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火星有人探査 空飛ぶ円盤で着陸 NASA、高性能パラシュート実験中

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火星有人探査 空飛ぶ円盤で着陸 NASA、高性能パラシュート実験中

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「低密度超音速減速機(LDSD)」のテスト機をのぞき込むこのプロジェクト責任者のマーク・アドラー氏(左)。新開発の「超音速パラシュート」がうまく起動するかが実験の大きなポイントになる=2015年5月28日、米ハワイ州カウアイ島(NASA/Bill_Ingalls)  米航空宇宙局(NASA)は、2030年代に実施をめざす火星有人探査で、探査機を安全に火星に着陸させるための巨大な円盤型実験機の飛行実験をハワイで3日午後(日本時間4日午前)に行う。実験は昨年6月に続いて2回目だが、今回はこれを使い、新開発の超音速パラシュートの性能を試すのが目的だ。有人探査のための探査機はこれまでより大型化して重量も重くなるため、パラシュートの機能や性能を大きく向上させる必要がある。NASAでは今回の実験が火星有人探査を成功させる鍵になると認識している。

 ハワイで飛行実験

 6月2日付米紙ワシントン・ポストや米CNNテレビ(いずれも電子版)などによると、この実験機は「低密度超音速減速機(LDSD)」と呼ばれるもので、直径が4.7メートルで重さが約3トン。外見はまるで巨大な空飛ぶ円盤だ。

 実験では、これをハワイ州のカウアイ島にある米海軍の太平洋ミサイル試射場からヘリウム気球にぶら下げ、上空3万6000メートルの地点にまで運ぶ。

 その後LDSDはロケットを噴射し、マッハ4のスピードで上空5万4000メートルまで上昇し、そこで新開発の超音速パラシュート(直径30メートル)を開き、減速しながら下降。海上に着水後、回収する。

 LDSDには4台のカメラが付いており、そのカメラから実験のリアルな映像が地上のNASA関係者らに生中継される手はずだ。実験は当初、2日に予定していたが、海上が荒れたためこの日に延期された。

 昨年6月は開かず

 今回の超音速パラシュートの実験は火星有人探査を実現させるためには避けて通れない関門だ。NASAでは1976年の火星探査ミッション「バイキング計画」以降、同じパラシュートの技術を使っているが、火星有人探査では「火星に安全に着陸し、飛行士らが長期滞在するには探査機もより大型化し、重量も重くなる」と公式サイトでも明言している。

 その着陸を成功させる重要な技術が超音速パラシュート。しかし、昨年6月に同じハワイで行った初実験では、上空まで計画通り上昇したものの、降下の際にパラシュートがうまく開かず、欧米メディアは事実上の失敗との論調で伝えた。

 NASAのジェット推進研究所(カリフォルニア州パサデナ)で今回のプロジェクトの責任者を務めるマーク・アドラー氏は「今回の実験は、新開発の超音速パラシュートが正しく作動するかどうかが最大の問題だ」と強調した。

 5トン分の積載可能

 NASAの宇宙技術ミッション理事会のスティーブ・ジャージック理事は米FOXニュース(電子版)に「LDSDの技術があれば、火星に5トン分の探査機や機器を下ろすことができ、より高機能のロボット探査が可能になる」と予想。「火星のサンプルを地球に持ち帰るための採取車も現地で使えるようになる」と期待を寄せた。

 3回目の実験は来夏の予定。人類は火星への有人飛行に向け、着実に駒を進めている。(SANKEI EXPRESS

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