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科学
ヒッチロボの旅 悲しい終焉 破壊され発見 人と信頼関係成立せず
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米マサチューセッツ州マーブルヘッドの路上でヒッチハイクをする「ヒッチボット」。元気に旅をしていたが、その後無残な姿で見つかった=2015年7月17日(AP) 人間の好意と優しさを頼りに昨年7月からヒッチハイクで世界を旅していたロボット「ヒッチボット」が、米東部フィラデルフィアで何者かに破壊されてしまった。多くの人と出会い人気者になったヒッチボットの旅が悲しい終わりを迎えたことに衝撃が広がっている。このプロジェクトは、カナダの大学が急速に利用が進むロボットと人間の信頼関係について研究する社会実験として行っていた。ロボットと人間はわかり合えないことを暗示するかのような結末となったが、ヒッチボットは「人間への愛情は決して薄れない」と訴えている。
AP通信など海外メディアによると、ヒッチボットは、カナダのマクマスター大学のデビット・スミス博士とライアソン大学のフラウク・ゼラー博士らが共同開発した。
旅の途中で盗難に遭わないよう、どこにでもある家庭用品を材料に使い、製作費は計1000ドル(約12万円)ほど。顔は赤色のLEDで、胴体は円筒形、黄色い長靴を履いている。ゼラー博士によると、自分では動けず、「完全に人間に依存する存在として設計された」という。
また人工知能(AI)を備え、人の質問に答えたり、「充電してほしい」と話しかけたりできる。約20分おきに写真を自動撮影して旅の様子を記録し、交流サイトのツイッターやインスタグラムに投稿する。
ヒッチボットは昨年7月26日に、カナダの東部ハリファクスを出発。目的地が書かれたプラカードを持って路上に置かれ、車に乗せた人が運べる場所まで運んでまた路上に置いて旅を続けた。26日間かけて約6400キロ離れた西部ビクトリアに到達しカナダ横断に成功。その後、ドイツやオランダを回り、今年7月17日に、米東部マサチューセッツ州のボストン近郊から米国横断の旅に出た。
無残な姿で発見されたのは、2週間後の今月1日早朝。フィラデルフィアのダウンタウンの道路脇に、頭部がなくなり、両手をもぎ取られた状態で放置されていた。頭部は発見できず、修復不能という。
ゼラー博士はAP通信に「本当に悲しいことに、米国横断の旅が終わってしまった」と悲しみを吐露。また研究チームは公式サイトで、「ヒッチボットを見守っていた大勢のファンが失望していることは分かっている。この偉大な実験は終了していないので、安心してもらいたい」と復活を示唆。さらに「ヒッチボットを破壊した人々を探し出したり、訴えたりするつもりはない」と表明した。
ただ、インターネット上には、野球帽とジャージー姿の男がヒッチボットをバットでたたき壊す様子を捉えた監視カメラの映像が公開されており、犯人捜しが始まっている。
これまでの旅では、出会った人の家に招かれたり、キャンプや野球観戦を楽しんだり、結婚式に参加したりするなど人間との交流を深めてきた。
ゼラー博士は実験開始当時、メディアに、「人間とロボットの関係に関する研究は重要性を増している。家庭での利用が進めば、なおさら重要になる」と指摘。旅の記録を分析し、ロボットに対する人間の態度などについて研究結果をまとめる予定だった。しかし、実験は多くのSF映画で描かれてきた敵対関係を証明するかのような結末に。
それでも、研究チームは公式サイトにヒッチボットからのこんなメッセージを残した。
「良いロボットにも時には悪いことが起きるのかもしれない。ぼくの旅はいったん終わることになるが、人間に対する愛情は決して薄れないだろう。すべての友人に感謝します」(SANKEI EXPRESS)