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【東芝不正会計】歴代3社長が辞任 「心からおわび」

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【東芝不正会計】歴代3社長が辞任 「心からおわび」

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記者会見で頭を下げる田中久雄社長(右)と室町正志(まさし)会長=2015年7月21日午後、東京都港区の東芝本社(宮崎瑞穂撮影)  ≪後任は室町会長兼任 田中氏、不正指示を否定≫

 東芝の田中久雄社長(64)は21日記者会見し、利益水増し問題で経営トップの関与を指摘した第三者委員会(委員長・上田広一元東京高検検事長)の報告書を踏まえて21日付で辞任し、室町正志会長(65)が暫定的に22日から社長を兼任すると発表した。問題を実質的に主導したとされる前社長の佐々木則夫副会長(66)と、前々社長の西田厚聡(あつとし)相談役(71)も21日付で辞任。東芝を揺るがす会計問題は歴代社長がそろって引責辞任する異例の事態に発展した。

 佐々木氏は、21日付で経団連副会長も辞任。産業競争力会議の民間議員や政府税制調査会の特別委員などすべての公職を辞任する意向を甘利明(あまり・あきら)経済再生担当相(65)に伝えた。

 田中氏は会見で「株主をはじめ、全ての皆さまに心よりおわびする」と謝罪した。ただ、自身が利益水増しを指示したかについては「ございません」と否定。会計問題の背景に西田氏と佐々木氏の対立による「社内抗争」があったとの見方や、田中氏が予算達成などのプレッシャーを受けたとの指摘についても「そういう認識はない」と述べた。

 東芝は、経営の立て直しへ社外取締役4人と社外専門家だけで構成する「経営刷新委員会」を設置。また、不適切な会計処理の再発防止に向け社外取締役の伊丹敬之(いたみ・ひろゆき)氏(70)=東京理科大学イノベーション研究科教授=が監査委員会委員長に就任する。

 取締役会を取り仕切る議長も社外から任用するなどして企業統治(コーポレートガバナンス)を強化する方針だが、会見に同席した室町氏は人選は「全く白紙」と述べるにとどめた。

 第三者委の報告書は、東芝の過大計上額(税引き前損益ベース)が2008年度から14年4~12月期まで1518億円に上ると認定。東芝の自主チェック分を加えると計1562億円に上った。

 歴代3社長が月例の報告会で「チャレンジ」と称して「利益至上主義」による収益改善目標を達成するよう部下に圧力をかけ、「上司に逆らうことができないという企業風土」があったと指摘した。

 ≪新経営陣の人選は難航必至≫

 東芝は、利益水増し問題で取締役16人の半数に当たる8人が辞任するという異例の事態に陥った。暫定的に社長を兼務する室町正志会長は21日、社外取締役らからなる「経営刷新委員会」を設置する方針を示し、企業統治(コーポレートガバナンス)の強化や新経営陣の人選に乗り出すが主要役員は軒並み辞任。再生の道のりは前途多難だ。

 経営陣が大幅に入れ替わることになり、最大の焦点は再生を本格的に担う社長の人事だ。本来なら候補として名前が挙がる4人の副社長全員が辞任しており、人選は難航が予想される。

 21日の会見では刷新委が、過半数を社外から招くことを含めて取締役会の枠組みについても検討する方針が示された。会見で室町会長は、「委員会設置会社として企業統治の仕組みはつくったが、内部統制が不十分だった」と形骸化を認めた。刷新委は新体制のあり方全般に関わることが明確になり、再生の鍵を握る存在となりそうだ。

 資産売却の方針も発表。すでに主要な取引行には2000億円規模で実施すると伝えている。株式や不動産などを売却して財務基盤を強化し、資金繰りに万全を期す考えだ。

 21日の東京株式市場で東芝株は大幅高となった。一時は25円高の401円80銭と、今月8日以来の400円台を回復。終値も23円10銭高の399円90銭と、6%上昇した。第三者委員会の報告書が提出され、新たなマイナス材料が出てくる可能性が低くなり、再生期待が高まったとみられる。

 だが、取引終了後には米格付け会社スタンダード・アンド・プアーズ(S&P)が長期会社格付け「トリプルB」の見通しを格下げ方向で検討すると発表した。過年度決算を大幅に下方修正するという発表を受けての措置で、信用力低下の影響が懸念される。

 田中社長が「20万人の従業員が一丸となり、日々の活動を通して全力で取り組む姿をご理解いただくしかない」と述べたように信頼回復に“特効薬”はない。

 実行力のある新体制を早期に固めて、山積する事業課題に立ち向かっていけるか、東芝は重要な局面を迎えた。(高橋寛次/SANKEI EXPRESS

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