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瀬戸際ギリシャ 日本は円高株安恐れも
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ギリシャの財政再建の一環となる、公営サービスの民営化に反対してデモ行進する労働者たち=2015年6月16日、ギリシャ・首都アテネ(ロイター) 金融支援の継続を巡る欧州連合(EU)とギリシャ政府の交渉が、瀬戸際を迎える。18日のユーロ圏財務相会合で、融資再開の合意ができなければ、ギリシャは7月以降の国債償還が不能になる恐れがある。ギリシャの債務不履行(デフォルト)やユーロ圏離脱も取り沙汰される中、EU各国首脳からは“悲観論”も漏れる。金融市場では、リスク回避の動きも出始めた。
EUと国際通貨基金(IMF)はギリシャに対する約72億ユーロ(約1兆円)の融資を凍結中だ。融資を受けるには財政再建策で合意する必要がある。だが、ギリシャはEUが求める年金減額などの要求を「さらなる景気低迷を引き起こす」(チプラス首相)と拒否し、協議は平行線をたどっている。
フィンランドのシピラ首相は16日、EUとギリシャが6月中に合意するには「奇跡が必要だ」と指摘した。18日の会合で交渉が決裂すれば、6月末が期限となるIMFからの融資計15億ユーロ(2000億円)の債務返済ができない恐れがある。
ただ、その場合でも30日間の支払い猶予期間があり、すぐにはデフォルトにならない。米格付け大手スタンダード・アンド・プアーズ(S&P)などは、民間への債務不履行と異なり、公的機関のIMFに対する返済が滞っても「デフォルトには相当しない」との見解を示している。
しかし7月20日には欧州中央銀行(ECB)への約35億ユーロの国債償還期限が来る。償還ができないとデフォルトと認定されるのは必至だ。ギリシャのユーロ離脱という最悪のシナリオも想定される。欧州各国の国債格下げや世界同時株安につながりかねない。
金融市場では、6月末までに合意できなければ「安全性が高いとされるドイツ国債が買われる一方、信認が損なわれたユーロが売られる公算が大きい」(三井住友アセットマネジメントの市川雅浩シニアストラテジスト)という。デフォルトに至らなくてもリスクを避ける動きが出る恐れがある。
日本でも安全資産といわれる円が買われ、円高ユーロ安となる。欧州向け輸出が多い日本企業は為替差損が膨らみ、輸出企業の業績を押し下げる懸念もある。17日の定例会見で、日本証券業協会の稲野和利会長は、「一時的にマーケットに混乱を呼ぶということはあると考える」と述べた。
こうした最悪のシナリオを避けるため、今回の会合では期限を延ばして協議時間を確保する案が浮上している。
ただ、延長してもギリシャの資金は底を突きかけている。交渉が長引けば「株価の上値が重くなる」(野村証券の尾畑秀一マーケット・エコノミスト)との指摘もある。
一方、今回の会合でEUとギリシャが妥結すれば、「市場のリスク回避姿勢は弱まる」(みずほ証券の金岡直一FXストラテジスト)ため、東京市場でも再び円安・株高が進み、日経平均株価はITバブル期の高値(2万833円)超えも視野に入ってくる。
≪危機回避へ「双方で努力を」 IMF古沢副専務理事≫
国際通貨基金(IMF)の古沢満宏副専務理事は17日、産経新聞のインタビューに応じ、準備資産にあたる特別引き出し権(SDR)の構成通貨について「どこかの段階で人民元が入ってくる」と述べ、早期に採用される可能性を示唆した。ギリシャの債務問題については関係国が歩み寄る必要性を強調した。
SDRは通貨危機などの際、加盟国同士の通貨交換などに使われ、現在は米ドル、ユーロ、ポンド、円の4通貨で構成される。今年は5年に1度の見直しの年で、SDRの構成通貨は国際的な主要通貨と見なされるため、中国は4月の国際通貨金融委員会(IMFC)で、人民元を採用するよう働きかけていた。
古沢氏は「まだ(人民元採用の)議論は始まったところで、すべての材料が手元にあるのではない」としつつも「今年、だめだから2020年(に持ち越す)とは考えづらい」と述べ、人民元が早期に構成通貨入りする可能性を示唆した。
見直しはIMF理事会が判断するが、古沢氏は「いろんなアイデアが可能だ」として、採用要件を柔軟に運用することにも含みを持たせた。
一方、金融支援をめぐり、欧州連合(EU)との交渉が難航するギリシャについては「残された時間は少ないが、双方で努力する。ギリシャも国民を説得し、EUも全体の利益を考える責任がある」と述べた。ギリシャはIMFに対する計15億ユーロの返済期限が6月末に迫っている。(SANKEI EXPRESS)