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ラジオ復活 音楽に新たな波 「Apple Music」で新旧メディア融合

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ラジオ復活 音楽に新たな波 「Apple Music」で新旧メディア融合

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「アップル・ミュージック」の発表会で抱き合うアップルCEO(最高経営責任者)のティム・クック氏(右)と、ビーツの共同創業者、ジミー・アイオヴィン氏=2015年6月8日、米カリフォルニア州サンフランシスコ(AP)  米アップルが開局したネットラジオ「ビーツ1」が注目を集めている。定額で音楽が聴き放題となるストリーミング方式のネット配信サービス「アップル・ミュージック」のメニューの一つとして開始。「iPhone(アイフォーン)」などアップルの端末で無料で聴くことができ、人気DJが24時間生放送で、流行を先取りする音楽を日本を含む約100カ国のリスナーに届けている。最先端のストリーミングと、昔懐かしい“オールドメディア”の代表であるラジオを融合させ、音楽のニューウエーブを起こそうというのがアップルの狙いだ。

 人気DJが「出合い」演出

 ビーツ1の放送は先月30日、米ロサンゼルス発の番組でスタート。アップルが2月に英BBC放送のラジオ局「Radio 1」から引き抜いた人気DJ、ゼイン・ロウさん(41)による、ヒップホップ界のカリスマ、エミネムさん(42)の独占インタビューがオンエアされた。

 局名には、アップルが昨年8月に約30億ドル(約3700億円)で買収した世界中で若者に人気の高級ヘッドホンメーカー、ビーツの名を使い、そのブランド力を最大限に活用している。

 ロスのほか、ニューヨーク、ロンドンという音楽シーンをリードする3都市から番組を発信。各地のDJが独自に選んだ時代を先取りするお薦め曲を紹介するほか、ファン垂涎(すいぜん)の人気ミュージシャンとのインタビューも続々と放送。7月のラインアップには英歌手、エルトン・ジョンさん(68)や米ラップ歌手兼音楽プロデューサーでビーツの創業者でもあるドクター・ドレーさん(50)といった超大物が名を連ねている。

 世界100カ国で開始したアップル・ミュージックは、ネット上で楽曲のデータを受信しながら同時再生するストリーミング方式のサービス。日本では月額980円で数百万曲が聴きたいときに聴ける。

 ビーツ1のリスナーがDJのお薦め曲をアップル・ミュージックで何度も聴き、未知のジャンルに足を踏み入れてもらい、新しい音楽との出合いを次々に演出する。アップルは、ストリーミングとラジオの新旧メディアの融合によって、こんな相乗効果を狙っている。

 流行発信は人の手から

 アップル・ミュージックでは、利用者が聴いた曲の履歴に基づき好みの曲をお薦めする機能を備えている。ライバルのスポティファイなど他のネット配信サービスは単にコンピューターの数式(アルゴリズム)でお薦め曲を選んでいるのに対し、アップルは音楽誌の編集者がピックアップしたリストからも選曲しているのが特徴だ。

 アップルは、音楽の流行を作り出すのは、最新のテクノロジーではなく、あくまでDJや編集者といった“人間”であり、音楽ファンを増やすには、ラジオが最適なメディアだと考えているようだ。

 「人間のDJが世界中の人々に届ける楽曲をスマートフォンで聴くというモバイル時代にリメークされた流行遅れのスタイル」。米紙ロサンゼルス・タイムズ(電子版)は、こんな皮肉的な表現で、ビーツ1の意味合いを評価する記事を掲載した。

 1960年代に米国で初めてヒットチャート番組を生み出した伝説的なラジオ編成者、リック・スクラー氏もBBC放送で、“ラジオの復活”をこう喜んだ。

 「芸術と科学が融合したものが偉大なラジオだと信じており、アップル・ミュージックは私の心にあるこの考えの表れである」(SANKEI EXPRESS

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