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あと2億キロ 冥王星初めて撮った! 米探査機ニューホライズンズ、7月に最接近
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冥王星を目指すNASA(米航空宇宙局)の探査機「ニューホライズンズ」の想像図。今年7月に50億キロの旅を経て最接近する(NASA提供=ロイター) 米航空宇宙局(NASA)は4日、2006年に地球を旅立ち、50億キロ以上のかなたにある冥王星を目指している無人探査機「ニューホライズンズ」が初めて撮影した冥王星の画像を公開した。先月末に残り約2億キロの地点まで到達しレンズにとらえた。まだその姿はぼんやりしているが、7月中旬には約1万3600キロまで最も近づき、太陽系の外縁部にあり謎に満ちた冥王星の鮮明な姿を撮影する。冥王星に近づき観測するのは人類初。多くの彗星や小惑星が集まる外縁部の未知の領域の探査も行う計画だ。
探査機打ち上げ後に「惑星」から「準惑星」に格下げされるという“悲運”に見舞われた冥王星だが、世界中の天文ファンが今年最大のイベントとして最接近を待ち望んでいる。
約9年かけて48億キロを飛行したニューホライズンズが撮った画像には、白くぼんやりした冥王星とともに、最大の衛星であるカロンも写っている。NASAは、1930年に冥王星を発見した米天文学者、クライド・トンボー氏(1906~97年)に敬意を表し存命なら109歳を迎える誕生日の4日に画像を公開した。
「父が生きていたら、自分が発見した星と、その衛星の姿が画像に撮られ、さらに詳細な観測が行われるということに驚いたと思います」
ニューメキシコ州に住むトンボー氏の娘のアネットさんはNASAの公式サイトでこうコメントし喜んだ。
ニューホライズンズ計画の主任研究員、アラン・スターン氏も「トンボー氏が85年前に望遠鏡で光の点を見付けて以来の新たな一歩である」と、撮影の意義を強調した。時速約5万キロで飛行しており、NASAは「近づくにつれて多くの鮮明な画像を送ってきてくれるはずだ」と期待している。
ニューホライズンズは人類初の冥王星を含む太陽系外縁部の天体探査を目的に2006年1月に打ち上げられた。電力や機器の消耗を防ぐため、旅程の約3分の2に当たる1873日間を冬眠状態で過ごし、昨年12月7日に目覚め、観測準備を始めていた。
7月14日には1万3600キロまで最接近する予定。高解像度の望遠カメラで撮影するほか、宇宙塵の検出器などを使い、冥王星の大気の状況や衛星カロンとの関係性などを調べる。冥王星について分かっていることといえば、直径が月より小さい約2300キロで、質量は地球の約500分の1しかなく、公転周期が247.7年で、カロンを含め5個の衛星を持つことぐらいで謎は多い。
さらに太陽系外縁部には、多くの小惑星や彗星が存在する「カイパーベルト」と呼ばれる未知の領域があり、約半年間かけて冥王星とカロンを調査した後、カイパーベルトに向かい探査を行う計画だ。
昨年12月に日本が小惑星探査機「はやぶさ2」を打ち上げるなど、世界各国が惑星探査の成果を競っているが、NASA本部のカート・ニーバー博士は「米国はニューホライズンズとともに惑星探査を主導していく」と、自信を示した。
冥王星は長らく太陽系第9惑星と見なされていたが、06年8月に開かれた国際天文学連合(IAU)の総会で、惑星の定義が見直され、「準惑星」に格下げされた。トンボー氏の出身国の米国を中心に世中界の天文ファンが落胆しただけに、ニューホライズンズによる新たな発見への期待は高まるばかりだ。(SANKEI EXPRESS)