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復興人材育成へ 福島・ふたば未来学園高が開校 「被災ふるさとで貢献」 1期生誓う
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小雪が舞う中、初登校する県立ふたば未来学園高校の新入生ら=2015年4月8日午前、福島県双葉郡広野町(共同) 東京電力福島第1原発の20~30キロに位置する福島県広野町で8日、東日本大震災と原発事故からの復興を支える人材を育成する県立ふたば未来学園高校が開校し、1期生の入学式が開かれた。中高一貫校のうち、高校が先行してオープン。新入生152人のうち約100人は広野町などがある双葉郡の出身で、原発事故による避難を経験している。
入学式で真新しい制服に身を包んだ新入生が入場すると、会場からは大きな拍手が湧いた。
丹野純一校長は「皆さん一人一人が、この学校の歴史と伝統を築き上げる開拓者です。それぞれの思い描く未来を実現していこう」と、生徒らを激励。新入生代表の日下雄太君が「福島の未来を支え、社会に貢献できる人材を目指す。10年後、100年後も誇れる伝統と校風を築き上げたい」と誓いの言葉を述べた。
これに先立ち開かれた開校式では、内堀雅雄福島県知事が「未来へ歩み新たな歴史をつくり上げる姿は、復興のシンボルとして大きな力になる」とあいさつ。校歌と校章も披露された。
ふたば未来学園では大学進学やスポーツに特化した科目の他、商工業や福祉などの専門資格を取れる科目も設置。小泉進次郎復興政務官や宇宙飛行士の山崎直子さんら、各界の著名人による出前授業も受けられ、大学と連携した研究・実験や海外研修もある。
当面は既存の中学校校舎を使用する。県教育委員会は2019年4月までの新校舎完成と、中学校開校を目指している。
双葉郡の県立高5校は現在、避難先のサテライト校で授業を続けているが生徒数が減少。ふたば未来学園高校の開校を受け、17年度から休校となる。
≪「被災ふるさとで貢献」 1期生誓う≫
春の町を彩る桜並木、紅葉で燃える山々、家族で遊びに出かけた川-。原発事故から4年にわたる避難生活で、ふるさとの素晴らしさに初めて気付いた。「少しでも復興の手伝いをしたい」。福島県富岡町の佐藤勇樹君(15)は、ふたば未来学園高の1期生として新たな一歩を踏み出した。
富岡町は全住民が避難。佐藤君一家も親戚を頼り事故の約2週間後に茨城県鹿嶋市に避難した。鹿嶋市の小学校に転入したが、児童が少なく「みんな仲良くて輪に入っていくのが大変だった」。一緒に登校する子たちと話すようになり、徐々になじめるように。そのまま市内の中学に進み、野球部で汗を流した。「ここでないと出会えなかった友達がたくさんできた」と振り返る。
昨年夏。事故後、初めて富岡町へ一時帰宅した。美しかった田んぼは荒れ放題で、自宅にはかびが生えネズミが走り回っていた。「想像以上のひどさだった」。除染で出た廃棄物を入れた黒い袋も初めて目にした。「テレビでは見ていたけど、本当にショック。事実と認めたくなくてつらかった」
美しい自然に、地域のつながり。かつては当たり前だったが「離れたからこそ、良さに気づくことができた」と話す。
入学に伴い寮に入る。初めて家族と離れて暮らす不安や、鹿嶋市の友人と別れる寂しさもある。でも「もっと地元のことを知りたいし、双葉郡にいないとできない復興があるはず」。
将来は、地域の人々が交流できるカフェを地元に開きたい。高校では商業を学び、甲子園を目指し野球も続けるつもりだ。
≪全壊校舎再建 岩手・高田高で始業式≫
東日本大震災の津波で全壊した校舎が先月、高台に再建されたばかりの岩手県立高田高(陸前高田市)で8日、始業式が開かれた。4年近く市外に移って授業をしており、生徒は心待ちにしてきた新校舎に笑顔で登校、地元での学校生活のスタートを切った。
式では横田昭彦校長が2、3年生約320人に「これまでよく辛抱してくれた。新校舎での生活がかなわなかった先輩の思いを受け止め前進していこう」と呼び掛けた。生徒は「広いね」「きれい」と話しながら校内を散策。生徒会長の3年、磯谷茉佑さん(17)は「新しい高田高校を築いていけると思うと、うれしさでいっぱい。支援に感謝の気持ちを持って生活していきたい」とほほ笑んだ。9日には入学式があり、新入生約160人を迎える。
旧校舎は震災時、3階建ての屋上近くまで津波が押し寄せ全壊。校内にいた生徒は高台へ避難したが、部活動などで校外にいた生徒22人と教諭1人が死亡、行方不明になった。約2カ月後の2011年5月から先月まで、隣の大船渡市の空き校舎を使い、生徒はスクールバスで通っていた。
新校舎は4階建て。資材価格の高騰などから建設工事の入札は2度不調になり、完成は新年度直前となった。(SANKEI EXPRESS)