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【USA! USA!】(15)フロリダ州ケープカナベラル 「最良の宇宙港」 火星へ夢乗せて

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【USA! USA!】(15)フロリダ州ケープカナベラル 「最良の宇宙港」 火星へ夢乗せて

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ケネディ宇宙センターの見学者用施設で、宇宙服姿のスタッフと記念写真を撮る観光客=2014年12月7日、米フロリダ州ケープカナベラル(早坂洋祐撮影)  昨年12月5日、大西洋に面したフロリダ半島の小都市ケープカナベラル。夜明けからまもない午前7時5分、曇った空と地面の境目からオレンジ色の炎を噴射するロケットが音もなく姿を見せると、海沿いの公園でみつめる見学者たちから大きな歓声が湧いた。ロケットは30秒ほどで雲の中に姿を消した。と思ったら、その直後、ロケットのエンジンが吐き出す轟音(ごうおん)が一帯に響き渡った。

 米航空宇宙局(NASA)で、ロケットの打ち上げを担当するケネディ宇宙センターは、山手線内側の面積の9倍近い567平方キロの広大な敷地に、複数のロケット発射台、ロケット組み立て施設、管制センターなどが点在する。赤道に比較的近いため地球の自転速度を最大限に利用してロケットを打ち上げることができ、米国で最良の「宇宙港」となっている。

 この日、センターに隣接するケープカナベラル空軍基地37番発射台から打ち上げられたのは、次世代の有人宇宙船「オリオン」の無人試験機。天候や機械トラブルで打ち上げ日は1日延びたが、宇宙ロケット「デルタIVヘビー」で打ち上げられたオリオンは予定通り高度5800キロ地点まで到達。地球を2周した後に大気圏に再突入して太平洋に着水し、実験は成功に終わった。

 米政府は2030年代半ばまでに火星に人類を送り込むことを目指している。そう遠くない将来、オリオン宇宙船に乗り込んだ宇宙飛行士たちが、この宇宙港から火星を目指すはずだ。

 ≪地球に帰還 「本物」が目の前に≫

 再使用が可能な宇宙船として、さまざまなミッションを行ってきた米航空宇宙局(NASA)のスペースシャトル。計5機が建造され、宇宙空間での科学実験をはじめハッブル宇宙望遠鏡などの衛星軌道投入、国際宇宙ステーションの運搬や組み立てなどに活躍した。宇宙に運んだ多くの宇宙飛行士には、毛利衛さんら7人の日本人飛行士も含まれる。「チャレンジャー」「コロンビア」の2機と14人の宇宙飛行士たちを事故で失う試練にも見舞われながら、2011年7月の「アトランティス」によるラストミッションで、30年にわたる活動に幕を閉じた。全てのスペースシャトルを打ち上げてきたケネディ宇宙センターでは、地球に帰還したままの姿のアトランティスに会うことができる。

 センターの入り口に建つ見学者用施設「ビジター・コンプレックス」は、宇宙開発のさまざまな資料を展示するテーマパークともいえる施設だ。施設内には米国初の有人宇宙飛行で使われた「レッドストーン」ロケットなど多数のロケットや管制室などが展示されている。

 人類初の有人月面着陸を実現したアポロ計画の展示施設では、アポロ宇宙船と月着陸船とともに、全高110メートルにもなる巨大な「サターンVロケット」が横たわっている。施設のガイドを行うACTアメリカのジェイ・ジョンソンさんは「このロケットは計画が中止になったアポロ19号用に用意したもので、着陸船も15号で使用する予定だった機体です。ここに展示しているものは全て『本物』ですよ」と説明する。地球に帰還したアポロ14号のカプセルや、その時に宇宙飛行士が実際に使用した宇宙服なども間近にみられる。「月旅行」を経験した本物の迫力に、見学者たちは興奮しながら写真を撮影していた。

 2013年7月から公開が始まったスペースシャトルの展示施設では、アトランティスのオービター(軌道船)を目の前に見ることができる。大気圏突入時に1500度以上の高温にさらされた機体は全体が白くすすけ、船底の耐熱タイルには焼けた跡が残り、全33回のミッションの過酷さが伝わってくる。

 各施設内では歴代の宇宙計画の映像資料が展示され、実際に宇宙飛行士と話すイベントも開催。さまざまな苦労を乗り越えながら技術の粋を集めて開発されたNASAのロケットや宇宙船たちに、宇宙への好奇心を刺激されずにはいられなかった。(写真・文:写真報道局 早坂洋祐/SANKEI EXPRESS

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