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時を忘れさせる洞窟住居の町 イタリア・マテーラ
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マテーラの旧市街地区の風景。数百年前にタイムスリップしたかのような錯覚にとらわれる=2015年5月1日、イタリア・バジリカータ州(ロイター)
イタリアといえば、ヨーロッパではフランス、スペインに次ぐ観光大国として知られ、年間約5000万人(世界5位)の外国人が観光客としてこの国を訪れている。ローマ、ナポリ、ミラノ、ベネチア…と観光スポットも豊富で、日本から何回も足を運ぶリピーターも多いが、意外と知られていない穴場が南部には点在する。よく長靴にたとえられるイタリア半島のくるぶしの部分に位置する人口約6万人の町、マテーラもその一つだ。
マテーラはイタリア南部のバジリカータ州の州都ポテンツァの東方約60キロにある町で、旧市街地区には、石灰質の岩肌に作られた「サッシ(岩)」と呼ばれる洞窟住居群があることで有名である。「マテーラの洞窟住居」は1993年にユネスコの世界文化遺産に登録され、町は2019年の「欧州文化首都」に指定されることが決まっている。
サッシがいつ頃から作られたかは不明だが、8世紀から13世紀にかけて、東方からイスラム勢力を逃れたキリスト教の修道僧が住み着き、130以上の洞窟住居を構えたのが始まりといわれる。多くの岩窟教会には中世のフレスコ画が残り、マテーラ周囲からは、旧石器時代の出土品も数多く発見されている。ただ、20世紀前半までは、町は南イタリアの貧しさの象徴のように見られ、ムッソリーニの治世になっても電気さえ通っていなかった。
衛生状態が悪く、乳児の死亡率も高かったため、イタリア政府は1950年代、サッシ地区の住民を郊外に新築した集合住宅へ強制的に移住させた。その数は約1万5000人に上るとされる。その後はしばらく無人の廃虚と化していたが、150以上の岩窟教会や約3000戸の洞窟住居などの文化的資産が見直され、93年に世界文化遺産に登録されると、観光客が徐々に増えだした。今ではホテル、レストラン、工芸品の販売店などが雨後の竹の子のようにでき、洞窟住居の5分の1ほどが再利用されている。ちなみに洞窟をリニューアルした“洞窟ホテル”の料金は、概ねシングルが1泊70ユーロ(約9400円)ぐらいから、ミニスイートが1泊160ユーロ(約2万1000円)ぐらいからだ。
4月にマテーラを訪れたロイター通信のマイケル・ロディー記者は「悠久の歴史を感じさせる町だ。たたずんでいると時が経つのを忘れてしまいそうで心が和む」と話している。
マテーラは映画のロケ地としても知る人ぞ知る存在だ。古代の風情が漂う街並みが、聖地エルサレムのかつての姿に似ているとされているためで、メル・ギブソン監督の米映画「パッション」(2004年)やピエル・パオロ・パゾリーニ監督の伊仏合作映画「奇跡の丘」(1964年)など、数多くのイエス・キリスト関連の映画がマテーラで撮られている。
また、マテーラは良質な小麦の産地としても有名で、おいしいパンは町一番の名産だ。無論、パスタの味も格別で、郷土料理は試してみる価値がある。
洞窟ホテルの1号店である「ホテル・サッシ」の支配人は「お迎えしたゲストには、めったにできない体験を通して目と心の保養を楽しんでいただきたい。まだまだこの町には観光潜在力があり、4年後の欧州文化首都を契機に一大ブームが起きることを期待している」と話している。
マテーラへは、ローマやナポリから長距離直行バスが1日2、3便出ている。また、国際空港があるアドリア海に面した都市、バーリからは鉄道で約1時間半で着ける。イタリアの一味違った風情を訪ねてみてはいかがか。(SANKEI EXPRESS)