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【エコノナビ】進化する腕時計

ニュースカテゴリ:EX CONTENTSの経済

【エコノナビ】進化する腕時計

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支払い機能を搭載したスマートウオッチ「スウォッチタッチ_ゼロワン」の発売を発表するスイスの時計メーカー「スウォッチ」=2015年3月12日、スイス・コルジェモン(ロイター)  固定された電話回線網を超越する通信手段が発達し「究極的には古くからSFで親しんできた、あの腕時計型電話へと至るのです」(「宇宙村の彼方」、同文書院327ページ)

 SF作家のアーサー・C・クラーク氏が1983年5月17日の「世界電気通信の日」に国連で行った演説の一節である。

 クラーク氏の発言を改めて読むと今のスマートフォンの概念についても「フォース・マルチプライヤー」との表現で語っている。

 SF作家が書いてきたから技術者らが実現しようとするのかどうか分からないが、アップルが発売した「アップルウオッチ」など昨年から身につけられるデジタル端末、いわゆるウエアラブル端末が市場に本格投入され始めた。血圧や脈拍の測定を通じた健康管理や、遠隔操作でのお年寄りの見守りサービなど腕時計型端末の活用によってITビジネスの幅が大きく広がりを見せている。

 スイスで3月下旬に開かれた世界最大の腕時計見本市でも、腕時計型端末の新製品が数多く披露された。特に注目を集めたのはスイスメーカーのタグ・ホイヤーが米グーグル、インテルと提携して新商品を投入すると発表したことだ。

 しかし、こうした状況に対して、老舗の時計メーカーの中には距離を置く向きも少なくない。

 1980年代後半から90年代にかけて日本の時計メーカーのクオーツ式腕時計が世界を席巻したものの、その後、中国などの安い汎用(はんよう)品に押され、急激に利益を落としたことがある。

 この時、スイスのメーカーは旧来型時計の高価格化というブランド戦略への転換で見事乗り越えた。そのような教訓が時計業界にはあるのだ。

 しかし、腕時計とコンピューターの融合の流れを押しとどめることは難しい。老舗メーカーもブランドを守りながら、オープンにインターネットを活用して新たな価値を生み出すための挑戦をしていかなくてはならないだろう。クラーク氏が予言した腕時計の進化に興味津々である。(気仙英郎/SANKEI EXPRESS

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