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恋活、猫島…被災地ツアー知恵比べ 宮城、岩手など 風化防止へ地元アピール 

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恋活、猫島…被災地ツアー知恵比べ 宮城、岩手など 風化防止へ地元アピール 

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恋活ツアーで、イチゴ狩りを楽しむ男女=2015年5月、宮城県亘理郡山元町(共同)  東日本大震災の被災地で、男女の出会いの場を提供する恋活や、猫の多い島巡り、地元住民が作った家庭料理のもてなしなど、多彩な企画を盛り込んだツアーが組まれている。震災から4年4カ月がたち、風化が懸念されるなか、観光客の関心を少しでも引き、被災地に足を運んでもらおうとしている。

 イチゴ狩りで談笑

 甘酸っぱい香りが漂うビニールハウスで、出会ったばかりの男女が赤いイチゴをほおばり談笑していた。5月末、宮城県山元町で開催された「イチゴ狩り恋活バスツアー」。町内を巡りながら恋人づくりのきっかけにと、若者有志が企画し、町外から23人が訪れた。

 山元町は、津波で全面積の4割近くが浸水、600人以上が犠牲になった。「当時のことを忘れてほしくない」と、ツアーの企画者の一人、復興支援団体「スタンドアップ亘理」(同県亘理町)の加藤正純代表(33)は力を込める。イチゴ狩りの前には、バスの中で地元の語り部が当時の状況を振り返り、被害に遭った町立中浜小を訪れた。

 仙台市の女性会社員(38)は「来る機会がなかった被災地で、震災についてあらためて考えることができた」と話す。加藤さんは「結婚するカップルが生まれ、思い出の場所として何度も来てほしい」と期待する。

 仙台市の旅行会社「たびむすび」は、被災地ツアーは徐々に減少している一方、観光客を呼び込むため、企画を工夫する会社やNPO法人も多いと指摘する。この夏、たびむすびは「猫の島」として有名な宮城県石巻市の田代島へのツアーを実施。猫をきっかけに被害にも目を向けてほしいといい、稲葉雅子社長は「刻々と変化する被災地を、一人でも多く見続けて」と願う。

 住民と温かな出会い

 「なますにホタテが入っている人は当たり。入っていない人は、また食べに来て」。7月上旬、岩手県陸前高田市を訪れた約20人に向かって、主婦の菊池清子さん(66)がちゃめっ気たっぷりに話し掛けた。テーブルの上には、菊池さんら6人の「お母さん」が地元の食材をふんだんに使って用意した煮物やお菓子。大阪府能勢町の自営業、中植重治さん(51)は「被災地での温かな出会いがうれしい。次は何を作ってくれるんだろうって楽しみになります」と目を細めた。

 企画したのは、市内でツアーを手掛ける「まるごとりくぜんたかた協議会」。地元住民との交流をテーマに、昨年7月から漁業や農業の体験を団体旅行客に提案する。協議会の伊藤雅人さん(33)は「来る人、住む人を増やし、高齢化が深刻な市全体の活性化にもつなげたい」と語った。

 ≪宿泊者数、震災前に戻らず≫

 東日本大震災で大きな被害を受けた岩手、宮城、福島3県は現在も観光で苦戦している。鉄道や宿泊施設などインフラ面が復旧途上なのに加え、東京電力福島第1原発事故の風評被害が依然として影を落としている。

 観光庁の統計によると、観光客の宿泊は3県とも震災前の水準に戻っていない。観光客向けの宿泊施設(従業員10人以上)の延べ宿泊者数は、2010年が3県で計約1180万人だったのに対し、14年は約1052万。震災前の89%にとどまっている。この間、全国が8%伸ばしているのと比べると対照的だ。

 14年に宮城県の観光地やイベントに訪れた人は、10年と比べ93.4%まで回復。しかし沿岸部の石巻圏域で63.8%、気仙沼圏域で55.3%と津波被害が大きかった地域で低迷が目立つ。そのため、県は本年度、民間の宿泊施設と観光集客施設を新設する際の整備費を3分の2補助することを決めた。

 県観光課の高橋剛彦課長は「JR仙石線が5月に全線再開するなど、交通網が整いつつある。宿泊施設も後押しし、観光客をさらに誘致したい」と語った。

 一方、福島県観光交流課の担当者は「風評被害の払拭が一番の課題」と話す。教育旅行に力を入れており、各地の教育委員会などに「放射線量は安全なレベル」と呼び掛け、東北の文化や自然とともに、防災も学べることをアピールしている。(SANKEI EXPRESS

 ■復興ツーリズム 被災地を巡り、被害の状況や防災について学ぶ研修や旅行。東日本大震災から4年4カ月が経過した現在は、復旧・復興に向けて進められる工事現場などが視察コースに組まれており、学校や企業など団体で訪れるケースも多い。阪神大震災などほかの災害や、広島・長崎の原爆被害と同じように、津波や東京電力福島第1原発事故を体験した地元の人たちが、当時の様子を伝える「語り部」活動も盛んに行われている。

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