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マレーシア「第2の空の玄関」完成やきもき 大幅変更で延期繰り返し
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マレーシアの空の玄関、クアラルンプール国際空港の第2ターミナル(KLIA2)の完成が遅れている。2010年9月に着工したKLIA2は当初、12年4月に完成予定だったが、現在は14年4月の完成、5月運用開始を目指す。大幅な計画変更や工事ミスで完成予定の延期が繰り返されており、懸念の声が上がっている。現地経済紙ビジネス・タイムズなどが報じた。
KLIA2は、格安航空会社(LCC)の急成長でクアラルンプール国際空港が手狭になったことから、LCC専用のターミナルとして建設が計画された。当初計画では総工費19億リンギット(約567億3400万円)、ターミナルの床面積が1万5000平方メートル、滑走路の長さは2.5キロだった。
しかし、建設を管轄するマレーシア航空公社は、株主やアジア最大のLCCに成長した地場航空最大手エアアジアの要望を取り入れて建設計画を大幅に変更。ターミナルの床面積を2万7000平方メートル、滑走路の長さを4キロとしたほか、ホテル施設の建設も追加した。
また、ターミナルもLCCを想定した簡素なものから、ビジネスクラス級のラウンジなどを備えた通常便にも対応可能な設計に改めた。これにともなってKLIA2の年間の利用者受容能力は、現在のメーンターミナルと格安ターミナルを合計した4000万人を上回る4500万人となる見込み。計画変更によって総工費は40億リンギットに倍増し、さらに増加する可能性も指摘される。
計画の変更や工費の増加について、同公社のアフマド社長は「空港におけるLCCのあり方がこの10年で激変している」と述べ、ラウンジやホテルの追加はやむを得ないとしたうえで、これ以上の工費の増額はないとの見解を示した。
一方、建設計画に関しては自社の要望がほぼ受け入れられたエアアジアだが、完成の遅れにはいらだちをあらわにする。同社は現在、格安ターミナルを使用しているものの、同ターミナルは年間受容能力1500万人に対して実績が2000万人ペースと混雑が顕在化しているためだ。
同社のマレーシア法人のオマル最高経営責任者(CEO)は「格安ターミナルの混雑が原因で社員の労働環境が悪化しつつあり、乗客にも不快な思いをさせている」と述べ、早期の完成を訴えた。
KLIA2は今年7月、建物の天井に亀裂が見つかるなど、230件の安全基準違反が発覚し、工事のやり直しを余儀なくされた。また、空港公社が工事の遅延1日につき約20万リンギットの賠償を求めると発表したところ、業者側が計画変更が遅延の原因だと反論するなどトラブルが続く。
国際航空運送協会(IATA)によると、12年のアジアの航空機利用者は前年比5.2%増と世界の同3.9%増を上回った。今後もアジアが世界の航空市場を牽引(けんいん)していくとみられており、特に成長が見込まれる東南アジア地域では各国が拠点を目指す競争が始まっている。
KLIA2がこれ以上の延期を避けて来年5月の開港にこぎつけられるのか、注目が集まりそうだ。(シンガポール支局)