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里山にちりばめられた作品を巡る 大地の芸術祭 越後妻有アートトリエンナーレ2015

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里山にちりばめられた作品を巡る 大地の芸術祭 越後妻有アートトリエンナーレ2015

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蔡國強の火薬発火によるドローイング「島」(点火直後)=2015年7月25日、新潟県の越後妻有地域(十日市、中魚沼郡津南町、原圭介撮影)  【アートクルーズ】

 3年に1度の「大地の芸術祭 越後妻有アートトリエンナーレ」が開幕した。6回目の展示作品は、過去最多の約380点。廃屋や廃校の中に、生活の気配や証しを再現するインスタレーションが展開したり、田園風景の中に、地域復興の願いを表現するオブジェが置かれたりしている。アーティストたちのテーマは、豪雪や過疎化、産業の衰退に苦しんできた地域に根差している。760平方キロメートルにちりばめられたアートのほんの一部を紹介しよう。

 「非日常的な時間」体験

 開幕前日の7月25日。午後6時ごろ、越後妻有里山現代美術館「キナーレ」屋内で、蔡國強による火薬画「島」の実演が催された。

 蔡が点火すると、幅2.5メートル、長さ16メートルの和紙が、わずか1、2秒で炎に覆われ、辺りは白煙に包まれた。焼け焦げた覆いを剥がすと、海に浮かぶ黒々とした島が姿を現した。

 蔡は、仙人の住むという中国伝説の「蓬莱(ほうらい)山」をテーマに、一連の作品をつくっている。キナーレの中央にある池には実際に、樹木が茂る島も出現。蓬莱山や滝もつくられ、島の周囲には、地元のわら細工によるヘリコプターや軍艦もあしらわれた。

 蔡は「架空の島をつくることで、理想の島とは何かを考えたい」と述べたという。「史記」にも登場し、秦の始皇帝が不老不死の薬を求めて徐福(じょふく)を派遣したという三神山の一つ「蓬莱山」に蔡は、島(地域)の永遠の繁栄を託そうというのだろうか。

 過疎化や少子化にともなって、地域には廃屋や廃校が多い。

 大巻伸嗣の「影向(ようごう)の家」は、廃屋という空間を「装置」にして、“非日常的な時間”を体験させようというインスタレーションだ。影向とは、神仏が一時、姿を現すことを指す。

 廃屋の暗い空間に眼を凝らすと、丸い光の玉が昇ってきて、やがて割れ、煙のように消え去る。それは神のようでもあり、人の魂のようでもある。

 大巻は自作について、「『神の宿る家』としてつくった。あちら側の世界とつながる場として、じっくり感じてほしい。(光の玉は)豪雪地帯の雪を光に見立て、降ってきた光が天に帰ることもイメージしている」と話した。

 子供たちへの思い込めて

 アネット・メサジェの「つんねの家のスペクトル」は、つんね(山の上)の家で、実際に生活をしていた女性の“気配”を、彼女が使っただろうハサミや針、包丁など利器の縫いぐるみを天井からつるすことで表現している。

 残された仏壇には、位牌(いはい)の代わりに、中心部に紅を塗った白いマスクが置かれていて、見る者をドキッとさせる。メサジェは「(仏壇と)もっとも対照的なものを置いた」と話す。彼女一流の毒を含んだユーモアかもしれない。

 廃校を利用した鉢&田島征三「絵本と木の実の美術館」には、流木をカラフルに色づけしてつくられたオブジェがあふれている。楽しかった学校生活を再現するように、田島は2009年の芸術祭からオブジェをつくってきていて、今回は「オバケ」と「ヤギ」が加わった。ヤギは実際に、3頭が飼われている。

 田んぼの真ん中を通る道の両脇に、2メートルほどの高さの竹が何本も立てられ、それぞれの先に、口を開けた緑のカエルの像が付けられている。集落への道には、いくつものコンクリート製の足形が並べられ、その出口では木製のカエルの像が出迎える。

 リン・シュンロン(林舜龍)は「国境を越えて・村」に登場するカエルたちについて、「台湾では多産を表し、子供たちが増えてほしいという意味を込めている」と話す。村で育った子供たちは高校や大学に進学して地元を離れる。「帰ってくるのは亡くなって地元のお墓に入るときだ」と、悲しい眼をした。

 台湾のベストセラー絵本作家、ジミー・リャオ(幾米)が、JR飯山線アートプロジェクトとして土市(どいち)駅に設けたかまぼこ型の施設は、外装にも内部にも彼の絵本の世界が満ちあふれている。

 ジミーはプロジェクトに関連し、絵本「幸せのきっぷ-Kiss & Goodbye」(岸田登美子訳、現代企画室)も台湾と日本で同時発刊した。両親を亡くした少年が愛犬プリンとともに、おじいちゃんに会いに行くため列車に乗る物語だ。(原圭介/SANKEI EXPRESS

 【ガイド】

 ■「大地の芸術祭 越後妻有アートトリエンナーレ2015」 9月13日まで、新潟県の越後妻有地域(十日町市、津南町)で開催。作品鑑賞パスポートは一般3500円。実行委員会事務局(電)025・757・2637。

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