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社会
復興費、来年度から一部地元負担 政府発表 被災地「詳細きちんと説明を」
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復興工事が進む被災地、岩手県陸前高田市の沿岸部=2015年3月9日(鴨川一也撮影) 復興庁は12日、東日本大震災の集中復興期間後の2016~20年度に実施する復興事業の基本方針を発表した。高台移転など基幹事業は全額国費負担を維持する一方、地域振興などの事業は被災地に負担を求める。「復興は軌道に乗りつつある」として財政規律の維持を図る狙いで、政府は6月末にも財源を含めた復興予算の枠組みを決定する。ただ政府が想定する16年度以降の復興費用は被災各県が求める額を大きく下回っており、負担導入を含め地元との協議は難航も予想される。
竹下亘(わたる)復興相(68)は12日の記者会見で、財源に関し「消費税の再引き上げがある中、さらに増税で国民に負担を上乗せするのは、不可能に近いくらい厳しい」と強調。「自治体に自立の意志を持ってほしい」と負担への理解を求めた。16年度からの5年間を「復興・創生期間」と位置付け、地方創生のモデルとなる復興を目指すとした。
政府関係者によると、16年度から5年間の復興費用は5兆8000億円程度と算定。このうち2兆円程度の事業について数%台の地元負担を求める考えで、負担額は数百億円規模とされる。一方、被災自治体は、5年間の復興事業に8兆円以上が必要と試算している。
基本方針は、被災地で実施する事業を(1)全額国負担を継続する基幹的な事業(2)まちづくり、道路整備など全国共通の課題として地元負担を求めるが復興との関連が深く、他地域より負担率を軽減する事業(3)震災と関連が薄く復興事業から除外、他地域と同水準の負担を求める事業-に分類した。
(1)の基幹的な事業は、高台移転など復興交付金の基幹事業や、東京電力福島第1原発事故からの復旧・復興、被災者の生活再建などとした。福島県の12市町村の復興関連事業も引き続き、全額を国費で手当てする。
(2)は三陸沿岸道路の整備や、復興交付金の効果促進事業として実施する観光資源の発掘などを想定。(3)は内陸部の道路整備などで公共事業の場合、全体の3分の1~4分の1程度の負担になる。
被災地以外での使用が批判を受けた全国防災事業などは廃止する。
≪被災地「詳細きちんと説明を」≫
東日本大震災復興事業について、政府が従来の全額国費負担の方針を転換し、被災自治体にも一部負担を求める方針が12日、示された。復興は「新たなステージ」に移ったとして被災地の自立を促す構えだが、負担割合など詳細は明かされぬまま。被災地からは「きちんと説明を」と懸念する声が上がった。
海沿いに広がる約45ヘクタールの防災集団移転跡地の活用法が固まっていない岩手県大槌町。人口減で税収が落ち込む中、道路や下水道などの整備に国の支援は欠かせない。担当者は「今後は事業の内容次第で地元負担が生じるのでは」と不安を訴えた。
津波被害を受けた青森県八戸市から仙台市まで沿岸359キロを結ぶ「三陸沿岸道路」も一部負担の対象となるが、国土交通省によると3月1日時点で完成は4割にとどまる。宮城県の担当者は「事業規模や工事期間が計画通りに進められない恐れもある」と話した。
復興庁は、被災地の有効求人倍率が1倍超となり「全国水準を上回って改善している」と指摘。震災後の失職、離職者向けの緊急雇用創出事業を「(需要と供給の)ミスマッチ対策に転換する必要性がある」としたが、被災者の孤立死防止などに取り組む宮城県南三陸町の社会福祉協議会は「雇用創出事業で多くの職員を採用してきた。事業が終われば、同じ規模でやっていけるか不安」と頭を抱えた。
いまだ11万人以上が県内外に避難している福島県。東京電力福島第1原発事故の復旧・復興事業については、2016年度以降も全額を国費で負担するとされた。
楢葉町からいわき市の仮設住宅へ夫婦で避難している小薬金重さん(60)は「町が完全に復興するまで、予算を充当してくれるならありがたい」と話した。(SANKEI EXPRESS)