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日本発のストレートプレーに 舞台「趣味の部屋」 中井貴一さんインタビュー
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「自分が見たい芝居を、一緒に面白がってくれる人たちと作りたい」と話す、俳優の中井貴一さん=2015年2月26日、東京都新宿区(寺河内美奈撮影) 中井貴一(53)が自ら企画して好評を得た主演舞台「趣味の部屋」の、2年ぶりの再演に挑戦している。個性的な趣味を持つ男たちが織りなすサスペンス・コメディー。「前回より格段にブラッシュアップした。演劇を見たことのない人にぜひ見てほしい」と話す中井は今後、作品が日本発のストレートプレーとして海外でも親しまれるよう、育つことを期待している。
「趣味の部屋」は内科医の天野(中井)や医学部教授の金田(白井晃)ら数人の男たちが、趣味のためにひそかに共同で借りている部屋が舞台。ロボットアニメ「機動戦士ガンダム」のフィギュアや変わった食材を使った料理、ジグソーパズルなど多彩な趣味を楽しむ仲間うちに、婦人警官の宮地(原幹恵)が行方不明者の聞き込みに来たことで騒動が起きる。共演はほか川平慈英(かびら・じえい)、戸次(とつぎ)重幸。脚本の古沢良太、演出の行定勲(ゆきさだ・いさお)とも、2013年3月の初演時と同じ顔ぶれがそろった。
制作は中井が「自分が見たい芝居を、一緒に面白がってくれる人たちと作りたい」と、旧知の古沢に「日本発の良質のミステリーを作りたい」と持ちかけたことがきっかけ。古沢はドラマ「リーガルハイ」など伏線を張る作品が得意で展開は「どんでん返し」続き。ガンダムほか、関心のない人には全く価値のない趣味を必死で守ろうとする男たちの姿は笑いも誘い、意外なラストまで一気に駆け抜ける。
上演時間は休憩なしで1時間50分と、前回より15分ほど短くなった。再演にあたり、無駄な動きをそぎ落とした結果という。中井は「カーテンコールを入れて2時間という長さにこだわった」と話す。
「舞台の多くは休憩を入れて3時間半前後と、見るのは半日か1日がかり。2時間なら会社帰りに気軽に『行ってみようか』と思える。潜在的に芝居の好きな人たちに『演劇って面白い』と思えるきっかけを作り、演劇ファンの裾野を広げたい」
「趣味の部屋」は最近、韓国で翻訳されて上演、好評を博した。中井は作品が海外でも親しまれることを願う。「シェークスピアやアガサ・クリスティの上演が日本でも違和感がないのは、本質的な何かがあるから。同じような『メード・イン・ジャパン』のストレートプレーが発信できれば世界でイニシアチブを取れる。日本の今後のエンターテインメントに必要と思う」
50代半ばにさしかかり、今後は「失敗を恐れず守らない人生で行きたい」と話す。俳優の立場から作品を企画することも増えそうで「3割理論」を念頭に置く。「野球は3割打てば名バッター。お客さまの3割が2万円払ってもいいと思わせる作品を作りたい」
自己満足に陥らないようにも心がける。「『たかが演劇』でもお客さまの心を打ち、人生を変える何かがあるかもしれない。その結果に僕らはプライドを持つべきで、自分のプライドを優先してはいけない。『されど演劇』ではない」
実はヒット作の後は「失敗しそうなものを選んできた」と打ち明ける。「当たらなければいったん自分を落としてまた努力する。その繰り返しが継続につながる」。ただ俳優としての限界が見えたら潔く引退するつもり。「でも趣味は特にないんですよ。演劇見たりナレーションしたりして過ごすのかな」と笑った。(文:藤沢志穂子/撮影:寺河内美奈/SANKEI EXPRESS)
3月29日まで東京・渋谷のパルコ劇場。問い合わせ(電)03・3477・5858。ほか大阪、福岡、札幌、仙台、広島など地方公演あり。