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迫られた海外進出 「高値づかみ」指摘も 日経、英FT買収

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迫られた海外進出 「高値づかみ」指摘も 日経、英FT買収

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英紙フィナンシャル・タイムズを買収する日本経済新聞社のフロントページ=2015年7月24日、東京都内の販売店(ロイター)  巨額買収は吉と出るのか-。日本経済新聞社が英有力経済紙フィナンシャル・タイムズ(FT)を発行するFTグループの買収を発表したことを受け、国内外から驚きの声が上がった。日本を代表する巨大経済メディアの勝ち残りの一手に注目が集まっている。

 「FTグループの収益力や利益水準は高くないはず。高値づかみの可能性もあるが、何としてでも(FTを)取りたかったのだろう」

 国内シンクタンクのエコノミストはこう分析する。

 日経の連結売上高(2014年12月期)は3006億円で、今回の買収金額(約1600億円)はその半分を超える。米アマゾン・ドット・コム創業者が米紙ワシントン・ポストを買収した金額の約5倍で「社運をかけているともいえる買収金額」(エコノミスト)だ。24日の記者会見で、日経の岡田直敏社長は「この金額を出しても成長できる」と強調した。

 巨額買収の背景には人口減少で国内市場が縮む中、海外市場開拓に迫られる国内メディアの姿が浮かび上がる。

 経済報道において日本では高い知名度を誇る日経だが、「海外ではそれほどでもない」(エコノミスト)のが現状。岡田社長は「これまではもっぱら日本の情報を日本の読者に伝えてきた」とする一方で、大手から中小企業に至るまで国内企業の海外進出が加速する中、「日本での取材だけでは読者のニーズに応えられない」と苦しい胸の内を明かした。

 世界市場で存在感を高めることは容易ではなく、FT買収を契機に海外本格進出に踏み切りたい構えだ。

 今回の買収について立教大学大学院の亀川雅人教授(企業経済学)は「取材拠点の配置や組織の融合など難しい課題もある。今後、どのような相乗効果を出すかが鍵だ」と指摘した。

 ≪岡田社長「買収金額に見合う価値≫

 日経の喜多恒雄会長、岡田直敏社長の一問一答は次の通り。

 ――買収の経緯は

 喜多会長「5週間前にFTから打診があり、今週ロンドンでFTのトップと直接交渉した。昨日、電話会議で価格を決めてその場で契約した」

 ――買収のシナジー効果は

 岡田社長「編集面とビジネス面の両方で期待している。編集面ではグローバル戦略を加速させ、アジアを強化したい。アジアの重点企業は現在、100社だが300社に増やす。日本の読者にも質の高い国際情報を提供する。ビジネス面では広告、イベント、デジタル戦略で協力関係を深める」

 ――FTの編集権の独立は確保できるのか

 岡田社長「編集権は保証すると伝えている。自分たちと同じやり方にしようと思っていない。交流を通じて学べるところはお互いに吸収していきたい」

 ――米ワシントン・ポストが買収された金額に比べて5倍近い(約1600億円)が

 岡田社長「これまでの提携は記事の相互利用までで、人材の交流やノウハウ、知識の交換までいかなかった。FTの持っている資産価値、ブランド力とわれわれの力を組み合わせれば新しい価値が生まれる。今回の金額はそれに見合うものと考えている」(SANKEI EXPRESS

 ■日本経済新聞社 日本経済新聞の発行を中核とする事業持ち株会社。国内支局は54カ所、海外取材拠点は米ニューヨークや英ロンドンなど36カ所。グループ会社にテレビ東京やテレビ大阪などがある。2014年12月期の連結売上高は3006億円、最終利益は102億円。1876年に前身「中外物価新報」が創刊された。

 ■フィナンシャル・タイムズ 英国の有力経済紙。米国のウォールストリート・ジャーナル(WSJ)と並び世界的な影響力を持つ経済メディアとされる。創刊は1888年で、発行元の本社はロンドン。出版事業などを展開する英メディア大手ピアソンの傘下にある。これまでも米国のメディア企業などによる買収観測が浮上していた。

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