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【清水直行のベースボール・ライフ in NZ】子供たちに精いっぱいのプレーを
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オークランド(ニュージーランド)の親善大使として、現地の観光局職員とミーティングをする清水直行さん(右、田中充撮影) ニュージーランドでの生活が徐々に始まった。
拠点を置くのは、国内総人口の3分の1にあたる130万人が暮らすオークランド。市街地からやや離れた「タカプナ」という地域でホテルの一室を借り、近くで日本人が営むカフェで食事のほとんどを済ませる。
ときには、南半球で最も高いスカイタワーがシンボルの市街地まで足を運ぶ。そこには、旬の生カキなどの海鮮料理やおいしい肉料理が人気の店がいくつもある。現地で知り合った親切な日本人らに情報をもらいつつ、自分でも気になる店に飛び込んでみたりもする。
3回目となる今回の滞在期間は、4月下旬から6月上旬に帰国するまでの約1カ月。家族で移住するための場所などを探すとともに、週末は代表のU-12(12歳以下)とU-15の野球クリニックで指導してきた。日本のテレビ局も取材に訪れてくれたので、その様子が国内で伝わることも励みになる。
北半球の日本と気候が反対の現地の季節は秋から冬へ差し掛かろうとしている。今年の野球シーズンは残りわずかだ。クリニックを行う野球場があるのは、オークランドの新興住宅街が広がる「ハウイック」という場所だ。未来の代表チームを担う子供たちは父母の車に乗って、野球をしにくる。
ラグビーやクリケットが盛んなニュージーランドで野球専用グラウンドがあるのは、かなり珍しい。とはいえ、ベースボールを全く知らないかといえばそうでもない。米大リーグの試合は中継されており、人気もある。ニュージーランド国内には18のクラブチームがあり、子供から大学生、シニアまで年代ごとに全国大会も開かれている。ハウイックはオークランドの中でも比較的、野球が盛んな地域だ。
面白いのは、グラウンドの土壌だ。ラグビーが礎にある国ゆえに、天然芝の土の感触は驚くほど柔らかい。ラグビーには適しているのだろうが、野球をするには塁間を走るにも足を取られ、この時期の「シャワー」と呼ばれる集中的な雨が降ると、すぐにグシャグシャになってしまう。
そんな中で、子供たちを父母が必死にサポートしている。実は、球場の移動作業のまっただ中。これまでバックネットがあった場所の裏に住宅があり、「ファウルボールが危ない」と苦情がよくきていたそうだ。そこで、外野のほうへバックネットを移すことになったのだが、その作業を父母たちが担っている。
メジャーと同じ高さのマウンドを作り、塁間の長さをはかって「ダイヤモンド」をこしらえる。これまで内野だった場所は外野になるので新たに芝が植えられた。その芝が根付き始めている。
子供たちが目いっぱいプレーできるように、自分も役に立ちたいとの思いが強くなる。
5月27日付で、ニュージーランド政府観光局のオークランドにおける「親善大使」に就任した。日本からは2013年度に約7万4000人の観光客が訪れたという。国内には大自然が魅力のクイーンズタウンや、11年の震災から復興を目指すクライストチャーチなど魅力的な都市が多い。その中で、私自身が生活していくオークランドの良さを日本に発信していくことが主な役割になる。
オークランドは「シティー・オブ・セイルズ(帆の街)」と呼ばれ、ワイテマタ湾とマヌカウ湾という2つの湾に挟まれた地峡部に位置する。美しく穏やかな海に面したこの街では、6人に1人がヨットを所有しているとされ、観光客もセーリングを体験して楽しめる。
市街地からフェリーで35分で行けるワイヘキ島には緑豊かな自然が広がり、35のワイナリーが点在。こだわりのワインを味わえる。
せっかく縁ができたニュージーランド、特にオークランドで、野球だけの日々を過ごすのではなく、色々なことに挑戦していきたい。親善大使としての役割もその一つだと思っている。自分に何ができるのか、可能性を探ってみたい。(ニュージーランド野球連盟 清水直行/SANKEI EXPRESS)