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【独エルマウサミット】G7開幕 南シナ海情勢など協議 首相、対中包囲網へ欧州引き込み

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【独エルマウサミット】G7開幕 南シナ海情勢など協議 首相、対中包囲網へ欧州引き込み

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主要国首脳会議(サミット、G7)に先立ち、報道陣に向かって手を振る首脳たち。左から安倍晋三(しんぞう)首相(2人目)、バラク・オバマ米大統領(4人目)、議長を務めるアンゲラ・メルケル独首相(5人目)らの顔がみえる=2015年6月7日、ドイツ・エルマウ(AP)  主要国首脳会議(サミット、G7)が7日午後(日本時間7日夜)、ドイツ南部エルマウ城で2日間の日程で開幕した。安倍晋三首相(60)は、政府軍と親ロシア派の衝突が続くウクライナや、中国が強引な海洋進出を進める南シナ海の情勢などをめぐり、「力による現状変更は認めない」との立場を訴える方針だ。

 これに先立ち、安倍首相はフランスのフランソワ・オランド大統領(60)と会談し、ウクライナ情勢をめぐりロシアを含めた全ての当事者に今年2月の停戦合意を順守するよう求めることで一致。中国による南シナ海での岩礁埋め立てを懸念するとの認識も共有した。

 今回の主要国首脳会議は、ウクライナ南部クリミア半島の併合を受けてロシアを排除した昨年に続き、7カ国首脳によるサミットとなる。

 初日は世界経済や貿易に関する討議でスタート。環太平洋戦略的経済連携協定(TPP)など通商協定の交渉を促進させる。欧州連合(EU)との金融支援をめぐる交渉が膠着(こうちゃく)を続けるギリシャの財政問題や、中国主導のアジアインフラ投資銀行(AIIB)についても意見交換が行われるとみられる。

 7日の夕食会は外交・安全保障問題が扱われる。政府軍と親露派武装勢力の戦闘が再び激化しているウクライナ情勢をめぐり、G7首脳は2月の停戦合意の完全履行を要求。親露派を支援しているとみるロシアには介入の停止を迫り、ウクライナ支援の継続も約束する方向だ。

 南シナ海では中国が岩礁埋め立てによる人工島建設を進めており、G7首脳は埋め立てに「懸念」を表明した4月の外相会合の宣言を土台に議論を進める。欧州には中国との経済関係を配慮する傾向もあり、首脳会議としても強い態度を示せるかが注目される。

 8日にはイラクなど関係3カ国首脳を招き、テロ対策をめぐり意見交換。イラクやシリアで勢力拡大を続けるイスラム教スンニ派過激組織「イスラム国」への対処が課題となっており、外国人戦闘員の流入阻止や資金源遮断などを協議する。

 地球温暖化問題では、年末にパリで開かれる気候変動枠組み条約第21回締約国会議(COP21)の成功に向け、途上国支援なども議論。2日間の成果をまとめた首脳宣言を採択して閉幕する。(エルマウ 宮下日出男、桑原雄尚/SANKEI EXPRESS

 ≪首相、対中包囲網へ欧州引き込み≫

 7日にドイツ南部エルマウ城で開幕した主要国首脳会議(サミット、G7)で、ウクライナ情勢と並び注目を集めるのが中国による南シナ海での岩礁埋め立て問題だ。

 安倍晋三首相は、バラク・オバマ米大統領(53)とともに「国際法を無視した行動は許されない」と問題提起し、中国寄りの姿勢が目立つ欧州の首脳とも中国非難の「共通の価値観」構築を狙う。

 「結束を示したい」

 「日本はG7唯一のアジアの国だから、アジア情勢についてもしっかりと議論したい。その上で、G7の結束を示すサミットにしたいと思う」

 安倍首相は5日、今回の外遊出発に先立ち、羽田空港で記者団にこう語った。「アジア情勢」の一番の念頭にあるのが中国問題だ。

 中国は南シナ海のスプラトリー(中国名・南沙)諸島で大規模な埋め立てを進めており、中国人民解放軍幹部が埋め立ては軍事目的であることを公言するようにもなった。中国の野心的な試みに対する国際社会の懸念の高まりを受け、以前から尖閣諸島(沖縄県石垣市)周辺への中国の海洋進出に対し脅威を訴え続けてきた安倍首相への共感は広がりつつある。

 経済面と対応に違い

 ただ、地理的に中国とは距離のある欧州諸国は、中国主導のアジアインフラ投資銀行(AIIB)に相次いで参加表明するなど、巨大な人口を抱える中国との経済的な結び付きは強めたいのが本音でもある。中国を欧州の経済成長に欠かせない市場とみており、深刻な対立は避けたいのだ。

 安倍首相はサミットの討議で、中国に対する欧州の“ダブルスタンダード”を突き、対中非難を強める日米への同調を訴える構え。同行筋は「安倍首相は、欧州首脳に『南シナ海と経済で、中国への対応が違うのではないか』と指摘するつもりだ」と明かす。

 6日に北京で開かれた「日中財務対話」では経済・金融分野での協力推進で日中両国は一致したが、安全保障面での中国の脅威が増せば、日中の「戦略的互恵関係」は根底から覆されかねない。安倍首相は欧州首脳を味方に引き込み、中国に対抗したい考えだ。(エルマウ 桑原雄尚/SANKEI EXPRESS

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