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【清水直行のベースボールライフ in NZ】「人と人のつながり」が支えに
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ニュージーランド野球連盟への支援発表の場で、ロッテの林信平球団本部長(左)からボールを受け取る清水直行さん=2015年1月5日、千葉県千葉市美浜区のQVCマリンフィールド(清水直行さん提供)
白球を手に、ロッテの林信平球団本部長とともに報道陣のカメラの前に立った。プロ入団から10年以上、お世話になった古巣のロッテが1月5日、ニュージーランド野球連盟への支援を表明してくれた。
メディア発表の場で100ダースのボールを寄付していただき、今後も用具の提供などで活動をサポートしてもらえることを約束してくれた。将来的には秋季キャンプでニュージーランド代表の若手選手を受け入れてくれるなど人的交流も考えてくれるという。
ニュージーランドだけでなく、野球の途上国ではボールの確保すらままならないのが現状だ。日本のプロ野球が公式戦や練習で使用した後でも、まだまだ使えるボールがたくさんある。球団が使用しなくなったボールを、選手らの出身校やクラブチームに贈ることもあるようだが、その一部をもらえることは本当にありがたい。
現役時代からお世話になってきた林さんは、2020年東京五輪での野球復活の可能性が高まっている現状を踏まえ、球団として競技の国際的な普及に貢献することは「有意義な活動」であると説明していた。そんな言葉を聞きつつ、心の中は感謝の気持ちでいっぱいだった。
今回の支援の話は、実は半年近く温めてきた構想だった。私が現役引退を表明した昨年春、古巣球団としてロッテから、私の引退セレモニーを用意してくれるという話をいただいた。このときの企画に携わってくれたのが林さんだった。
東京都内での会食の席上、私は林さんにニュージーランドで野球の指導に取り組むことの大変さと、球団としてできる限りの支援をお願いした。そこで浮上してきたのが、ボールなどの用具提供や人的交流だった。
ニュージーランド野球連盟のゼネラルマネジャー(GM)補佐に就任してから、悩みが尽きない日々だ。「野球の普及」という理想だけでは突き進めない現実も突きつけられた。以前からお世話になっている人からは「食べていけるのか」と心配していただいた。
家族の生活費などをどう工面するか。活動に協賛してくれるように企業などにお願いにまわった。いくつかの企業からはうれしい回答をもらった。その一つが千葉県君津市を拠点に住宅建設や販売を行う新昭和だ。
ロッテのオフィシャルスポンサーでもあり、松田芳彦社長にはさまざまな面で相談にも乗ってもらっている。ニュージーランド航空からは、現地との往復にかかる航空チケットで融通を図ってもらっている。
引退して社会に出て改めて分かったことがある。それは、いかに「人と人のつながり」に助けられるかということだ。プロの世界でも、裏方さんに感謝の気持ちを持てない人間は成功できないと思っていたが、実社会にもおいても支えてくれる人たちがいなければ、自分だけの力で何かを成し遂げるということはほぼ不可能だ。
ただ、現役時代もいざ、マウンドに立てば誰も助けてはくれない。そこでの結果は全て自分にかかってくる。1月15日、成田空港からニュージーランドへ旅だった。オークランドに借りた新居での生活が始まった。少し遅れて家族もきてくれた。ついてきてくれた家族にも深く感謝している。支えてくれた人たちの期待にどう応え、野球に恩返しができるか。勝負はここから始まると思っている。(ニュージーランド野球連盟 清水直行/SANKEI EXPRESS)