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【メジャースカウトの春夏秋冬】「掘り出し物」続々 独立リーグ 大屋博行
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試合終了後残ったファンにサインする高知の藤川球児(きゅうじ)投手(左)。その加入で独立リーグは大きく盛り上がっている=2015年7月12日、高知県高知市の高知球場(中島信生撮影) 米大リーグ、レンジャーズを自由契約になった藤川球児(きゅうじ)投手が選んだのは、日本国内の独立リーグ「四国アイランドリーグplus」の高知だった。右腕にとっては故郷でもあり、右肘手術からの完全復活へ再出発の舞台としては打って付けだったようだ。
一方で、独立リーグからは今季も、プロ野球に選手を送り込んでいる。リーグ発足時はレベルや経営面で不安視されていたが、徐々に存在感を高めてきた。
投手で近年の代表格は、藤川投手と同じリーグの香川から入団した中日の又吉克樹(かつき)投手だ。大学から独立リーグを経て2014年ドラフト2位で入団した苦労人は1年目の昨季、いきなり中継ぎで67試合に登板。防御率2.21と安定した投球が光った。
ほかに金無英(キム・ムヨン)投手(ソフトバンク)や星野真澄投手(巨人)も独立リーグ出身者だ。独立リーグの選手、特に投手には「掘り出し物」が多い。
独立リーグの大きな役割は多くの選手に試合に出場する機会を提供することだ。強豪の高校や大学では登板のチャンスをもらえなかった投手が独立リーグで試合数をこなすことで、課題の制球難を克服するなどで成長していける。実戦登板で、腕の振りなど自分に合った投球フォームを確立できれば、成長の余地も大きくなる。
ただ、打者のレベルは、高知出身で12年に首位打者にも輝いたロッテの角中(かくなか)勝也外野手らはいるものの、投手に比べると、総じて低いように感じる。
独立リーグのチームのレベルは、都市対抗野球大会に出場する実業団チームにはまだまだ及ばず、クラブチームレベルといったところか。米国でいえば、大リーグを頂点としたピラミッドの一番下に位置する1Aやルーキーリーグにも届かない。
日本国内では企業チームが減少するなか、プロ入りの夢を諦められない選手たちの「受け皿」が課題とされてきた。四国のほか、北信越に独立リーグができたことで、受け皿としての一定の役割を担っている。また、日本のプロ野球で戦力外通告を受けた選手がもう一度、はい上がるための「受け皿」にもなり、地方では地域密着の経営方針が地道なファン層の拡大にもつながってきているようだ。
さらに新たな傾向も出てきた。長打力が魅力でロッテからオリックスへ移籍して中軸を担うフランシスコ・カラバイヨ外野手や、年俸360万円(推定)と安価なことが話題になったヤクルトのミッチ・デニング外野手らの独立リーグ出身の外人選手の活躍だ。貧打に悩む阪神はシーズン途中、左の長距離砲との触れ込みのネルソン・ペレス外野手を石川から獲得した。
背景には、日本球界と外国人選手双方の思惑の合致がある。日本の、まして独立リーグにやってくる外国人選手は、米国ではマイナーの3Aでも通用しないレベルの選手がほとんどだ。年を取り、2Aにくすぶっているレベルの選手といってもいい。それでも、掘り出し物を見つけようとする日本の各球団にはメリットがある。
米国から直接選手を獲得しようとすると、どうしても移籍金や年俸が高額になる。その上、日本の野球や文化に適応できるかは未知数だ。バリバリのメジャーリーガーでなくとも、3Aで活躍している選手なら資質は十分だが、果たして日本で通用するかはふたを開けてみるまで分からない。
一方、独立リーグの選手は日本のスカウトが目に入れやすく、何より日本になじんでいるかどうかがすぐに判断できる。球団にとって契約金もそれほど高くなく、たとえ、活躍できなくてもリスクも高くない。選手からしても月給数10万円の独立リーグよりは待遇面でありがたい。さらに独立リーグの球団としても、日本のプロ野球に移ってくれれば移籍金も入るので、経営面でメリットがある。
さまざまな事情の中で成り立っている独立リーグだが、プロ野球に移籍できる期限は7月末になる。藤川投手は、果たして視察に訪れるスカウトたちに「火の玉ストレート」復活を印象づけることができるか。右肘の回復具合を含め、厳しい環境からはい上がってくることができれば、独立リーグの存在価値はまた高くなるだろう。(アトランタ・ブレーブスの国際スカウト駐日担当 大屋博行/SANKEI EXPRESS)