数が続落、一時は前週末比7%超値を下げた。欧州の主要株式市場も大幅安で始まった。
また、信認が揺らいだユーロは主要通貨に対して大幅に下落した。円相場は対ユーロで早朝に一時133円台後半と約1カ月ぶりの円高ユーロ安となった。
ギリシャ国内の報道によると、銀行の休業は7月6日までで、財務相が状況に応じて期間の短縮・延長を判断する。ギリシャでは7月5日に、EU側の求める財政再建策受け入れの賛否を問う国民投票を行う。投票の結果が出るまで規制を続ける方針だ。
このほか、現金自動預払機(ATM)からの引き出し額を1日当たり60ユーロに制限し、海外への送金も規制される。国外銀行のカード利用者や年金生活者の引き出しは規制対象外となる。
チプラス氏は28日夜のテレビ演説で、銀行の営業停止に踏み切った理由について、欧州中央銀行(ECB)が28日、国内銀行への追加支援を見送ったためだと説明。国民に対しては預金のほか、賃金や年金の支払いも「安全だ」と述べ、冷静な対応を求めた。
ギリシャの銀行の資金繰りは、ギリシャ中央銀行を通じたECBの緊急支援に頼っている。ECBは28日、支援停止には踏み込まなかったが、段階的に拡大した資金枠の増額を見送った。
チプラス氏は、国民投票実施に必要な支援期限の延長をEU側に要求したが拒否され、ECBの緊急支援枠の据え置きにつながったと主張。EU側に改めて、支援延長を認めるよう要請したことを明らかにした。
欧州債務危機が2009年に表面化して以降、資本規制を導入するのはキプロスに続き2カ国目となる。(ベルリン 宮下日出男/SANKEI EXPRESS)
≪焦点は国民投票 「否決」なら信用不安連鎖も≫
EUがギリシャ向け金融支援の延長を拒否し、ギリシャがデフォルトとなる懸念が高まった。さらに、7月5日のギリシャ国民投票で、EU側の緊縮財政案を受け入れるかどうかも大きな焦点となる。EU側の提案を否決すれば、ユーロ離脱も現実味を帯びる。
30日に支払期限を迎えるIMFへの債務は16億ユーロ(約2200億円)に上り、現状で返済は困難とみられる。早ければ7月1日にもユーロ圏で初の財政破綻が起きる。
ただ、IMFへの返済は「当初は『滞納』扱いとなり、即デフォルトとはならない」(SMBC日興証券の牧野潤一チーフエコノミスト)との指摘もある。その場合、ユーロ圏やECBは債務不履行ではない、と主張することも可能だ。最終的にIMFは理事会でデフォルトを認定する。
こうした中で、5日の国民投票の結果は、今後の行方を大きく左右する。
国民投票で、緊縮財政案が「否決」された場合、(1)公的債務の返済凍結(2)全面的な資本規制開始(3)借金証書(IOU)の発行増加-といった政策がとられる懸念がある。
ギリシャの国際的な信用力はさらに低下し、ギリシャの国内銀行で破綻が相次ぐことも想定される。年金や公務員給与支払いが滞る事態を招く恐れもあり、事態回避のため独自通貨を発行せざるを得ない状況に追い込まれる公算が大きい。ただ、独自通貨も価値は低く、インフレが急激に進む恐れがある。
こうした「ユーロ圏の一部崩壊」により欧州では、「比較的財政基盤が弱いとされるイタリアやスペインに信用不安が連鎖」(みずほ証券の上野泰也チーフマーケットエコノミスト)する懸念も広がっている。
一方、緊縮財政案を受け入れる「可決」となった場合、デフォルトは回避される可能性が高い。JPモルガン証券の山脇貴史チーフ債券ストラテジストは、「EUが再び、支援延長案を復活する可能性が高い。大規模な支援策策定まで資金繰りを支える形になり、今後、1~2年は安定する」とみる。
ただ、国民投票で否決を呼びかけるチプラス政権に「ノー」を突きつける形となり政権には打撃だ。「解散総選挙となり、政治的な空白を作ることになる。その場合、今年いっぱいは混乱が続く」(明治安田生命保険の小玉祐一上席エコノミスト)との指摘もある。
市場関係者の多くは、国民が緊縮財政案を受け入れるとみる。それだけに、否決された場合の影響は大きく、深刻な世界同時株安も現実味を帯びてくる。(SANKEI EXPRESS)