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【清水直行のベースボールライフ in NZ】「野球通じて日本とつながり」広がる支援の輪

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【清水直行のベースボールライフ in NZ】「野球通じて日本とつながり」広がる支援の輪

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時間があるときは、オークランド市内を散策することも=2005年3月21日、ニュージーランド(清水直行さん提供)  異国の地には、日本とは全く異なる文化や慣習が存在する。

 「清水さん、心の中で思っていることは口に出してくださいね。違うならはっきりと、『NO』と意思表示しなければいけません。何も言わなければ、『YES』と判断されることもありますよ」

 ニュージーランド野球連盟のゼネラルマネジャー(GM)補佐と代表統括コーチに就任することが決まり、契約書を結ぶときに通訳をしてくれたオークランド在住の中村敬志さん(44)のアドバイスは、とても印象的だった。

 プロ野球選手として毎年、オフには年俸交渉をしてきた。しかし、球団とのやりとりは振り返ってみれば、あえて曖昧にする部分も多かった。お互いの立場を尊重しつつ、言葉に出さなくても理解しあえることがあったからだ。いうなれば、日本的な慣習だったのかもしれない。

 海外では暗黙の了解で、相手に“善意の解釈”を求めるのはリスクがある。ニュージーランドで初めて海外生活を送ることになる私に、中村さんはそのことを教えてくれた。

 ボランティアで通訳

 2度目の渡航となった今年3月下旬。野球連盟の理事が代表チームのスポンサー営業のため、銀行などを回る際、私も同行することになった。そのとき、私の通訳をボランティアで買って出てくれたのが、現地で会社役員をしている中村さんだった。

 広島出身で、2006年に家族4人で移住。14歳の長男は現地で野球をしており、U15代表チームのメンバーに入っている。私のサポートのため、チームの活動にもボランティアで携わってくれるようになった。

 日本に滞在しているとき、現地のスタッフとはインターネットの同時回線を使った電話でミーティングを行う。このときも、まだ英語でのやりとりに不安がある私の意思を通訳してくれている。

 ニュージーランドで最も戸惑うのは、物事が進むスピード感の違いだ。「オン」と「オフ」の割り切りがはっきりしている現地では、金曜の午後から“休みモード”になっていき、週末は完全オフというのが常識だ。そんな現地の慣習をはじめ、現地の学校のことや住宅事情についても助言をもらった。家族ぐるみの付き合いになり、年明けから家族で移り住む私にとっては、とても心強い存在だ。

 現地邦人「驚きと期待」

 ニュージーランドが昨年春の第3回ワールド・ベースボール・クラシック(WBC)の予選に初めて出場した際、私はこの地に野球が根付く可能性を感じた。中村さんは長男がこの国で野球を始めた08年ごろのことについて、「当時はまだまだなじみが薄い競技で、野球の『や』の字も知らない人がほとんどでした」と話す。

 野球人口が約6000人まで増え、WBC予選に出場できるまでになり、そこに日本でプロ野球の経験がある私がGM補佐と統括コーチになるというニュースを目にして、中村さんたち日本の関係者には「驚きと期待」が広がったそうだ。

 もちろん、この国の野球レベルはまだまだ発展途上で、強化が実を結ぶには長い年月が必要だ。それでも、中村さんはこう言ってくれた。「野球を通じて母国である日本とつながりができていくということは、子供たちにとってもすごく喜ばしいことです」

 野球を通じた日本との交流は、私が目指す方向性と一致している。そのために、親交がある球界OBを野球クリニックで現地へ招く計画などもしている。現地の日本企業でつくる経済団体などにも、私の活動を支援してくれようとする動きが生まれつつある。

 何のつてもなく飛び込んだニュージーランドで、野球を通じた「輪」ができてきた。そのことを実感できるのが、何よりうれしい。中村さんをはじめ、現地で支えてくれる人たちと一緒に目指す道を歩んでいきたい。(ニュージーランド野球連盟 清水直行/SANKEI EXPRESS

 ■しみず・なおゆき 1975年11月24日生まれ、38歳。京都市出身。東芝府中を経て、99年千葉ロッテ入団。2002年から5年連続2桁勝利を挙げるなどエースとして活躍し05年の日本一に貢献した。10年から横浜DeNA。通算105勝。アテネ五輪、第1回ワールド・ベースボール・クラシックで日本代表。今年からニュージーランド野球連盟のゼネラルマネジャー補佐兼代表統括コーチを務める。

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