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もう待てぬ ユーロ放逐目前 ギリシャ支援期限 財務相会合が延長拒否

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もう待てぬ ユーロ放逐目前 ギリシャ支援期限 財務相会合が延長拒否

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6月28日、現金自動預払機(ATM)に紙幣を補充するため、首都アテネの銀行前でダッシュする警備員。デフォルトの可能性が高まったギリシャではこの日、多くの預金者たちが口座の凍結を懸念してATMで現金を引き出し、各地のATMで紙幣が不足する事態となった=2015年(ロイター)  欧州連合(EU)の対ギリシャ金融支援問題で、ギリシャの国会は28日、EU側が支援条件に求める財政再建策に対する賛否を問う国民投票を7月5日に実施することを賛成多数で承認した。一方、ユーロ圏財務相会合は27日、ギリシャが投票実施のために求めた30日の支援期限の延長を拒否。ギリシャは今月末に国際通貨基金(IMF)への16億ユーロ(約2200億円)の債務返済を控えており、支援延長が拒否されたことで、デフォルト(債務不履行)に陥る可能性が一段と強まった。さらにユーロ圏離脱も現実となりかねない情勢で、世界経済および国際政治への影響も懸念されている。

 国民投票を承認

 ギリシャでは2010年以降、EU主導の厳しい緊縮策が続き、国民生活は疲弊している。ギリシャ国会(定数300)は27日午後から審議を行い、28日未明に採決を実施。AP通信によると、賛成が178票に上り、承認に必要な過半数を上回った。アレクシス・チプラス首相(40)の急進左派連合など連立与党のほか、野党の一部も支持に回った。チプラス氏は採決に先だち、「尊厳を放棄するよう求められたが、われわれは拒否せねばならない」と述べ、国民投票を強行する考えを示した上、EU側が支援条件に求める財政再建策を批判。有権者には再建策に反対するよう促した。

 ギリシャは7月20日にも、欧州中央銀行(ECB)への35億ユーロ(約4800億円)の債務返済期限が控えており、開き直りともいえるEU側への不服従を鮮明にしたことで、デフォルトの危機が迫っている。デフォルトに陥れば、ユーロ離脱は現実味を帯びる。

 ユーロ圏諸国とIMFは過去5年で総額2400億ユーロ(約33兆円)のギリシャ支援を行い、デフォルトを防いできたが、今回ばかりは堪忍袋の緒が切れ、ギリシャをなだめすかしてユーロ圏にとどめようとする熱意も大幅に減退しているからだ。

 「影響は限定的」

 3年前のギリシャ危機の折は、イタリアやスペインへの債務問題の波及が懸念されたが、この2国では目下、財政再建が進んでいる。また、現在、ギリシャ政府債務の約8割はEUやIMFなどの公的部門が保有しており、民間銀行が連鎖破綻する懸念もない。言葉とは裏腹に、ユーロ圏の指導者たちはギリシャが離脱しても影響は限定的で、広範に及ぶのは避けられると値踏みしている感がある。

 ただ、少なくとも一時的せよ、影響がでることは避けられない。ギリシャがデフォルトに陥る可能性が高まったことで、週明けの金融市場は波乱含みの展開が予想される。ユーロが大きく売られ円が買われやすくなり、東京株式市場では短期的に日経平均株価(225種)が2万円を割り込む局面もありそうだ。

 接近図る中露

 また、ギリシャがユーロ圏から離脱する事態になれば、経済よりもむしろ国際政治への影響が懸念されている。危機を横目に中国とロシアが経済的に窮したギリシャへの接近を図っているためだ。

 ロシアはすでに、ギリシャがユーロ圏のみならずEUをも離脱すれば、ギリシャからの食糧輸入禁止を解除することを示唆している。さらに中国も、国営海運会社コスコがアテネ首都圏の外港都市ピレウスのコンテナ港運権益を35年契約、約34億ユーロで取得するなど、ギリシャの空港や港の権益を買い進めている。欧州の入り口に当たるギリシャは地政学的に戦略上の要衝でもあるだけに不気味な動きといえる。

 ギリシャ問題は果たして「アリの一穴」となるのか、目が離せない情勢だ。(SANKEI EXPRESS

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