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佐々木蔵之介、感じたままに フォトブック『動く森-スコットランド「マクベス」紀行』から

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佐々木蔵之介、感じたままに フォトブック『動く森-スコットランド「マクベス」紀行』から

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 俳優、佐々木蔵之介が、7月12日から登場人物20人すべてを一人で演じる大胆な舞台「マクベス」(東京・渋谷のパルコ劇場ほか)に挑戦する。その公演に先立って、フォトブック『動く森-スコットランド「マクベス」紀行』(扶桑社)が7月11日、発売される。

 シェークスピアの四大悲劇の一つである「マクベス」は、11世紀に実在したスコットランドの武将を題材にした戯曲。佐々木演じる今回の「マクベス」では、舞台を現代の精神障害者病院に移し、病室に隔離された患者が「マクベス」に登場する人物たちのセリフを独白するという斬新な作品となっている。

 芝居の稽古が始まる直前の5月中旬、佐々木は原作の舞台であるスコットランドを訪れた。

 造り酒屋の息子として生まれたことから自他ともに認める酒好きの佐々木。

 「ウイスキー発祥の地だというのに、行ったことがありませんでした。芝居とは関係なく旅したいなと考えていたところ、『マクベス』を演じるという話になり、これはもう行くしかない、と。それを周りに言っていたら、どうせ行くなら何か記録を残そう、形にしようという話になり、本として世に出すことになったんです」

 スコットランドでは、グラームズ城やコーダー城、マクダフ城跡、スクーン宮殿、ダンシネインの丘、バーナムの森など、「マクベス」に登場する主要スポットを回り、それぞれの地で佐々木が感じたままの表情とその思いを収めている。

 「シェークスピアの描いた星や月、風、雨、寒さなどを実際に見たり感じたりして、その世界観にちょっとだけ近づいたような気はします」

 ≪一人芝居の重責…王が抱える不安と重なる≫

 京都市の造り酒屋の次男として生まれ、神戸大学農学部でバイオテクノロジーや酒米の研究をしたのち、広告代理店勤務を経て俳優に-という異色の経歴でも知られる佐々木蔵之介。

 そうしたバックグラウンドの裏返しかもしれないが、俳優業に対するこだわり、プロ意識、そして責任感は非常に強い。

 12日からの舞台「マクベス」では、佐々木は一人で20役をこなさなければならない。

 「一人芝居は初めてなので、肉体的にも精神的にも疲労の度合いとか想像がつかないので、不安しかありません。今でも『僕、やるって言ったっけ?』とマネジャーに聞くくらいで(笑)」

 今回のフォトブックは、撮影スポットこそ決まっていたものの、表情やポーズなどの決め事は一切なく、その場の雰囲気で作っていった。つまり、公演より一足早く、佐々木は一人芝居の舞台にほうり込まれたようなものだ。

 失敗の許されない一人芝居の重責に押し潰されそうになりながら撮影に臨んだこともあってか、本書では明るい表情は少ない。だが、それが王殺しという大罪を犯して自らが王となったマクベスが抱える不安や恐怖といった心情とも重なっていく。

 作り笑顔などまったく収められていないという意味では、一般的な写真集とは一線を画した、一種のドキュメンタリー的な色彩が強い本に仕上がっている。

 そんな中、佐々木が唯一リラックスした表情を見せたのは、ウイスキー蒸留所を訪れたとき。

 「蒸留所の中は、やっぱり実家の造りと似ていて親近感を感じましたね。気候や水、原材料に対する考えも日本酒造りと共通しているところも多くて、楽しい時間を過ごせました。『将来はウイスキーを造りたい』というオーナーの4歳の息子さんとも出会いましたが、『僕もそうだったけど、なぜか俳優になっちゃったよ』と言わずにはいられなかったですけど(笑)」

 この芝居が終わったら、また旅に出たいという佐々木。

 「でも、例えば次に『ハムレット』を一人でやれって言われても、絶対にやりませんよ、断言しますけど。『イギリスを好きなだけ旅させてあげる』と言われても、絶対やらへんから(笑)」(ライター 中野克哉/SANKEI EXPRESS

 ≪『動く森-スコットランド「マクベス」紀行』 佐々木蔵之介フォトブック7月11日発売≫

 この夏、「マクベス」の登場人物すべてを一人で演じる佐々木蔵之介。この作品に全存在をかける彼が「マクベス」原作の舞台、スコットランドを訪ね、過去、現在、そして未来へと続く「マクベス」の足跡をたどっていく。朽ち果てたマクダフ城跡、魔女と出会った荒野、ダンシネインの丘、そしてバーナムの森。戯曲の舞台となった古城や森を逍遥(しょうよう)する佐々木蔵之介の心中に去来したものとは-。実在する『マクベス』の舞台を収めた美しい写真と散文で構成するフォトブック。巻末には、市川猿之助との「演劇談義」も収録。発売・扶桑社、2500円(税抜き)。

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