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【清水直行のベースボールライフ in NZ】日本との懸け橋 うれしい2人の来客
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オークランドのグラウンドで子供たちを指導する元ヤクルトの宮本慎也さん(写真中央)=2015年1月下旬、ニュージーランド(提供写真) ニュージーランドでの活動が本格的に始まった。まずは1月23日から4日間、「Oceania Baseball Championship」と題した、U18(18歳以下)ワールドカップ(W杯)のオセアニア地区予選に出場する代表チームに帯同した。
会場はオークランド。市街地の中心部から車で約20分ほどの場所にあるフィールドは、この大会のために整備された。土の硬さや芝の長さは、これまで現地で見たフィールドの中で最も野球に適したものになっていた。
以前にもコラムで書いたが、ニュージーランドでは、公園やグラウンドで子供から大人まで多くの人たちがラグビーやクリケット、サッカーなどに興じている。しかし、野球専用球場はない。夏場にグラウンドに作ったマウンドは、ラグビーなどが盛んになる冬を前に平らに戻さなければならない。だからこそ、野球用に整備されたグラウンドに感動した。
今回の大会には、オーストラリア、グアム、ニュージーランドの3チームが参加した。今夏に日本で行われる決勝に進めるのは1チーム。ニュージーランドはグアムには3戦全勝したものの、豪州には3戦全敗だった。3試合で31失点。捕手のブロッキングや犠飛への対応などディフェンス面での課題が浮き彫りになった。
投手も走者への牽制(けんせい)が甘く、盗塁で次の塁を与えることに、あまりにも抵抗がなさすぎた。「野球は守りから」と言われるが、守備の重要性を再認識させられた。
実は、この大会に日本野球機構(NPB)エンタープライズの加藤謙次郎さんが視察に訪れていた。
加藤さんはヤクルト球団から出向していて、野球の国際的な普及にNPBがどう貢献できるかを考え、さまざまな企画を立案している。渡航前に連絡をもらい、「NPBのホームページで、現地での活動をコラムで紹介してほしい」とオファーをいただいた。
快諾すると同時に、ニュージーランドの野球事情を直接、見てほしいという話をしたところ、3泊5日の日程で現地へ足を運んでくれたのだ。U18の試合をはじめ、私が指導している野球クリニックも見学してくれた。
さらに、NPBからのプレゼントとして2ダースの新球を届けてくれた。さっそくオークランドのクラブチームで分け合うと、現地の子供たちは、1球ずつアルミで包まれている高品質なNPBの統一球を目にして大興奮だった。
1月下旬は、うれしい来客がもう一人。ヤクルトで活躍し、アテネ、北京と五輪2大会で主将を務めた宮本慎也さんだ。
現地では、私の活動を支援してくれる「野球サポーターズクラブ」という日本人有志の会が発足しており、彼らの招待という形で慎也さんに来てもらった。
1月25日にはU18の大会が行われた球場を試合前に使って、慎也さんによる野球教室を開催できた。日本人だけでなく、現地の子供たち、さらに父母も合わせて総勢100人ほどが参加。キャッチボールや内野守備での捕球動作といった基本や、「自分が使う道具を大切に」といった練習に取り組む姿勢を説く様子を見て、守備の名手と呼ばれた慎也さんらしい指導だと感心させられた。
まだまだ技術的にも未熟な子供たちだが、慎也さんは「想像していたよりも上手やし能力が高そう」と、ありがたい言葉を頂戴できた。
滞在期間中には、私やサポーターズクラブの人たちとゴルフを楽しむなど、ニュージーランドの魅力を肌で感じてもらうこともできた。
ニュージーランドへ渡る決意をしたとき、野球技術の向上だけでなく、「野球大国」である日本との交流の懸け橋になりたいと誓いを立てた。NPBの協力や慎也さんのおかげで、着実に一歩を踏み出せている。(ニュージーランド野球連盟 清水直行/SANKEI EXPRESS)