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【独エルマウサミット】G7 中国埋め立てに「強く反対」 首脳宣言採択し閉幕

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【独エルマウサミット】G7 中国埋め立てに「強く反対」 首脳宣言採択し閉幕

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G7首脳会議の2日目の討議に臨む各国首脳ら=2015年6月8日、ドイツ・エルマウ(ロイター)  ≪対露制裁は継続≫

 ドイツ南部エルマウ城で開かれていた主要国首脳会議(サミット、G7)は8日午後、2日間の成果をまとめた首脳宣言を採択して閉幕した。中国による南シナ海の岩礁埋め立てに関し「現状の変更を試みるいかなる一方的行動に強く反対する」と明記し、中国の野心的な海洋進出を牽制(けんせい)した。

 首脳宣言は、前文で自由や民主主義、法の支配、人権の尊重といった原則を確認。その上で「主権と領土の一体性の堅持に一致団結する」としている。

 中国の海洋進出をめぐっては、東シナ海、南シナ海での緊張状態に懸念を表明。国際法に基づく海洋秩序の維持や平和的紛争解決などの重要性を強調した。

 7日夜の討議で、安倍晋三首相(60)は「東シナ海や南シナ海で緊張を高める一方的な現状変更の試みは放置してはならない」と指摘した。

 首相「排出量26%減」

 首脳宣言はまた、ウクライナ情勢について、ロシアによるクリミア半島の併合を改めて非難し、ロシアを含む全ての当事者が今年2月の停戦合意を完全に履行するよう要請。ロシアが停戦合意を完全履行するまで対露制裁を継続する方針も確認した。

 安倍首相が討議で提起した北朝鮮の核・ミサイル開発の継続と拉致問題に関しては北朝鮮を強く非難した。

 8日午前の討議では、地球温暖化問題で、安倍首相は2030年度に温室効果ガスの排出量を13年度比で26%削減する温暖化対策目標を表明した。(エルマウ 宮下日出男、桑原雄尚/SANKEI EXPRESS

 ≪中国一蹴「他国に干渉する権利ない」≫

 サミットで各国首脳は、中国による南シナ海での岩礁埋め立てに「強く反対」することで一致した。これを受け、中国外務省の洪磊(こう・らい)報道官は8日の定例記者会見で、「中国の主権の範囲内のことであり、他国に干渉する権利はない」と一蹴した。

 中国は2013年ごろから、南シナ海における人工島の建設を本格的に推進し、最近は米国が反対する意思を鮮明にして介入し始めた。今年5月にジョン・ケリー米国務長官(71)が訪中し、習近平国家主席(61)や王毅外相(61)らと直接交渉したが、歩み寄りはみられなかった。

 G7が南シナ海における中国の行動にそろって反対姿勢を示したことは、習近平政権が近年、強引に進めてきた対外拡張路線そのものに「ノー」を突きつけたとも受け取れる。中国外交は1989年の天安門事件後に経済制裁を受けて以来、久しぶりに厳しい状況に直面したといえる。

 しかし、中国政府は強気の姿勢を崩していない。その理由について共産党関係者は「サミットで南シナ海問題を提起したのは中国と対立する日米だけで、ほかの国々は遠く離れた場所で起きたことへの関心はほとんどなく、反対はポーズにすぎない可能性が高いからだ」と説明する。

 欧州諸国は中国が主導するアジアインフラ投資銀行(AIIB)のメンバーに加わっており、中国への投資や貿易の面で強く結びついている。共産党指導部は南シナ海で埋め立てを継続しても、経済制裁などの対抗措置で国際社会の足並みはそろわないと判断しているようだ。(北京 矢板明夫/SANKEI EXPRESS

 ≪ロシア冷静、EU切り崩し狙う≫

 サミットで対ロシア制裁の延長が協議されたことについて、制裁の「無意味さ」を訴えてきたプーチン露政権は冷静に受け止めている。ロシアは今後も、ウクライナ問題などで米欧への強硬姿勢を維持しつつ、欧州連合(EU)内の親露的な国々との関係を深めることで、G7の影響力低下を図る思惑だ。

 ドミトリイ・ペスコフ大統領報道官は8日、G7の制裁論議に「新味はない」とする一方、「参加国の間には微妙な差異がある」と指摘。「ロシアとの対話が必要だという国もある」とし、G7は一枚岩でないとの認識を示した。

 EUは今夏、金融や資源分野を対象に発動した対露制裁について延長すべきかどうか判断する。決定は「全会一致」の原則でなされるため、ロシアはギリシャやイタリア、ハンガリーなど、制裁に懐疑的な国々の取り込みを狙っている。

 半面、プーチン政権は、制裁によって対ウクライナ政策を変える必要はない-という強気の姿勢を崩していない。ウクライナ東部の紛争についても親露派勢力の軍事支援や派兵を否定しており、和平合意を履行する当事者でないとの立場だ。(モスクワ 遠藤良介/SANKEI EXPRESS

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