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G20焦点、識者に聞く アベノミクス評価は? 資産バブルの懸念は?

ニュースカテゴリ:政策・市況の国内

G20焦点、識者に聞く アベノミクス評価は? 資産バブルの懸念は?

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 18、19日にワシントンで開かれる20カ国・地域(G20)財務相・中央銀行総裁会議は、ユーロ圏経済の不振・混乱への対処や世界的な需要喚起に向けた方策が主議題になるとみられるとともに、黒田東彦(はるひこ)総裁の下で日銀が決定した「次元の違う量的・質的金融緩和」や為替相場の急速な円安に対する各国の受け止め方に注目が集まる。国際通貨基金(IMF)の篠原尚之副専務理事と、元財務官の加藤隆俊・国際金融情報センター理事長にG20の焦点を聞いた。

 IMF副専務理事・篠原尚之氏

 投機資金流入に注意

 --アベノミクスの評価は

 「IMFは、日銀に大胆な金融緩和が必要と促してきた。デフレ脱却のためにも重要で、大歓迎だ。為替操作という認識もない。ただ、投機資金が新興国などに流入し、市場の波乱要因になることに注意が必要で、G20でも議論されるだろう」

 --G20で理解されるか

 「評価は国によっても違う。ドイツなど日本の競争相手は円安で影響を受ける一方、日本の供給網である東南アジアなど新興国の多くは、日本の回復で恩恵を受ける。日本経済が成長軌道に戻ることは各国が歓迎し、期待もすると思う」

 --財政規律への懸念は

 「財政は持続可能な状態になく、日銀が国債を買い続ければ金利は下がったままで、財政規律が働かず破綻する。中期的に健全化を進めることが大事だ」

 --欧州債務危機が再燃の兆しだ

 「キプロスが金融支援を受けるための財政健全化は、簡単ではないが実現可能だ。ただ、他国で似た状況が起きれば預金流出の可能性もある。イタリアの場合は政権が安定すれば危機は遠のくが、欧州の実体経済の弱さには注意が必要だ」

 --米国の財政問題は

 「歳出強制削減が発動されたが『財政の崖』ほどの怖さはない。雇用の改善に時間はかかるが、全体として経済は堅調だ」(ワシントン 柿内公輔)

 国際金融情報センター理事長・加藤隆俊氏

 バブル発生備え準備

 --日銀の次元の違う金融緩和が世界的な関心を集めている

 「物価上昇率目標導入と思い切った金融緩和が日本経済を回復させ、結果として世界経済に貢献することをしっかり発信すべきだ。一方、金融緩和だけではデフレは解決しないので、政府が成長戦略や財政健全化の道筋を示すことが求められる」

 --黒田氏は日銀総裁として初のG20に臨む

 「財務官時代に先進7カ国財務相・中央銀行総裁会議(G7)をこなしており、気負いはないだろう。アジア開発銀行総裁の職を通じ、アジア新興国の財務相や中央銀行総裁にも知り合いが多い。(日本の政策は)世界の注目を集めており、会議では議長国から最初に指名を受け、発言する可能性もある」

 --先進国の金融緩和が資産バブルを呼ぶ懸念は

 「日米欧が相当規模の金融緩和を行っている。世界中で金利が信じられないほど下がっており、資金はジャブジャブに供給されている状態だ。余剰資金が新興国や資産に流れ、バブルの兆候が出ていないかチェックし、バブル発生に備えることが当然、議論になってくる」

 --円安批判の再燃は

 「批判の恐れが全くないとはいえない。G20で議論すべきだとの声もあり、政策の目的について、各国にしっかりと理解を求める努力が必要だ」(永田岳彦)

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