SankeiBiz for mobile

【清水直行のベースボールライフ in NZ】人とのつながりが財産

ニュースカテゴリ:EX CONTENTSのスポーツ

【清水直行のベースボールライフ in NZ】人とのつながりが財産

更新

ロッテの本拠地QVCマリンフィールドで行われた引退セレモニーで投球する清水直行さん。打席には同級生の福浦和也選手が立った=2014年6月28日、葉県千葉市美浜区(中井誠撮影)  6月28日は特別な一日になった。3月に現役引退を表明した私のために、プロ野球人生を歩み始めてから2009年まで在籍したロッテが本拠地で引退セレモニーを催してくれた。自宅から車で約40分。最近も解説者の仕事で何度か足を運んでいるが、運転中もやはり格別な思いが胸にこみ上げてきた。

 この日のために球団が作ってくれたユニホームを身にまとった。現役時代より一回り大きいサイズをお願いしたのだが、いざ袖を通してみるとそこまで太っていなかったのか、少し余裕があった。ユニホームの下には、プロ入りのときに父親がプレゼントしてくれたネクタイを締めた。

 球団は、投球を披露する舞台まで整えてくれた。恥ずかしい投球はできない。直前にブルペンへ行き、感覚を取り戻そうと10球ほど投球練習を行った。これまでの感謝の気持ちも込めてマウンドの土をトンボでならした。この場所とも別れのときがきた。最後に深々と頭を下げ、一塁側ベンチにつながる長い廊下を歩きだした。

 現役時代のことがよみがえってきた。試合時間は決まっている。先発投手はその時間には必ずマウンドに上がらなければならない。当日のブルペンで調子が良くて、「きょうは行ける」と自信を持てる日もあれば、「やばいなあ」と不安が襲い、周りから「粘っていきましょう」と励ましてもらうこともあった。廊下ですれ違う球団スタッフからは力強い言葉をかけてもらった。そうして気持ちが高ぶり、試合を迎えていた。この日も同じだった。

 いざマウンドへ。ファンが「直行コール」で盛り上げてくれた。こんなことがあるんだ。温かい声援が胸にしみこんでくる。在籍時代、いつもそうだった。何度も背中を押してもらって、勝負のマウンドへ向かった。そんな日々がよみがえってくるようだった。

 打席には同級生で、2005年にチーム31年ぶりの日本一の歓喜を分かち合った福浦和也が立ってくれた。万感の思いだった。投球後はこれからのロッテを背負っていく唐川侑己(からかわ・ゆうき)から花束を手渡された。ほかの選手からも多くのねぎらいの言葉をもらった。

 ファン、チームメート

 記念のユニホームは、父とともに駆けつけてくれた母にプレゼントした。「(お世話になった球団が)ロッテでよかったやん」。母はそう言ってくれた。

 105回勝って、100回負けた。成績は数字をみればわかる。でも、野球人生の中でできた人とのつながりという、見えない財産こそが、野球人生を終えたときに最も誇れるものだった。記録だけではなく、プロ野球の世界に軌跡を残せた。そう思える無形の財産が、声援をくれたファンであり、支えてくれた裏方さんであり、チームメートであり、他球団にも広がった人間関係だった。

 現役時代を振り返ると、劣等感をいつも抱いていた。同級生の上原浩治(レッドソックス)のような落差の大きなスプリットがあるわけでもなければ、ライバル球団のエースだった松坂大輔(メッツ)のように高校時代から“怪物”と騒がれたわけでもない。160キロの剛速球もなければ、絶対的なウイニングショットもない。現役13年を振り返っても、防御率1点台というような圧倒的な数字を残したシーズンはなかった。

 カットボールなどをコーナーに投げ分け、任された試合を何とか作っていこうと戦ってきた。とにかく丁寧に。ヒットを何本打たれても、三振が一つも奪えなくても得点をできるだけ許さず、最後までマウンドに立つ-。そんなスタイルを確立しようとやってきた。一瞬で大きな輝きは放てなくても、結果を積み重ねることで信頼感を得る。そんな心づもりだった。

 自分だけの何か見つけ

 セレモニーを終えた後、フェイスブックに写真をアップした。ファンから「将来は指導者として戻ってきてほしい」という趣旨の書き込みをもらった。うれしい限りだが、そんな縁があるとすればもう少し先のことになるだろう。

 日本球界ではユニホームを脱ぐと、ある程度の実績を残した選手には指導者としての道が用意される。球団に残り、編成などのフロントに入る人もいる。自分の中で、そんな第二の人生を考えたこともある。だけど、所属球団がなくなってから正式に引退するまで1年以上の月日があり、その間にいろいろなことを考えた。

 導き出した結論は、自分だけの何かを見つけようということだった。それが海外での指導者の道だった。球団やファンが望んでくれるなら、いつの日か日本で指導者をするチャンスに恵まれれば光栄なことだ。そのときも、国際感覚を持ち合わせた自分だけの特徴を身につけておきたい。

 日本を離れ、南半球のニュージーランドでこれから歩む道には、「パイオニア」の自負もある。道は険しく、思い悩むこともあるだろう。そんなときは「直行コール」を思い出したい。セレモニーで温かく送り出してくれたロッテに感謝し、広い視野を持てるようにもっともっと自分を磨いていきたい。(ニュージーランド野球連盟 清水直行/SANKEI EXPRESS

 ■しみず・なおゆき 1975年11月24日生まれ、38歳。京都市出身。東芝府中を経て、99年千葉ロッテ入団。2002年から5年連続2桁勝利を挙げるなどエースとして活躍し05年の日本一に貢献した。10年から横浜DeNA。通算105勝。アテネ五輪、第1回ワールド・ベースボール・クラシックで日本代表。今年からニュージーランド野球連盟のゼネラルマネジャー補佐兼代表統括コーチを務める。

ランキング