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20役を一人で演じるからこそ面白い 舞台「マクベス」 佐々木蔵之介さんインタビュー

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20役を一人で演じるからこそ面白い 舞台「マクベス」 佐々木蔵之介さんインタビュー

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以前より痩せたように見える佐々木蔵之介「一人でやっているからかな」と苦笑い=2015年6月30日、東京都新宿区(栗橋隆悦撮影)  シェークスピアの四大悲劇の一つ「マクベス」で、俳優の佐々木蔵之介(ささき ・くらのすけ、47)が登場人物20人あまりを一人で演じる。スコットランド・ナショナル・シアター(NTS)のオリジナル版を日本で初演。精神病院を舞台に、一人の患者に登場人物が乗り移ったように出来事が語られていく。佐々木は「これまでにない、面白くて格好いいマクベスを」と意気込む。

 NTS版を再現

 「マクベス」は将軍マクベスが夫人と共謀、主君を暗殺して王位に就くが、狂気に陥って政治が混乱、復讐(ふくしゅう)されて倒れる。実在のスコットランド王をモデルに描かれており、NTSが翻案しベテラン俳優のアラン・カミングを配して2012年に初演、その後、米ブロードウェーでも上演された。今回は松岡和子の訳をもとにNTS版を再現、演出には同じくアンドリュー・ゴールドバーグを招く。

 NTS版の米国公演は、その斬新さから多くの若い世代が集まった。病院で隔離された患者が一人で複数の人物を演じ分け、掛け合いから浮かび上がる人間の心の闇や狂気、争いといった心理を、観客が実感できる面白さがある。「登場人物には、人の心にある全ての気持ちが内在している。僕が一人で演じるからこそ、見る人は自分のことのように感じられる」

 佐々木はこれまで一人芝居を「誰も助けてくれないから」と断り続けてきた。今回はNTSが全面協力する舞台で、「めったにない環境に身を置いてみたい」と出演を決めた。過去にマクベスを演じた経験はあるが、ゴールドバーグらNTS版のスタッフには「よくこんなきつい仕事を引き受けた」と驚かれたという。

 当初は孤独で不安だったが、稽古に入って楽になった。「演出家が見てくれるし音響、セットなど全てが力になる」。翻訳の松岡氏は稽古を見て「こんなに一緒にドキドキするマクベスは初めて」と感想を漏らしたという。ゴールドバーグは「50回見た人も、初めて見る人も面白いと思うマクベスにしたい」と話す。

 「長ぜりふ」楽しみながら

 演じるのが最も楽しみなのはマクベス夫人。「欲深く強い女性で自然と声が低くなる。かえって女性らしく見えるらしい」と笑う。シェークスピア独特の大仰な「長ぜりふ」は「『ちょっと笑える』という方もいて、自分もおかしみながらやってます」。劇作家の谷賢一が演出補を務め、英語の韻を日本語にした際にできるリズムなどをアドバイス。「心強い」と話す。

 5月にはマクベスゆかりのスコットランドを初めて訪ねた。最も印象的だったのが、マクベスの城があったとされる「ダンシネインの丘」で、物語のクライマックスの舞台でもある。

 「天候がころころ変わって、強い風が吹き、雨が降って寒かった。自然がすごく近くにあり、戦わないとならない。シェークスピアが書いた、大地に向かって叫ぶようなせりふが肌で感じられた」。一連の様子はフォトブック「動く森―スコットランド『マクベス』紀行」(扶桑社、税別2500円)に詳しい。

 ストレス解消は東欧への旅。「人があまり行かない場所に行きたい」と昨年はウクライナを訪ね、ルーマニアにも行きたいと願う。「しばらく無理かなあ」。(文:藤沢志穂子/撮影:栗橋隆悦/SANKEI EXPRESS

 【ガイド】

 7月12日から8月2日まで、東京・パルコ劇場。問い合わせは(電)03・3477・5858。地方公演あり。

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