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人身売買の実態 社会に問題提起 映画「バトルヒート」 ドルフ・ラングレンさんに聞く
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「トニーはスピードのあるジェット・リーとパワフルなアクション俳優とのミックスだ」と舌を巻くドルフ・ラングレンさん=2014年2月23日(Tact提供) 文武両道に秀でた、なかなか奥ゆかしい人物だ。理系の道に進んだドルフ・ラングレン(57)は、スウェーデン王立工科大や米国のマサチューセッツ工科大で数学、物理学、化学を学ぶ一方、極真会館に入門して空手を学び、ついには三段の黒帯保持者となってしまう。
その後、映画「ロッキー4/炎の友情」(シルベスター・スタローン監督兼脚本)への出演でスターダムに駆け上がり、押しも押されもせぬ世界的なスターとなったことは周知のとおりだが、本人としてはまだまだやりたいことがいっぱいあり、とてもじっとしてはいられないそうだ。
その一つが、緻密な取材を重ね、10年間ほど温めていた虎の子の企画を具現化させた主演のアクション映画「バトルヒート」(エカチャイ・ウアクロンタム監督、米・タイ合作)を世に送り出すこと。本作はラングレンの十八番とされる娯楽アクションという枠を飛び越え、世界で秘密裏に行われている人身売買の一端をテーマとしたリアリティーに富んだシリアスな仕上がりとなっている。
製作と脚本も務めたラングレンはSANKEI EXPRESSのメール取材に「正直に言えば、製作費を確保するために、当初の僕の想定よりもアクションシーンを増やしました。でも、僕の狙いは人身売買の実態を真摯(しんし)に描くことです。この映画が大勢の人たちに人身売買や被害者たちの実態を考えるきっかけを与えることができればいいなと、僕は願っています。一説によると、世界には2500万~3000万人もの人身売買による被害者が存在しているわけですからね」と強調した。
《米ニュージャージーを拠点に活動する敏腕刑事、ニック(ラングレン)は、マフィアのボス、ドラゴビッチ(ロン・パールマン)の恨みを買い、妻と一人娘を殺害された。復讐(ふくしゅう)の鬼と化したニックはドラゴビッチを追ってタイへ潜入し、ずばぬけて腕が立つ現地の刑事、トニー(トニー・ジャー)と出会う》
ラングレンが人身売買に関心を持ったのは、10年ほど前の報道がきっかけ。人身売買組織がメキシコから米国へ少女30人をバンに詰め込んで輸送中、窒息死させてしまったという。監督としても社会派志向の作品を手がけてきたラングレンは、「当時、メディアは人身売買をあまり取り上げていませんでした。僕は撮影の合間を利用し自分なりに脚本を書き上げていきました」と振り返った。
当初、「バトルヒート」の舞台は米国とロシアに設定されていたが、ラングレンはタイに変更した。「バトルヒート」の前にトニー・ジャーと共演した「A Man Will Rise」(2013年)の撮影でタイに滞在した折、「人身売買問題の温床はむしろ東南アジア」と分かったためだ。「バトルヒート」の共同脚本家に「ロシアからタイに変更できないか」と相談を持ちかけると、3日で脚本が完成。トニー・ジャーに見せると、気に入ってもらい、本格的に企画が動き出したという。
本作の監督にタイ人のエカチャイ・ウアクロンタムを迎えたのは、現地のスタッフや俳優との意思疎通を円滑に進めてもらうためだった。「製作総指揮として携わる作品は過去にありましたが、どっぷりとプロデュース業につかってしまうのは今回が初めてでした。僕はプロデュース業に専念したかったし、撮影中は脚本家としてリライトする必要がありました。タイ語でコミュニケーションがとれる監督でなければ難しいでしょう」
作中、ムエタイにも精通するトニー・ジャーの対決シーンは、「極真空手VSムエタイ」という異種格闘技戦の様相を帯び、夢の一戦は興味深いものとなった。「とても楽しかったです。彼の方が僕よりも若くて、ずっと体も鍛えている。僕は彼の動きに見合うアクションを披露しなければならなかったし、『ドルフ・ラングレン』というキャラクターのイメージもキープする必要があった。また、プロデューサーとしても、対決シーンのデザインに関わったわけで、大変でしたけどね」
ラングレンは今後も社会への問題提起を含んだ映画を作ろうと意欲的だ。「次の監督作『Nordic Light』は第一次世界大戦の渦中にある看護師の物語です。女性への選挙権の付与をテーマに彼女たちがどう世界を変えていったかを描きました」。7月25日から東京・丸の内TOEIほかで全国順次公開。(高橋天地(たかくに)/SANKEI EXPRESS)
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